ビッグデータは、21世紀における最も重要なビジネスおよび政府の動向の一つですが、発展の速度を本来可能な水準よりも遅らせている重大なセキュリティとプライバシーの問題があります。大規模なクラウドインフラ、データソースの形式と媒体、クラウド間の大量移行、動的なストリーミングデータの取得によって、プライバシーとセキュリティへの懸念が高まっています。こうした問題は、ビッグデータを特徴づける4つのV、すなわち量(volume)、速度(velocity)、多様性(variety)、正確性(veracity)によってさらに複雑になっています。
ビッグデータの量
2020年までに、新たに43兆ギガバイトのデータが作成されると推定されています。これは2005年の数値から300%の増加です。容易に利用できるデータ量が増えるなか、機密情報と公開情報を選別できることが、ますます重要になっています。米国の一般的な企業は、社内およびクラウドに10万ギガバイトのデータを保存しています。こうしたデータ保管場所が窃盗犯や犯罪者の標的になれば、大きなセキュリティリスクとなります。
ビッグデータの速度
ニューヨーク証券取引所では、通常の取引セッションで1,000ギガバイトのデータを取得します。ビッグデータにおける大きな課題の一つは、リアルタイムで迅速にデータを分析しながら、高度に安全でプライバシーが守られた環境を維持するというバランスを取ることです。安全なシステムには暗号化などの保護策が必要であり、それらは必然的にデータ処理を遅らせます。データがサーバー間を猛烈な速さで流れると、データ管理の作業はますます困難になります。
ビッグデータの多様性
医療は、利用されるデータの中でもプライバシーとセキュリティが特に重視される分野の一つです。2011年には、医療データは1,610億ギガバイトを超えると推定されましたが、これはデータの一種類にすぎません。Facebookでは毎月300億件のコンテンツが共有されています。動画、画像、テキストによる通信、音声、マイクロデータはそれぞれ、重要な情報を選別、管理、分類するために異なる処理を必要とします。こうしたデータを管理する技術はまだ発展段階にあり、データサイエンティストはデータの管理、解釈、配信に専任で取り組んでいます。
ビッグデータの正確性
データの正確性もビッグデータに関する懸念事項です。膨大なデータを選別するには、質の高いタイムリーなデータと、古く質の低いデータの違いを自動的に見分けるフィルターを作ることが重要です。正確なデータの取得は大きなビジネスとなっており、米国経済には年間3.1兆ドルのコストがかかっています。データが不正確であれば、企業、政府、組織は正確なデータを作成できません。米国政府がディープウェブでテロリストを追跡する動きに見られるように、ビッグデータを選別できないことが人命を奪いかねない段階に至っています。
ビッグデータの主な課題
Cloud Security Alliance(CSA)は、ビッグデータが直面する課題を検証し、現在の主な課題を10項目にまとめました。中心的な懸念の一つは、高度に安全な分散プログラミングフレームワークで大規模な計算を実行する能力です。セキュリティと速度は一般に両立しにくいため、膨大なデータを処理できる効率性の高いサーバーを構築することが、主要な課題となっています。
ビッグデータは、大量の非リレーショナルデータで構成されています。簡単に言えば、リレーショナルデータでは、データを見つけるために厳格な要件を用い、データは高度に構造化・整理されています。ビッグデータの大半は非リレーショナルであり、その結果、一般に整理の度合いが低くなっています。非リレーショナルデータでは、保存データを後にまったく別の目的に使う必要が生じても、ソフトウェア開発者がシステム全体を再設計する必要はありません。これは、ビッグデータを効果的に活用するうえで重要です。一見奇妙に思えるかもしれませんが、過度に整理されたデータは、ビッグデータを効果的に扱う妨げになります。ビッグデータを扱ううえでの課題は、非リレーショナルデータの保管場所を保護するためのベストプラクティスを確立することです。
3つ目の問題は、リアルタイムで作成される可能性のあるデータ保管と取引ログを保護する方法を見つけることです。データや取引ログは複数階層の媒体に保存されることが多いため、企業や組織は、データを引き続き利用可能にしながら、不正アクセスから保護できることが重要です。ポリシーベースの暗号化を用いれば、検証され、認証されたユーザーやアプリケーションだけがデータにアクセスできるようにするのに役立ちます。
ビッグデータ・エコシステムの課題
クラウドセキュリティ には、ビッグデータ管理の主要な各側面に応じた異なる種類のトレーニングが必要です。主要な側面は、インフラのセキュリティ、データプライバシー、データ管理、そして完全性と事後対応型セキュリティの4つに分けられます。それぞれに異なるアプローチが必要です。
インフラのセキュリティでは、データを細分化し、ミクロレベルで分析することが重要です。次に、データのサニタイズと匿名化によって機密データの漏えいを防ぐ機能を導入する必要があります。
実際のデータだけでなく、エコシステムに関わる従業員やすべての関係者も、高度な訓練を受け、信頼できる有資格者でなければなりません。これは、企業が費用を正当化するうえで、すでに課題となっている初期費用と算定が難しい投資収益率をさらに悪化させます。そのため企業は、 質の高いトレーニングを提供するか、優秀な人材をヘッドハントする必要があります。どちらも費用がかかります。
データプライバシーは歴史的に、実際のデータそのものではなく、データを管理するシステムの保護に重点を置いてきました。こうしたシステムは脆弱であることが明らかになったため、クラウドベースの環境でデータを包み込む新たなアプローチが必要です。また、より優れた鍵管理と安全な鍵交換を実現する新しいアルゴリズムも開発しなければなりません。
データ管理では、安全なデータ保管、安全な取引ログ、詳細な監査、データの来歴を扱います。この側面では、データの妥当性を確認し、信頼性を判断する必要があります。きめ細かなアクセス制御とエンドツーエンドのデータ保護を組み合わせれば、データを検証し、データ管理をより安全にできます。
完全性と事後対応型セキュリティでは、エンドポイントの検証とフィルタリング、およびリアルタイムのセキュリティ監視を扱います。悪意のあるデータが送信されないよう、各エンドポイントを徹底的に審査する必要があります。Trusted Platform Moduleチップ、ならびにホストベースとモバイルベースのセキュリティ制御を用いれば、信頼できないエンドポイントに伴うリスクの一部を低減できます。
結論
クラウド環境によってビッグデータの取り扱いは容易になり、生産性も高まりました。また、ビジネスに足を踏み入れる企業にとって参入障壁も下がりました。データ統合とクラウドサービスにより、 BIとHadoop などのツールをうまく連携させることができますが、依然として重大なセキュリティリスクが伴うことを認識することが重要です。CSA作業部会の調査と知見を活用することで、企業、組織、政府は自らのインフラやアプリケーションの現状をより容易に分析し、不正アクセスからより確実に守るための安全な環境を構築できます。
この記事は、 The Smart Data Collectiveとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持していることを意味するものではありません。
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著者:Jared Jaureguyはテクノロジー分野のライターです。
画像:インターネットのLANケーブルを写した写真イラスト。REUTERS/Tim Wimborne。



