地震から都市を守ることは、依然として取り組むべき大きな課題です。近年の ネパール、 日本、 ハイチ、および チリ での災害が、それを裏付けています。 地震活動 の理解や建築技術の開発は大きく進展しましたが、大規模に建物を保護する満足のいく方法は、まだありません。
新築建物については、現在、耐震技術はかなり高度なものとみなされており、記録された地震の圧倒的多数に耐えられる個々の構造物を建てることが可能です。地震によって建物に生じる振動(ひいては損傷)を軽減するよう設計された免震システムやダンパーなどの装置は、新築建物の設計において効果的に活用されています。
しかし、地震地帯には、建物自体に保護機能が備わっていないものが数多く存在します。特に発展途上国では、建て替えや、より厳格で費用もかさむ建築基準の導入は選択肢とみなされていません。2015年4月のネパール地震では、 13万戸を超える住宅 が倒壊しました。
さらに、こうした技術は、通常、既存の構造に大幅な改変を加える必要があるため、 既存建物の保護にはほとんど利用されていません 。特に発展途上国の歴史的建造物、重要施設、都市部の住宅では、従来の局所的な対策は実用的でない場合があります。
つまり、単一の装置を使い、既存の建物を改変することなく複数の建物を保護する代替策が必要です。ブライトン大学では、地震の地盤波によって近隣の構造物に生じる振動を軽減する、新しい 振動バリア (ViBa)を設計しました。この装置は土中に埋設し、周囲の建物から切り離して設置します。地盤の動きによって生じる動的エネルギーのかなりの部分を吸収し、その結果、地震応答を40~80%低減できるはずです。
この発想の背景には、建物を独立した構造物としてではなく、地下の土壌や各要素間の相互作用も含めた都市モデルの不可分な一部として捉える考え方があります。各ViBaは、地震から1棟または複数棟を保護するよう設計できますが、都市全体を守るため、戦略的な場所に配置する装置ネットワークの一部にもなります。
ViBaは基本的に、ばねで所定の位置に保持された固体の中央質量を箱に収めた構造です。ばねによって質量が前後に動き、地震波による振動を吸収します。装置全体は土壌を介して建物の基礎とつながり、建物からの振動を吸収します。地下に設置する箱の位置は周囲の基礎の深さによって異なりますが、地表に置くことも可能です。
ViBaは土壌中のあらゆる振動を軽減するよう設計されているため、道路交通、高速列車、大型機械、岩盤掘削や発破など、人間の活動による地盤波から建物を隔離する用途にも使えます。この技術は、鉄道の振動を遮断するために用いられる溝や埋設鋼矢板壁などの従来策よりも、多くのエネルギーを吸収できる可能性があります。
建設に着手
ViBaの課題は、その大きさです。保護対象となる平均的な建物の質量の少なくとも50%が必要となり、その結果、建設と設置にかかる費用も大きくなります。そのため、単一の建物を保護する現在の技術と比べると、価格はかなり高くなるでしょう。しかしViBaは、複数の建物の振動を軽減するよう設計できます。また、現在の技術では実用的な対策が難しい歴史的に重要な建物にも適用できるため、実行可能な解決策とみなすことができます。
これまで私たちが行ったのは、コンピューターと実験室の試作品を使ってViBaの動作をモデル化することだけです。実環境に導入するには、正確な仕組みを理解し、周囲の建物に損傷を与える副作用がないことを確かめるため、さらに多くの実験が必要です。また、最も費用対効果の高い建設・設置方法を検討するため、産業界とも協力する必要があります。
しかし、私たちの 最新の研究 は、ViBaが地震から建物を守るための実行可能な代替策であることを示唆しています。長期的には、災害への備えがより整った安全な都市につながり、最終的に人命を救う可能性があります。
この記事は、 The Conversationとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味しません。
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著者:Pierfrancesco Cacciolaは、ブライトン大学環境・技術学部の副学部長です。
画像:ひび割れたアスファルトの上を走る車。ロイター/Stephen Lam。


