生物コンピューターはがんとの闘いに役立つのか?

生物コンピューターはがんとの闘いに役立つのか?
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バイオエンジニアたちは、生体材料でできた小さな回路を設計し、細胞に組み込んでその機能を変えることを目指して、生物コンピューターの開発に取り組んでいます。将来、こうした開発によって、がん細胞を再プログラムし、制御不能な速度で分裂するのを防げる可能性があります。同様に、幹細胞を分化した臓器細胞へと再プログラムすることも考えられます。

研究者たちは、まだそこまで到達していません。生物コンピューターの個々の構成要素や試作品の開発に過去20年間取り組んできましたが、今日のバイオコンピューターはシリコン製のコンピューターとは依然として大きく異なり、バイオエンジニアたちはいくつもの大きな課題に直面しています。

たとえばシリコンチップは、1と0で計算します。電流が流れているか、流れていないかのいずれかであり、瞬時に状態を切り替えられます。これに対し、生物学的な信号は明確さに欠けます。「信号あり」と「信号なし」のほかに、「少しだけ信号がある」という中間状態が数多く存在します。これは、特定の生体分子を検知して関連する信号を伝えるセンサーとして働くバイオコンピューターの構成要素にとって、特に不利な点です。入力信号がないのに出力信号を送ってしまうこともあり、こうした構成要素を複数、回路内で直列につなぐと問題はさらに深刻になります。

「漏れ」のないバイオセンサー

チューリヒ工科大学(ETH Zurich)バーゼル校のバイオシステム科学・工学部で合成生物学教授を務めるYaakov Benensonの研究グループに所属する博士課程学生、Nicolas Lapiqueは今回、内部タイマーを使って個々のセンサー構成要素の活動を制御する生物学的回路を開発しました。この回路は、システムが必要としていないときにセンサーが作動するのを防ぎ、必要なときには制御信号によって作動させることができます。研究者たちはこの成果を、科学誌『Nature Chemical Biology』に最近発表しました。

基盤となる技術を理解するには、これらの生物学的センサーが、酵素によって読み取られ、RNAやタンパク質に変換される合成遺伝子からできていることを知る必要があります。Lapiqueが開発した制御可能なバイオセンサーでは、出力信号を担う遺伝子は回路DNA内で向きが逆に組み込まれているため、基本状態では働きません。組換え酵素と呼ばれる特殊な酵素が遺伝子を回路DNAから切り出し、正しい向きに戻すことで、遺伝子が活性化します。「回路のタイミングを精密に制御できるため、入力信号を以前よりはるかに正確に伝えられます」とBenensonは述べています。

これまでに研究者たちは、ヒトの腎臓細胞とがん細胞の細胞培養で、作動準備の整ったセンサーの機能を検証しました。それでも、がん細胞を検知して殺す、より複雑なバイオコンピューターに使えるよう、センサーをさらに発展させることをすでに見据えています。こうしたバイオコンピューターは、典型的ながん分子を検出するよう設計されます。細胞内にがんマーカーが見つかった場合、回路はたとえば細胞の自殺プログラムを作動させることができます。がんマーカーのない健康な細胞は、この過程の影響を受けません。

新たな信号変換器を開発

一方、さまざまな生物学的構成要素を組み合わせ、より複雑なバイオコンピューターを作ることも、バイオエンジニアにとってさらなる課題です。「電子工学では、回路を構成する部品は常に同じ方法で接続されます。電流が流れるか流れないかを決める一本の電線です」とBenensonは説明します。生物学では、多様なタンパク質やマイクロRNA分子など、さまざまな信号があります。生物学的な構成要素を望む順序で組み合わせるには、その間に信号変換器を接続する必要があります。

Benensonのもとで博士課程に在籍するLaura Prochazkaも、多用途の信号変換器を開発しました。彼女はこの成果を最近、学術誌『Nature Communications』に発表しました。この新しい構成要素の特徴は、ある信号を別の信号に変換するだけでなく、複数の入力信号を複数の出力信号に簡単に変換する用途にも使えることです。

この新しい生物学的プラットフォームにより、生物学的回路の応用範囲は大きく広がります。Benensonはこう述べています。「生物学的な構成要素を自由に組み合わせ、モジュール式に、プラグ・アンド・プレイ方式で使えるようになったことで、ソフトウェア工学で知られるプログラミングの概念を生物コンピューターに応用する段階に近づいています。将来、バイオエンジニアは文字どおりプログラムを書けるようになるでしょう。」

ETH Newsとの共同掲載 ETH News

著者:Fabio Bergaminはチューリヒ工科大学(ETH Zurich)の編集者です。

画像:米国国立ヒトゲノム研究所が公開した、日付不詳のアーティストによるイラストに描かれたDNA二重らせん。ロイター/米国国立ヒトゲノム研究所/配布資料

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