気候変動、飢餓、不平等などの世界的課題を前に、持続可能な開発はこれまで以上に必要とされています。
ブレンデッド・ファイナンスは、開発途上国のプロジェクトに必要な追加的な民間資金の調達に役立ちます。
ブレンデッド・ファイナンスの普及を加速し、持続可能な開発のための資本を動員するには、金融仲介機関が必要です。
気候変動、不平等、飢餓などの大きな課題に世界が直面するなか、持続可能な開発はこれまで以上に必要とされています。ただし、それには十分な資金が必要です。
ブレンデッド・ファイナンスとは、開発途上国の持続可能な開発に向けて追加的な民間資金を動員するため、公的資金を戦略的に活用することです。
ブレンデッド・ファイナンス取引の最大の価値は、十分な資金が行き渡っていない分野への投資資金を引き出せることです。こうした投資分野は、リスクを避ける投資家には「リスクが高すぎる」と見なされることが多く、リスクを取る投資家にとっても、リスクに見合うリターンが得られない場合があります。
ブレンデッド・ファイナンス戦略には明らかな利点があるにもかかわらず、関連案件の市場は世界的に緩やかな成長にとどまっています。ブレンデッド・ファイナンスのグローバルネットワークであるConvergenceの追跡データによると、2010年以降のブレンデッド・ファイナンスの累計資金フローは、2022年時点で約1,800億ドルに達し、2015年以降の年間資金フローは平均約90億ドルとなっています。
これは、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に必要な資本額を考えると、著しく少ない水準です。その額は約4兆2,000億ドルと推定されており、開発途上国では年間この規模の資金が必要です。
ブレンデッド・ファイナンスの普及を妨げる課題
ブレンデッド・ファイナンスの普及には、プロジェクトの規模が小さいこと、案件の探索、デューデリジェンス、取引にかかるコストが高いことなど、いくつもの課題があります。
さらに、持続可能なプロジェクトへの投資に関心を持つ可能性のある民間投資家も、利用できるネットワークや人脈がなかったり、取引の組成に携わる時間がなかったりするため、ブレンデッド・ファイナンスへの参加が難しいと感じています。
一方、資金を必要とする中小企業やプロジェクトの多くは、案件を組成するためのリソースがありません。また、投資家が求める詳細なデューデリジェンスを実施するための能力や知識も不足しています。
多国間開発銀行(MDB)や開発金融機関(DFI)は、ブレンデッド・ファイナンス案件を主導する金融仲介を担ううえで有利な立場にあります。
しかし、これらの機関は主に自らの資本を投資するためにブレンデッド・ファイナンス案件を組成しており、そのため民間資本を動員する可能性が実現していません。
そのことは、DFIワーキンググループが発表した譲許的ブレンデッド・ファイナンスに関する共同報告書(2021年)にも示されています。同報告書によると、MDBは14億ドルの譲許的資金を拠出し、それによって自らの勘定から51億ドル、民間部門からはわずか31億ドルを呼び込みました。
資金フローをつなぐ仲介機関が必要
持続可能性関連プロジェクトに利用しやすい仲介プラットフォームがないため、民間の資金提供者はブレンデッド・ファイナンスへの参加が難しくなっています。
したがって、民間投資家が譲許的資金の提供者と容易にやり取りできる経路を整備し、開放することで、開発分野への資金の流れを拡大できます。
有望な解決策は、グリーン分野に特化した金融仲介機関を設立することです。その役割には、次のようなものが含まれます。
投資家と投資先をつなぐ
金融仲介機関は、専門知識を深め、業界内に強固なネットワークを築くことで、ブレンデッド・ファイナンス取引に適した投資機会を特定できます。こうした専門知識とネットワークを活用すれば、債務や株式資本を求めるさまざまな事業開発者、企業、プロジェクトを仲介機関が集約できます。
投資家と投資先のニーズに合わせて案件を組成する
仲介機関はまた、複数の中小企業の投資ニーズをまとめ、十分な規模の投資機会を作る集約機関としての役割も担う必要があります。
投資家からの意見によると、開発コミュニティは集約プラットフォームを通じて5億ドルを超える案件を推進し、大規模な民間資本を呼び込むべきです。この機関は、少額、中規模、大口のさまざまな投資家が投資に向けて集まる場を設けることができます。
金融仲介機関は、税効率の高い仕組みを設計するため、各国の規制・金融環境や海外投資家についても理解している必要があります。時間をかけて、個別対応の取引ではなく標準化された取引テンプレートを整備すれば、取引コストを大幅に削減でき、特に小規模案件に役立ちます。
予備的なデューデリジェンスを実施する
仲介機関がもたらすもう一つの重要な付加価値は、少なくとも基本的な財務・法務項目についてデューデリジェンスを実施し、投資家の案件探索や取引のコストを削減することです。
大規模にデューデリジェンスを実施すれば、取引コスト全体を削減できます。小規模な民間投資家は、同じ投資機会の調査にリソースを重複して投じずに済むよう、仲介機関が実施したデューデリジェンスを活用できます。
インパクトデータのオープンなリポジトリを作る
市場水準を下回るリターンで公的資金や慈善資金を活用することによる、肯定的な「追加性」を立証することは、ブレンデッド・ファイナンス案件の基本的な要件です。
しかし、プロジェクト実施前の基準値や実施後のインパクトデータは、追跡されていない、容易に入手できない、あるいは個別の組織内に閉じ込められていることが少なくありません。そこで金融仲介機関が主導し、プロジェクトのインパクトに関する詳細なデータを集めたオープンソースのリポジトリを作成できます。
追加性が生み出された証拠となるため、より多くの公的資本を呼び込む根拠になります。さらに、民間資本の提供者は、この取引構造が市場水準のリターンをどのように実現できるかをよりよく理解でき、民間資本の流れを加速できます。
ブレンデッド・ファイナンスにおけるMDBとDFIの役割
多国間開発銀行や開発金融機関は、ブレンデッド・ファイナンス市場の発展に向けて金融仲介機関の役割を引き続き十分に担えますが、そのためには業務運営やビジネスモデルの見直しが必要です。
たとえば、ブレンデッド・ファイナンス取引で動員する民間資本の割合を高めるため、MDBの目標を引き上げ、資本動員目標を中核的な業績指標にすることが考えられます。
世界経済フォーラムは、クリーンエネルギーへの移行をどのように促進しているのでしょうか。
エネルギー・マテリアルセンターは、エネルギー、素材、産業システムを再編する複雑な移行を理解するため、リーダーたちをつなぎます。また、エネルギー安全保障、手頃な価格、持続可能性がどのように交わるかを探る場を提供します。
バリューチェーンや地域を越えた協働を通じて、同センターは関係者が連携し、安全で低炭素かつ公平な移行に向けた実践的な解決策を見いだすための共通の道筋を築きます。
もう一つ有効な戦略は、MDBとDFIの業務運営を見直し、自らの資金の拠出に注力するのではなく、民間投資家を呼び込む取引で役割を担うことです。たとえば、ブレンデッド・ファイナンスの仕組みにおいて、MDBやDFIが主要な資本提供者ではなく、二次的な資本提供者として投資することが挙げられます。
さらに、OECD開発援助委員会の加盟国など、MDBやDFIに資金を提供する側も、民間資金の動員により多くの資金を配分できます。現在、政府開発援助のうち民間資本の動員に使われているのはわずか2%です。
ブレンデッド・ファイナンスの普及を加速するには
要するに、金融仲介機関は、持続可能な開発のための資本を動員し、ブレンデッド・ファイナンスの普及を加速できます。
金融仲介機関は、現在の市場にある不足を補い、開発分野への民間資本の流れを呼び込む新たな方法を主に考案する役割を担う必要があります。
これまでこの役割を担ってきた従来型の金融機関であるMDBやDFIは、自らの方針を見直し、ブレンデッド・ファイナンス取引において民間の資金提供者が参入しやすい道を開くことで、重要な役割を果たせます。
本稿で示された見解は、著者のみの見解です。


