「誰もが使える宇宙」は、思うほど遠い話ではないかもしれない

The international space community came together under the motto of ‘Space for All’, at the 73rd International Astronautical Congress held in Paris in September 2022.
The international space community came together under the motto of ‘Space for All’, at the 73rd International Astronautical Congress held in Paris in September 2022.Image: REUTERS/Steve Nesius
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  • かつては一握りの宇宙機関だけの領域だったが、最後のフロンティアは急速に身近なものになりつつある。

  • しかし、宇宙の開放が私たち全員に利益をもたらすようにするためには、宇宙をめぐるグローバルな議論が開かれたものであり、誰もがアクセスできるものでなければならない。

  • その方法の一つは、例えば国際宇宙ステーションでの研究機能を、地上の研究者に開放することである。

かつては最後のフロンティアと考えられていたかもしれないが、年々、より多くの国や民間企業が宇宙への進出を果たしている。今年はインドが月の裏側への着陸に成功し、また、UAEの宇宙飛行士スルタン・アル・ネヤディ博士は、国際宇宙ステーションでの6か月の任務を終えて帰還した。

また9月には、NASAが小惑星ベンヌの試料を安全に地球へ持ち帰り、これまでにない科学的発見への期待を高めた。宇宙はすでにより身近なものになりつつあるが、さらに先へ進むことはできるだろうか。

2022年9月にパリで開催された第73回国際宇宙会議では、国際宇宙コミュニティが「Space for All(誰もが使える宇宙)」をスローガンに結集した。

コミュニティは、21世紀における宇宙探査の成功は、新たな発見や「史上初」の達成だけでなく、宇宙をめぐるグローバルな議論に誰が含まれ、誰が参加しているかによっても測られなければならないと認識した。

「誰もが使える宇宙」を現実のものにする

宇宙が、すべての人にとって発見と創造の領域として利用可能になって初めて、宇宙での取り組みを可能な限り焦点が定まり、示唆に富み、責任あるものにできる。

議論に関わる視点が多様であるほど、その議論はより良いものになる。

重要なのは、情報に通じ熱意を持ったグローバルな宇宙コミュニティから生まれるこうした多様な声によって、宇宙ミッションが人類と地球全体の大きな利益に焦点を当て続けることが確かなものになる点である。

では、誰もが使える宇宙を現実にするには何が必要なのか。この問いにはさまざまな答えがあり、教育プログラムやコミュニケーション戦略から、制度的なパートナーシップに至るまで多岐にわたる。

宇宙が私たち全員の利益になるための一つの方法は、既存の宇宙ミッションの手続きの中に新たな能力を開発することであり、特に国際宇宙ステーション(ISS)に重点を置くことである。

2022年4月に行われた17日間のAx-1ミッションの一員として宇宙へ赴いた際、私は、ISSの複雑な運用プロセスの体系の中に「誰もが使える宇宙」の活動を組み込む機会があると気づいた。こうした機会を見極めることで、宇宙ミッションが地球上の生活の質の向上と地球の生態系の保全に貢献する範囲を広げることができる。

その一つの提案が「Vital Climate Band(バイタル・クライメート・バンド)」であり、ヒューストンのNASAジョンソン宇宙センターにあるISS研究統合室と協力して現在開発が進められている。Vital Climate Bandは、気候危機に関する研究に貢献することを目的として、ISS上の既存の資源を活用し地球観測を行うという提案である。

現在、多くの科学実験や技術実証では、ISSへの貨物輸送が必要となるため、多額のペイロード費用がかかっている。ISSのキューポラから、搭載済みのカメラを用いて行う地球観測のように、貨物輸送を必要としない研究は、追加費用がほとんどかからず、また、地球規模の公共財として高い価値をもたらす。

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模範を示す:Rakiaミッション

Vital Climate Bandの仕組みを示す良い例が、ILAN-ESの研究である。これは私が、Rakiaミッション(私自身のAx-1ミッション)の一環として実施したものである。ILAN-ESプロジェクトは、雷雲の上空で発生する雷や電気現象、いわゆる「過渡発光現象(TLE)」を研究している。この研究は、雷雲に関する理解を大きく前進させる可能性を秘めており、極端な気象現象が増加する時代において、命を救う知見となりうるものである。

Rakiaミッションでは、TLEが発生する確率が最も高い地域を推定した全球の気象予報がアップロードされ、ISSのキューポラから、宇宙飛行士チームが上空から現象を観測した。

気象現象の予測が難しいため、TLEが発生した際にそれを捉えることは困難であった。というのも、それを行うには他の予定された活動を中断する必要があったからである。Vital Climate Bandは、ISSの「Optimis」スケジューリングシステムに専用の「バンド」を設けることで、この問題の軽減を目指している。地上の運用チームは、このバンドに事前に選定した地球観測の事象を毎日追加する。このアプローチがいかに画期的であるかを理解するためには、Optimisのスケジュールが数か月前に作成されるという点を念頭に置く必要がある。独自性として、これらの活動は個々の宇宙飛行士のスケジュールに紐づけられておらず、ISSに搭乗しているどの宇宙飛行士でも事象を「確保」することができるため、はるかに多くの事象を捉えることが可能になる。Climate Bandは、ISSのスケジューリングシステムと連動し、より多くの事象を記録する際の柔軟性を高める。

ILAN-ESプロジェクトには、教育面での重要な要素もある。将来的には、複数の大陸の学校と提携し、生徒たちが地上からTLEを同時に観測することを目指している。上空からの観測の柔軟性を高めることで、同時観測が成功する可能性が高まる。これはこれまで一度も実現したことがなく、実現すればデータを大いに充実させることができるだろう。

科学コミュニティに宇宙を開放する

Climate Bandは、科学コミュニティに向けた公募を通じて提出された研究提案に基づいて進められる。これはこのプログラムのもう一つの革新的な側面である。Rakiaミッションの一環として、私のチームは科学者や研究者を対象に研究提案の公募を開始し、80件を超える提案を受け取った。

私たちの調査では、ISSでの研究を以前から検討していたのはわずか13%であったことが分かった。多くの人は、それを非現実的で、実現不可能な夢物語だと考えていた。

したがって、Climate Bandは、研究者が唯一無二の研究施設であるISSとその特異な環境条件を活用して科学的知識を前進させる扉を、さらに開くものとなる。ILAN-ESのように、教育や一般への発信の要素を持つ提案には、特別な配慮が与えられる。

Climate Bandは、誰もが使える宇宙の実現に近づけるために生み出すことのできるイノベーションの一例にすぎない。私たちはしばしば「大きく考えよ」と促されるが、それにも確かに意義はある。しかし、誰もが使える宇宙を現実のものにするという文脈では、小さく的を絞った変化が大きな効果をもたらすこともある。

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