米国の低賃金職にとって自動化は何を意味するのか

A cashier counts out money at Macy's Herald Square on Thanksgiving Day in New York November 28, 2013. Some early U.S. shoppers headed to stores on Thanksgiving Day in search of discounted holiday gifts on a day long reserved for American families to bond over turkey and football. Macy's Inc and a slew of other stores are opening later on Thanksgiving for the first time ever in a bare-knuckle brawl for a bigger slice of holiday sales. REUTERS/Eric Thayer (UNITED STATES - Tags: BUSINESS)
The rise of the robot?Image: REUTERS/Eric Thayer (UNITED STATES - Tags: BUSINESS)
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企業が労働力をどの程度テクノロジーで代替できるかは、長年にわたる課題である。自動化技術がより幅広い職種に広がるにつれて、政策上の重要性も増してきた。近刊の論文では、この重要な課題に取り組むため、米国の労働市場における低賃金職の自動化可能性を定量化し、低賃金労働者への影響を検証する。

低賃金労働のコストを高め、テクノロジーを相対的に導入しやすくする米国の最低賃金法の1999年から2009年までの変更を利用した分析から、最低賃金の引き上げは、レジ係や事務員のように定型的な認知作業の比重が特に高い職種で、技術による代替を加速させることが分かった。しかし、こうした職の喪失は、別の同程度の賃金の職の雇用増加によっておおむね相殺される。増加するのは主に、非定型の対人作業の比重が高い低賃金職である。また、食品の調理や設備の操作など、定型的な手作業の比重が特に高い職種では、技術による代替を示す証拠は見つからなかった。したがって、技術による代替が起きていても、低賃金雇用全体に対する自動化の短期的な影響は、経済的に小さい可能性がある。

図1は、同じ事業所で一緒に働くことの多い2つの職種、レジ係(左)と食品調理従事者(右)を用いて、主な調査結果を示している。各職種について、横軸に最低賃金の対数変化、縦軸に雇用水準の対数変化をとった。雇用の変化は4年間を対象とし、企業が最低賃金の変更に対応するまでの遅れを考慮している。各観測値は州・年(例:2003年のカリフォルニア州)を表し、点の大きさは雇用水準に対応する。図によれば、最低賃金が10%上昇すると、レジ係の雇用は経済的にも統計的にも有意な2.3%減少する。これに対し、食品調理従事者には測定可能な影響が見られなかった。

図1 最低賃金引き上げの雇用への影響(レジ係と食品調理従事者の合計との比較)

注:米国労働統計局の職業別雇用統計データ(1999~2009年)を用い、各図は、4年前からの職業別雇用の対数変化を、3年前からの最低賃金の1年間の変化に対して示している。この方法により、最低賃金の変化が雇用に遅れて及ぼす影響を考慮できる。各観測値は州・年であり、基準年の雇用水準で加重している。対数ポイントで0.03未満の最低賃金引き上げは図から除外した。Image: LSEビジネス・レビュー

この2つの職種では、なぜ賃金率の変化に対する雇用の反応が異なるのだろうか。この結果の違いは、定型的な認知作業の比重が高い職を置き換える一方、定型的な手作業の比重が高い職種を代替するにはコストがかかりすぎる可能性のある自動化技術の導入で説明できると考える。さらに、この新たな自動化技術を生産的に活用するには、非定型の労働力が追加で必要になる可能性があると考える。これは低賃金職の自動化の性質による。自動化によって、従業員がそれまで担っていた作業の一部が顧客に移ることが多い。

例えば、小売店にセルフスキャナーを導入すると、顧客自身が商品の読み取りや袋詰めを行い、支払いを済ませる必要がある。そのため、新技術はレジ係に取って代わる一方、顧客の技術利用を支援したり、監視したりする新たな職も生み出す。このような状況では、最低賃金の引き上げによって生じる技術代替は、定型化の度合いが高い低賃金職の雇用減少として表れる。しかし、非定型の職種の利用が増えるため、雇用全体への短期的な影響は明らかでない。この予測は、最低賃金の引き上げ直後の雇用喪失は小幅だとする多くの研究結果と一致している。

こうした予測を検証するため、米国労働統計局の職業別雇用統計から、1999年から2009年までのすべての低賃金職に関するデータを用いた。レジ係と食品調理従事者で見られた雇用動向の違いは、より一般的な傾向の一部であることが分かった。最低賃金の引き上げは、通常、定型的な認知作業に費やす時間の割合が高い職種の雇用を減らす。一方、職種の手作業がどの程度定型的かに応じた雇用の反応を示す証拠は見つからず、海外への業務委託ではこうした雇用減少を説明できないことも示した。同時に、最低賃金引き上げによる雇用の純効果はゼロと区別できない。つまり、定型的な認知作業を伴う職の減少を相殺する形で、他の低賃金職の雇用が増えている。低賃金職の自動化に関する理論的枠組みと整合して、相殺分の雇用増加は、対話的な作業の比重が高く、顧客支援に関連する職で生じている。例えば、社会・福祉サービス助手や顧客サービス担当者が挙げられる。

最後に、2つ目のデータセットである米国の現在人口調査を用いて個人の動向を調べた場合にも、同様の結果が得られた。最低賃金の引き上げにより、低賃金職に就いている人々は、定型的な認知作業の少ない職種へ移る。ただし、この再配置が個々の労働者にもたらすコストは比較的小さいようだ。他の条件が同程度の低賃金労働者と比べて、その後の就業確率と賃金がわずかに低下するにとどまる。

要約すると、労働コストの上昇は、定型的な認知作業の比重が高い低賃金職で技術による代替を加速させることが、今回の結果から示唆される。しかし、中所得層の職の自動化とは異なり、同程度の賃金の職で雇用が増加して相殺されるため、低賃金職の自動化が個々の労働者にもたらすコストは、それほど大きくないようだ。ただし、強調すべき重要な留保がいくつかある。第一に、ここで述べた労働市場の動向は短期的なものであり、最低賃金が長期的にはより大きな雇用減少をもたらすという証拠が増えている。第二に、顧客が新技術を利用することへの受容の広がりも含め、自動化技術のコストが低下すれば、最低賃金引き上げによる雇用減少の影響が拡大する可能性がある。こうした変化が米国で見られるかを確かめるため、現在、2010年以降のデータを使って分析を再現している。

免責事項:このブログ記事で示されている見解は、シカゴ連邦準備銀行または連邦準備制度の見解を必ずしも反映するものではありません。

注:

このブログ記事は、著者らの論文「賃金ショックと低賃金職の技術的代替」に基づいている。『Economic Journal』、2018年刊行予定。

この記事は著者らの見解を示すものであり、LSEビジネス・レビューまたはロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの立場を示すものではありません。

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