環境保護活動家は、海運業界による排出削減の取り組みは遅すぎると指摘している。
海運を欧州連合排出量取引制度(ETS)に含めることで、脱炭素化が加速すると期待されている。
2005年に開始されたETSは、製造業者、電力会社、航空会社に対し、排出する二酸化炭素1トンごとに排出枠を購入するよう義務付けている。
欧州委員会は、初めて海運をEUの炭素市場に加えることを提案した。この動きは、長年EUによる汚染課徴金を免れてきた海運業界に大きな変化をもたらす見通しだ。
しかし、海運業界の複雑さや、脱炭素化に要する時間を踏まえ、制度がどのように機能するかをめぐって、すでに意見の相違が生じている。
今後の手続きについて、現時点で分かっていることを紹介する。
なぜ海運をETSに含めるべきなのか?
世界貿易の約90%が海上輸送されており、海運は世界のCO2排出量のほぼ3%を占める。
環境保護活動家は、海運業界による排出削減の取り組みは遅すぎると指摘し、海運を欧州連合排出量取引制度(ETS)に含めることで脱炭素化が加速すると述べている。
現在、どのような提案が出されているのか?
2005年に開始されたETSは、製造業者、電力会社、航空会社に対し、排出する二酸化炭素1トンごとに排出枠を購入するよう義務付けている。
制度の排出枠価格は1トン当たり100ユーロ(114.44ドル)に近づいている。アナリストは、この水準が低炭素エネルギー源へのさらなる投資を促すと述べている。
昨年7月、欧州委員会は2023年から2026年にかけて海運を段階的にETSに加えることを提案した。2026年には船主が、EU域内での排出量の全量と、EUを出発地および到着地とする国際航海での排出量の50%を対象とする排出枠を購入する必要が生じる。
この提案が法制化されるには、欧州議会とEU加盟国による交渉が必要となる。
一方、欧州議会は海運をより早い2025年までにETSへ段階的に組み入れることを求めている。
また、燃料の購入など、CO2排出量に影響する決定に責任を負う主体が費用を負担し、炭素排出枠を購入することも求めている。その主体は船主、商業上の傭船者、または船舶運航者となる可能性がある。
これに対し、欧州委員会は、CO2関連費用は常に船主が負担すべきだとしている。
国連の海運機関である国際海事機関(IMO)による排出抑制の規制措置が不十分な場合、欧州議会はEUに対し、欧州との往来に関わる海運の全排出量を対象とするようETSの拡大を検討することを求めている。
IMOの措置によって壊滅的な気候変動を回避できるほど速やかに排出量が削減されれば、EUは炭素市場への海運の組み入れを撤回できると、欧州議会の提案草案は述べている。
欧州委員会の提案をめぐっては、今後数カ月にわたり協議が行われる。欧州議会とEU加盟国は、文案の変更を求め、最終版に合意することができる。
海運業界は提案をどう見ているのか?
商業海運業界の中でも意見は分かれている。業界はコンテナ船、石油タンカー、ドライバルク船など、異なる分野で構成される。
費用を誰が負担するのか、船主と、船舶を借り受ける傭船者のどちらが負担するのかをめぐって意見が分かれている。
航海ごとに燃料費が数百万ドルに上るため、利害は大きい。
ドライバルク船を代表するギリシャ船主連合と、タンカー協会INTERTANKOは、傭船者を対象に含めることを歓迎した。貨物輸送に責任を負い、そこから利益を得る者が排出に責任を負うべきだと述べている。
これに対し、コンテナ船会社を代表する世界海運評議会(WSC)は、脱炭素化の責任は船主も分担すべきだと主張し、責任主体について提案された定義は「ETSを損なう」と述べている。
「船舶からの温室効果ガス排出は、設計技術、消費燃料、運航慣行が組み合わさって生じる」と、WSCの最高経営責任者ジョン・バトラー氏は述べた。
「地域的なEU ETSの炭素価格は、温室効果ガス削減に関わるすべての当事者、すなわち船主と運航者に適用されなければならない。」
規制面でも圧力が高まっている。
IMOの目標は、2050年までに船舶からの温室効果ガス総排出量を2008年比で50%削減することだ。これは、米国などの国々がIMOに2050年までの排出ゼロ目標を採択するよう求めてきたのに対して、低い目標となっている。
IMOは、世界の船隊のエネルギー効率を高める新規制など、気候変動対策で2021年に具体的な進展があったと述べた。また、今年は温室効果ガス戦略の改定に取り組み、2023年に最終決定する予定だとしている。
IMOは、規制はEUの手法とは異なり、IMOを通じて策定され、世界全体に適用されるべきだと述べた。また、地域的な法制化では途上国の懸念が反映されないとしている。


