グローバル・バリューチェーンの最適化を目指す企業は、これまでも貿易摩擦やボトルネックを回避する方法を見つけなければならなかった。
最近では、地元製品への需要に応えながら輸送コストを削減し、レジリエンスを高めるため、事業を国内に回帰させる動きが見られる。
各国政府は保護主義的な政策を避け、経済協力を強化し、世界貿易を自由化するために連携する必要がある。
グローバル・バリューチェーンの最適化を目指す企業は、これまでも貿易摩擦やボトルネックを回避する方法を見つけなければならなかった。
ごく最近では、レジリエンスを高めるとともに輸送コストを削減し、地元で製造された製品への高まる需要や、より迅速な配送へのニーズに応えるため、事業を国内に回帰させる動きが見られる。
地政学的緊張は貿易縮小の正当な理由にはならない。企業は常に回避策を見つけるし、見つけなければならないからだ。新たな市場へのアウトソーシングやニアショアリングなどがその例だ。
しかし、貿易は自然に流れ続けると考えるのは、官民双方にとって誤りだろう。エコノミスト・インパクトとの共同調査によると、貨物所有者の半数以上が、インフレ上昇を受けた金融引き締めによって、2023年に輸出入が縮小すると答えている。
貿易が引き続き海外直接投資(FDI)を促し、地元企業が商品を輸出する機会を提供するには、各国政府が保護主義的な政策から距離を置き、連携して貿易を自由化し、国際経済協力を強化し、貿易障壁を取り除く必要がある。
各国政府が自国経済のサプライチェーンのレジリエンスを強化し、持続させるために、直ちに実行できる3つの施策を紹介する。
1. 世界貿易機関(WTO)を支援する
パンデミック後にサプライチェーンと需要が適応し、回復したことは、貿易とグローバリゼーションを支持する人々にとって喜ばしいことだ。しかし、今後数年間、貿易の起源や構造、流れには根本的な変化が求められる。保護主義に対抗するには、国際経済協力が必要だ。
そのため、世界貿易機関(WTO)が主導する貿易ガバナンスの強化が不可欠となる。WTOが弱体化すれば、世界中の企業の不確実性が高まるだけだ。
これは政府間の議論にとどまらない。多くの場合、輸出入をめぐる世界的な障壁や機会について最も深い知見を持つのは民間セクターだ。企業のニーズを伝え、多国間貿易交渉を前進させることに、より注力する必要がある。
「WTO企業調査」では、95%がWTOの活動は企業にとって極めて重要だと回答した。民間セクターのリーダーは、私たちの地域社会に最も影響を及ぼす議論の中心に確実に参加できるよう、より積極的に関与するための働きかけを行う必要がある。
WTOは貿易に関する世界的なルールを扱う唯一の国際機関であるため、意思決定の場に席を確保することが極めて重要だ。私たちはそれにふさわしい支援を行わなければならない。
2. デジタル面の説明責任を強化する
21世紀の今、ロボット工学からメタバースまで、先駆的な先端技術が登場している。一方で、物流業界はしばしば書類やその他の旧式システムに頼っている。そのため企業のリスクが高まり、世界中で貨物の所在を把握できないまま業務を行う企業も多い。
DP Worldの目標は、アマゾンが電子商取引にもたらした変革を物流にもたらすことだ。その実現には、デジタル化に加え、データ共有に関する規制の幅広い導入が極めて重要となる。既存のインフラと連携する新たなデジタルソリューションを中心に、技術統合の強化に多額の投資を行ってきたが、単独では実現できない。
貿易の流れを把握、評価、最適化するための可視性を高める官民のデータ共有の仕組みを推進する触媒として、各国政府の関与が必要だ。
貿易の変革に向けて協力する好例が、シングルウィンドウ構想だ。世界銀行グループが貿易円滑化支援プログラム(TFSP)の資金提供を受けて実施するこの構想は、ペーパーレス貿易への道筋となる。幅広い貿易協定を結ばずとも、情報の標準化やコスト削減、国際貿易手続きの迅速化を支援するために必要なのは、このような連携だ。
3. 貿易インフラを近代化する
企業が世界市場により広くアクセスでき、貨物の輸送にほとんど支障がないとしても、物理的なインフラが供給に対応できるようにしなければならない。緊急の措置を講じて新興市場を通る貨物の流れを迅速化しなければ、特定の地域社会や国々が貿易から取り残されるおそれがある。
アフリカがその一例だ。新たなデジタル貿易回廊を支えるには、適切な物理的インフラが不可欠である。アフリカ大陸自由貿易圏(AfCTA)は昨年発効し、自由化の拡大と規制面での連携強化を通じて、アフリカ域内貿易の拡大を目指している。しかし、その成否は、賢明な選択と協調的な政策によって、大陸全体のサプライチェーンの上流から下流までの可能性を引き出せるかどうかにかかっている。
世界経済フォーラムは、持続可能な世界市場の実現にどう取り組んでいるのか。
南米でも、商品価格の高騰や自由貿易協定があるにもかかわらず、インフラの不足が貿易量を妨げている。米州開発銀行によると、適切なインフラの現在の不足によって、年間約1,500億ドルの不足が生じている。その不足を埋めるには企業の投資が不可欠だが、貿易手続きの標準化、デジタル化、簡素化によって貿易を円滑化することも必要だ。
この3つの施策を実行すれば、各国政府はサプライチェーンのレジリエンスを強化し、地元経済と企業の双方に利益をもたらすことができる。



