将来、慈善活動のために私たちの個人データを寄付できるようになるでしょう。日々の暮らしのなかで、私たちについてあらゆる種類のデータが記録されています。何を買うか、どこへ行くか、誰に電話をかけるか、インターネットをどう利用するか、といった情報です。そのデータを善意の活動に役立てるために 解き放つことができる時が近づいています。すでに多くの人が、社会全体のために金銭や、さらには血液といった貴重な資源を寄付していることを考えれば、この一歩はそう遠くないかもしれません。
寄付されたデータは、社会にどう役立つのでしょうか。データは人々の習慣を知るための豊かな情報源です。たとえば、ポイントカードの購買データからは食生活がうかがえます。研究のために個人データが寄付されれば、その分析を通じて、糖尿病の食事上の前兆についての理解から、生活習慣が心疾患に及ぼす影響まで、幅広い分野の改善につながる可能性があります。
しかし、個人データの収集と利用をめぐっては、対処すべき重要な課題があります。寄付は信頼に基づくものです。研究者がデータを調べると知っていても、匿名で扱われるのであれば、人々は自分のデータを提供するでしょうか。食生活や買い物の習慣を他人に精査されたいと思うでしょうか。医学研究を助けるために自ら寄付を選んだとしても、プライバシーを侵害されたと感じる人はいないでしょうか。
研究のためにデータを寄付するのは誰か?
私たちの 最近の研究 では、およそ60%の人が、公共の利益につながる用途であれば自分のデータを寄付する意思があることが分かりました。ある意味では、これは意外ではありません。 先行研究が示したように、人々は他者を助け、さまざまな向社会的活動に参加します。社会全体の利益のために、自発的に慈善団体へ寄付したり、誰が恩恵を受けるかを正確には知らないまま、資金集めのマラソンに参加したりします。また、 血液、骨髄、さらには 臓器を提供する人もいます。多くの場合、他者の福祉を気遣う気持ちからそうしますが、評判を高める、仕事上の利益を得る、自分自身に満足するといった、より利己的な理由によることもあります。
落とし穴を回避できるか?
もちろん、公共の利益に使われるとしてもデータを提供しない40%の人々もいます。彼らの考えを理解することが重要です。私たちの調査では、多くの人にとって、データを寄付するかどうかは、その利用目的と、どれほど安全に保管されるかについての保証に左右されることが分かりました。個人データの紛失や悪用に関する 数多くの報道 があることを考えれば、自分のデータを渡すことに慎重な人がいるのも当然です。鍵となるのは信頼です。
一方、調査の回答者の多くは、企業がすでにあらゆる目的で自分たちのデータを利用している可能性が高いのだから、公共の利益のためにも利用してはどうか、と答えました。ここから導くべき最も重要な点は、おそらく、個人データを収集・分析する研究者は、関係者が十分な情報に基づいて同意でき、その後も自分のデータの利用状況を追跡し、管理できるようにすることで、最高水準の倫理基準を確保することが不可欠だということです。
寄付されたデータを有効に活用する
個人データは病気の原因についての理解を深めるのに実際に役立つのでしょうか。もしそうなら、将来、人々の健康を保つうえで有用なのでしょうか。こうしたビッグデータ分析は、しばしば誤解されています。直接的な因果関係の証拠を示すというよりも、主として仮説を生み出すための研究ツールです。データのパターンを探したり、仮説の検証にデータを用いたりすることで、予想外の洞察にたどり着くことができます。そうした洞察が、臨床試験など、さらなる科学研究や検証の基礎となります。
データの寄付は、金銭や血液の寄付とは確かに異なります。データを寄付しても、私たちに目に見える負担はほとんどありません。血液やお金とは違い、データは大半の人にとって使い道がなく、それを生み出す私たちにとって実質的な金銭価値もありません。しかし、他者のデータと組み合わされると価値が生まれます。
現在、企業は 個人データを活用して収益を上げています。それによって消費者行動を高度に理解でき、その理解をもとに利益を得られるからです。しかし、私たち自身もデータから恩恵を受けるべきではないでしょうか。
人々のデータに対する考え方には、まだ多くの未解決の問いがあります。人々は自分の個人データを管理したいのでしょうか。データを何に使えるかを自分たちで決めたいのでしょうか。そして、 そもそも本当はいくらの価値があるのでしょうか。現状では、私たちの個人データを記録する企業が、そのデータの所有者でもあります。しかし、データからは私たち自身について多くのことが分かり、社会が現実の問題を解決する助けにもなります。個人データの使われ方について私たちが意見を述べ、その洞察がもたらす恩恵を最終的に受ける時です。
この記事は、 The Conversationとの協力により公開されています。記事の公開は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。
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著者:Anya Skatovaは、ノッティンガム大学Horizon Digital Economy Research Instituteのリサーチフェローです。James Gouldingは、ノッティンガム大学のリサーチフェローです。
画像:2008年3月3日、ハノーバーで開催予定のCeBIT見本市におけるIBM展示ブースで、女性がIBM HealthcareのAnatomic Symbolic Mapper Engine(ASME)を紹介している。REUTERS/Hannibal Hanschke


