道路貨物輸送は輸送部門の排出量の大きな要因であり、この部門の脱炭素化はパリ協定の気候目標達成に不可欠です。
しかし、トラック専用の充電インフラが限られているため、欧州の高速道路でバッテリー式電動トラックの普及が遅れています。
必要な取り組みと、その進め方を紹介します。
パリ協定の気候目標を達成するには、輸送部門の脱炭素化がますます重要になっています。世論の議論や自動車メーカーへの絶え間ない圧力を受け、バッテリー式電動乗用車の性能向上に向けた研究開発への投資は増加しました。しかし、電動モビリティ部門では多くの進展があった一方、バッテリー技術の大きな進歩や効率改善による前向きな勢いにもかかわらず、道路貨物輸送部門の排出量の推移はパリ協定の目標に沿ったものには程遠い状況です。
欧州では、道路を走る車両のうちトラックは約2%を占めます。欧州の高速道路はたいてい非常に混雑していることを考えると、意外に思えるかもしれません。
しかし、この2%の車両が、陸上輸送によるCO2排出量の22%を占めています。また、輸送サービスへの需要増加から、排出量は今後さらに増えると見込まれます。現在の約2.5ギガトン(Gt)から、今世紀半ばまでに4.6 Gtへ。大型道路貨物輸送の排出量削減は重要であるにもかかわらず、モビリティの将来をめぐる議論では、この部門はほとんど注目されてきませんでした。
これまでの進展
最新のデータによると、欧州自動車工業会(ACEA)が示すEUで新規登録されたトラックの97.9%はディーゼル車です。2019年の新車トラック販売台数のうち、純粋な電気自動車はわずか0.2%で、代替燃料車の市場シェアは約2%でした。市場シェアはわずかですが、注目すべきなのは前年比です。2019年、電動トラックの需要は109.2%と大幅に伸びました。さらに、調査を実施したベイン・アンド・カンパニーによると、顧客の低排出車への関心は高まっています。回答者の約40%が、次回の購入時に電動ハイブリッド車または電動トラックを1台以上購入することを検討していると回答しました。
これは朗報です。特に、欧州が大型輸送の脱炭素化に向けて野心的な目標を掲げていることを考えれば、なおさらです。
2019年8月、新たな大型車のCO2排出基準に関するEU規則が発効しました。大型車の排出量をパリ協定の目標に沿わせるため、この規則では、2025年までに2019年比で15%、2030年までに30%削減することが定められています。
鍵を握るインフラ
バッテリーのコストは過去10年間で大幅に低下しました。2010年には1kWhあたり1,183ドルでしたが、2019年には1kWhあたり156ドルに下がりました。ダイムラー、MAN、ボルボなどの大手トラックメーカーはゼロエミッション・トラックの生産を拡大しており、製品需要も着実に高まっているようです。カルフール、IKEA、ユニリーバ、ハイネケン、ネスレなどのサプライチェーン側の企業は、誓約を発表し、自社のカーボンフットプリント削減を約束するとともに、輸送業界の環境負荷低減を後押しするため、公共部門によるさらなる支援を求めています。
こうした進展は前向きです。残る小さな問題は、インフラです。
調査によれば、バッテリー式電動乗用車の普及は、総保有コスト(TCO)だけでなく、十分な公共充電インフラを利用できるかどうかとも強く相関しています。
細部に潜む課題
過去数十年にわたる充電インフラへの投資や各国の数多くの優遇策により、バッテリー式電動乗用車は大幅に増加しました。しかし、電動トラック専用の公共充電インフラを拡大するための、調和の取れた取り組みはまだありません。大型車に必要な充電インフラの技術仕様は乗用車向けとは異なる点に留意が必要です。バッテリー式電動トラックの充電には、より高出力の充電設備が必要であり、十分な駐車スペースを確保できる欧州の高速道路沿いに設置するのが最適です。現在、バッテリー式電動乗用車向けの充電器で大型トラックを充電すると丸6日かかりますが、より高出力の充電設備を使えば、わずか45分で済みます。
大型トラックに適した充電設備の現状について、最近の調査によると、ACEAが2020年3月に発表した時点で、車両のエネルギーおよび出力要件を満たす充電設備(500kW以上で稼働する充電器)は一つもありません。
推計では、2030年までに欧州で約20万台のバッテリー式電動大型車(車両重量3.5トン超)が走行する見込みです。欧州自動車工業会によると、そのためには欧州の高速道路沿いに少なくとも高出力の公共充電設備2万基が2030年までに必要です。
さらに、輸送ルート全体をカバーするため、夜間充電用の充電拠点や物流センターの目的地充電器も必要です。推計ではエネルギー需要の約80%を夜間の拠点充電で、15%を目的地充電でまかなう必要があります。残る5%は公共充電設備でまかなう必要があります。
行動の呼びかけ
バッテリー式電動トラックをディーゼル燃料の内燃機関トラックに代わる実用的な選択肢とするには、欧州全体の法整備、インフラへの追加投資、そして調和の取れた取り組みが必要です。欧州委員会が定める、充電インフラに関する加盟国の拘束力ある目標と、欧州の大型道路貨物輸送の電動化を推進する業界の取り組みが求められます。ダイムラーによるeTruck Charging Initiativeなど、業界各社の取り組みは、共通の基準や規制を整えることで、政策面から支援する必要があります。
世界経済フォーラムの新たな道路貨物輸送脱炭素化イニシアチブは、電動トラックのエコシステム全体から関係者を結集し、欧州におけるゼロエミッション大型車への移行と普及を加速させます。このイニシアチブでは、エコシステムの需要側と供給側の関係者に向け、実行可能なロードマップ、リスクを低減する実証事業、資金調達モデルを共同で策定します。さらに、トランスポート・アンド・エンバイロメント、RAP、ICCT、ECTAなど、著名なシンクタンクや確立された業界横断イニシアチブの政策活動にも貢献することを目指します。





