イノベーションは過大評価された気晴らし

Daylight filters through the glass structure in this interior view of the Confluences Musee which is located on the southern tip of the peninsula where the Rhone and Saone rivers join in Lyon December 23, 2014.
Blue sky thinking is not always the answerImage: REUTERS/Robert Pratta
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自力での成長を切望する多くの大企業が、小規模なスタートアップのようにイノベーションを起こそうとしている。これは最大の誤りとなるかもしれない。

はるかに小規模な企業のようにイノベーションを起こしたいと願うのは、市場で起きていることを踏まえれば理にかなった反応だ。美容、飲料、食品など、多くの消費者向けカテゴリーで、優れた成長を遂げる企業はますます小回りの利く小規模事業者に見える。かつては疑いようのない強みだった規模が、いまでは弱みのように感じられる。たとえば、名門小売チャネルへのアクセスは、従来、消費財市場の大手企業にとって主要な競争優位の源泉だった。

しかしデジタル時代には、最も小さな競合企業でさえ、拡大を続ける多様なチャネルを通じて、オンラインで消費者に直接販売できる。一方、小規模で起業家精神に富む身軽な組織であることは、素早く何度も失敗できる自由をもたらし、多くの新しいアイデアを市場に送り出せる。

青空思考に暗雲が立ち込める

多くの大企業は、研究開発の刷新を試み、スタートアップのように振る舞う自由を持つ、外部から隔離された組織を設立したり、シリコンバレーに拠点を構えたりしてきた。幹部たちがその希少な空気を吸い、突如として業界を先導する起業家になることを期待しているのだ。

大企業は、最も創造的な人材を「青空思考」や「ボトムアップのイノベーション」にますます振り向けている。また、革新的な発想を持つ人材の採用や定着を懸命に試み、ひらめきが訪れて市場をリードし、あるいは変革するために活用できる画期的な成果が生まれることを期待している。

しかし、スズメがゾウのように突進できないのと同じく、大企業は素早く方向転換する性質を持たない。もちろん、ゾウがスズメのように飛べないのも事実だ。革新的なスタートアップは、自らのイノベーションを商業規模に拡大し、長期にわたって収益性を維持することに苦労することが多い。

現実には、大きさと機敏さが共存することはまれだ。大企業がイノベーションを試みても、既存製品の漸進的な改良にとどまることが多い。その結果、製品ラインの拡張が次々と生まれて複雑さと官僚主義が増し、機敏さはいっそう遠のいてしまう。

別の選択肢もある。革新的になろうとさえしないことだ。イノベーションへの取り組みは、成長の万能薬というより、むしろ気を散らすものだったと認めよう。

ビール大手に学ぶ

イノベーションは自社の競争力ではなく、今後もそうなることはないと認める大企業がいくつかある。代わりに、自分たちが本当に得意とすることに注力する。このアプローチの典型が、世界的な飲料大手AB-InBevを傘下に持ち、食品大手Kraft Heinzを誕生させた巨大合併を主導した、有力なプライベートエクイティ投資会社3G Capitalだ。

3Gは効率性の向上を得意とする。ポートフォリオ企業全体で意思決定のルールを簡素化すると同時に、イノベーションへの圧力を取り除き、破壊的な変革ではなく、圧倒的に優れた実行力、コスト効率、規模を通じて成長することを選んでいる。

たとえば、ビール業界の多くの大手企業が小規模なクラフトビールブランドの急増に揺さぶられるなか、AB-InBevは規模の利点をさらに活用してきた。新たな市場へ積極的に進出し、小売店の棚を確保し、販促で圧倒的な存在感を保つことで、ブランドを拡大してきた。同時に優れたキャッシュフローを生み出し、有望な新興ブランドをポートフォリオに加えている。そこで自社の強みを生かし、世界各地でブランドを収益性高く拡大し、商業化できる。この明確な使命が、AB-InBevを世界のビール市場で支配的な存在にした。

投資家はこの方針を信頼している。株主価値を生み出す実証済みの道筋であるため、3Gのポートフォリオ企業は株式市場で非常に有利な評価倍率を得ている。

「自らの強みを徹底的に生かす」

優れたコスト効率、規模、実行力に注力することは、目を見張るような破壊的イノベーションを生み出すほど華やかではないのは確かだ。しかし、自社の正体と最も得意なことを理解し、その強みを徹底的に生かすことには価値がある。だから、「市場を破壊するイノベーターになり、そして市場をリードする生産性を実現する」と宣言しているなら、方向性を見直したほうがよいかもしれない。特に、自社で生み出すイノベーションへの投資が明確な成果につながっていない場合はそうだ。

大企業が、単に商業的に優位に立つのではなく、破壊的なイノベーションを起こさなければならないと感じるなら、優れた収益力とフリーキャッシュフロー(成果を生まないボトムアップのイノベーション施策を廃止して確保した資金を含む)を使って、市場内外の最も創造的な人材からイノベーションを「買う」ことができる。その後、優れたアイデアを拡大する専門性を生かして、さらなる収益成長を促す好循環を生み出せる。そこには、自社発のイノベーションを目指す高コストで実りのない試みは含まれない。

要するに、成長は不可欠だが、スタートアップのようにイノベーションを起こすことだけが大企業の成長手段ではない。明らかに実行可能な別の選択肢は、次のとおりだ。

1. 自社の真の中核能力を明確にし、それに徹底して集中する。自社の性質に合わない場合は、気を散らすイノベーションへの欲求を捨てる。

2. 組織を抜本的に簡素化し、最も得意なことから最大限の成果を得る。

3. 浮いた資源を非有機的成長の原動力とし、または「買収した」イノベーションを優れたロールアップに活用する。

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