OECDは最近、政策ブリーフと方法論ノートを公表し、政策の選択肢としてベーシックインカム(BI)を導入する場合の費用と便益を検討した。BIを導入する最も簡単な方法は、現役年齢層に支給されている既存の現金給付を活用し、これらの給付への総支出を、通常の退職年齢に達していないすべての人に均等に配分することだ。そうして算出されるBIの額は、単身者の貧困ラインを大幅に下回る。したがって、追加課税を行わない場合、財政中立的なBIでは貧困の撲滅にはほど遠い。

やや控えめな代替案として、既存の社会保障制度における最低所得保障(GMI)給付の水準を、BIの当初の目標額として用いる方法が考えられる。しかし、多くの人は特定のニーズに伴う追加費用を賄うため、GMI以外の給付も受けており、一律定額のBIではさらに不利益を被ることになる。そのため、対象を絞った現金給付を一部維持するのが望ましいと考えられるが、支出を現行水準に保つには、BIの額をさらに大きく減らす必要がある。したがって、社会的にも政治的にも意味のある水準のBIを実現するには、給付支出を増やし、その財源として税収も増やす必要があるだろう。
フィンランド、フランス、イタリア、英国の4か国を対象としたOECDのシミュレーションによると、ユニバーサル・ベーシックインカムの仕組みは単純でも、既存の給付制度はそうではなく、これらを単一の定額給付に置き換えると、受益と損失が複雑に入り交じる。社会保険給付を受けている人は、通常、それらの給付がGMI水準のユニバーサル・ベーシックインカムに置き換わることで不利益を被る。現行制度のもとでいずれの社会給付の対象にもならない人は、給付の増加額がそれに伴う増税額を上回る限り、恩恵を受ける。低所得世帯は所得審査のある所得支援を受ける可能性が高いため、GMlと同程度の水準に設定されたBIから実際に恩恵を受ける可能性は低い。


