人類が直面する潜在的な危機のうち、世界人口が増加し、高齢化し、体格が大きくなり、慢性疾患の発生率が上昇しているという問題には、異論を唱える人はほとんどいないでしょう。オーストラリアでは、360万人が 罹患しているか、その予備群です。米国では、その 人が糖尿病または糖尿病予備群です。米国では、その 人数は 2012年に2,910万人、人口の9.3%でした。しかし2012年の糖尿病予備群の人数は、驚くべきことに8,600万人でした。
糖尿病は、オーストラリアで死因の第6位、米国で第7位です。
医師を増やしても追いつかない
オーストラリアで一般開業医が対応する診療のうち8%が、 糖尿病に関するものなのも不思議ではありません。一般開業医は糖尿病患者の診療に平均で通常の2倍の時間を費やし、患者も受診回数が2倍に上ります。糖尿病の発生率は、医療サービスが対応できる能力を急速に上回っています。オーストラリアでは糖尿病が年率7%で 増加している 一方、一般開業医の数はわずか年率3%で 増加している にすぎません。
患者にとっての課題
しかし患者の立場からすれば、一般開業医の受診で直接診療や支援を受けられるのは年間わずか3時間です。一方、患者は生涯にわたってこの疾患を管理する必要があります。病状の進行を抑えるために生活習慣を変える方法をまとめた計画を患者に渡したとしても、それを実行するかどうかは、ほぼ全面的に患者自身に委ねられます。
ここで興味深いのは、患者にとって有用な健康情報は、患者自身が直接測定できるデータだという点です。医師が保有する情報にアクセスできることは比較的重要ではありません。つまり、個人健康記録を提供しても、疾患の総合的な管理には役立たないでしょう。オーストラリアの個人管理型電子健康記録(PCEHR)のようなシステムに政府が投資するよりも、患者が自ら健康管理できるよう支援するソフトウェアやシステム、理想的にはモバイルアプリに直接投資するほうが、実際には大きな効果が見込めるでしょう。米国でも個人健康記録の 普及率は低く 、疾患の直接管理を支援するうえでの役割が限られていることが示されています。
自己管理を支援するモバイルヘルスアプリに必要なもの
慢性疾患の自己管理に は 、患者が自分の病気の基礎知識を理解し、病状の管理や改善に役立つリソースを活用できるようになり、最後には病気とともに生きる生活に適応することが含まれます。これらはすべて大変なことですが、電子的な支援があれば、はるかに容易になる可能性があります。
糖尿病の場合、生活習慣の改善に関する推奨 指針 は実際かなり複雑です。運動、食事、喫煙、飲酒について目標を設定する必要があります。モバイルアプリなら、これらの指針に基づいて電子的なケア計画を作成し、目標の理解や、達成に向けた進捗状況の記録・確認を支援できます。
糖尿病管理に必要な目標を理解した後、何より大切なのは実際にそれを続けることです。たとえば、現在、運動プログラムを継続する患者はごくわずかで、短期間で 断念してしまいます 。
モバイルアプリは、理想的には接続型の血糖測定器を通じて、糖尿病の進行を患者自身がモニタリングする際にも役立ちます。 研究 によれば、自分の病状を自己モニタリングする患者は、治療成績が大幅に改善し、糖尿病の症状も軽減します。
最後に、自己管理アプリには、患者が自己管理のプロセスに取り組み続けられるよう、「ゲーミフィケーション」の要素を取り入れることが考えられます。目標達成の成果をゲームの一部として認めることで、慢性疾患の自己管理治療への遵守率が高まることが 示されています 。
残念ながら、実現にはまだ至っていません
上記の機能を備えたモバイルアプリがあれば、糖尿病患者を理想的な形で支援できます。しかし、現在利用できるアプリを見つけるのは難しいでしょう。AndroidおよびAppleのモバイル端末向け糖尿病アプリを調査した研究者らは、選択肢は幅広いものの、大半は血糖値を記録する手段を提供するだけだと 明らかにしました 。患者が病状を適切に管理できるよう、エビデンスに基づく指針を示すアプリは見つかりませんでした。
慢性疾患の危機が、ほとんど改善されないまま続くことを許してきた理由は理解しがたいものです。不適切な食生活や運動不足という根本原因への対処は、政治的に不可能かもしれません。それでも、自己管理をより効果的にする方策を見つけることは不可欠です。他に実行可能な代替策はないからです。
この記事は、 The Conversationとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。
Forum:Agendaの最新情報を受け取るには、 週刊ニュースレターに登録してください。
著者:デビッド・グランス准教授は、UWAソフトウェア実践センターの所長です。同センターはUWAの研究開発センターです。
2013年5月17日、ボスニア中部の町ゼニツァで撮影された写真。スマートフォンを手にポーズをとる男性たちが、ビデオスクリーンを背にシルエットで写っている。REUTERS/Dado Ruvic。


