信頼の欠如が、ステークホルダー資本主義やESGに関する主張への信頼を損なっています。
企業のリーダーは、信頼を築き、維持するために、これまで以上に尽力しなければなりません。
信頼を育み、ステークホルダーの確信を高めるのに役立つ3つの中核的要素があります。
今日、企業のリーダーは新たな物差しで評価されています。CEOと取締役会にとって最も重要な試金石は、株主だけでなく、すべてのステークホルダーのために生み出す価値となっています。
私たちの調査によると、成功の鍵は信頼です。しかし、不信感や冷笑主義、誤情報の広がりが、企業のインパクトや環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する主張への信頼を損なっています。
ステークホルダー資本主義の時代に繁栄するには、企業は従業員、投資家、顧客、規制当局、企業パートナーからの信頼を積極的に育まなければなりません。そのためには、こうしたステークホルダーをより深く理解する戦略を策定し、信頼構築に向けた意図的な取り組みを実施し、その取り組みを継続的に追跡するとともに、主要なステークホルダーと率直かつ効果的にコミュニケーションを図る必要があります。
高まるステークホルダーの影響力
ステークホルダーから信頼を得る必要性を認め、それに応える企業は、業界をリードする立場を築けます。そうしない企業はリスクにさらされます。
世界がステークホルダー資本主義へ移行したことを示す明確な証拠は数多くあります。2019年のビジネス・ラウンドテーブルは、企業の目的をあらためて定義し、企業は投資家のために利益を上げるだけでなく、すべての人に役立つ経済を促進するために存在すると表明しました。ビジネスリーダーや大手ブランドは、ESGやインパクト関連の優先課題に、以前よりはるかに多くの時間、労力、予算を投入しています。気候、多様性、公平性、包摂(DEI)、人的資本などの重要テーマについてステークホルダーと関係を築くためにも、多大な資源を投じています。
また、CEOや取締役会には今、複雑で、ときに相反する多様な役割を果たすことが期待されています。社会・環境課題を率先して解決し、微妙で意見が分かれる政治問題について明確な立場を示し、包摂的な企業文化を築き、あらゆるステークホルダーのニーズに応えながら、優れた事業成果を上げなければなりません。
こうした役割を効果的に果たせなかった企業は苦戦しています。エデルマンの最近の調査によると、
従業員の79%は、自社が重要な社会課題に対して行動を起こすことを期待しています。
消費者の64%は、社会問題に対するブランドの姿勢を理由に、ブランドを乗り換えたり、ボイコットしたり、選択したりしています。
株主の90%は、企業がESG目標を達成できれば、より高いリターンが得られると考えています。
しかし、ステークホルダー・モデルに沿った経営は、リスク軽減だけを目的とするものではありません。すべてのステークホルダーの期待に応える企業は、大きな恩恵を得られる可能性があります。言い換えれば、インパクトは競争優位の源になり得ます。JUST Capitalの調査によると、米国でステークホルダーのニーズに最もよく応えている大企業は、同業他社と比べて、
自己資本利益率が4%超高く、
配当を12%多く支払い、
過去5年間の市場での成績が約7%上回っています。
信頼が果たす中心的な役割
ステークホルダー資本主義への移行により、企業のリーダーは、異なる、ときには相反する利害や見解を持つ幅広い層の期待に応えるよう求められています。この難しい状況を乗り切る鍵は、彼らから信頼を得ることです。
数十年にわたるエデルマンの調査から、信頼が企業の総合的な業績に欠かせない役割を果たすことが明らかになっています。信頼される企業は、成長期には市場を5%、危機の際には11%上回る成績を上げてきました。好意的なメディア報道は2倍に上り、規制当局による監視は半分にとどまります。また、顧客や従業員のロイヤルティ、社会の関与、株主の支持も大幅に高い水準にあります。
しかし、ステークホルダーの信頼を築くことは難しくなっています。ESG、サステナビリティ、インパクトに関する企業の発表には懐疑的な見方が広がる一方、メディアや規制当局はグリーンウォッシングや、企業目的に関する二枚舌をますます厳しく追及しています。エデルマンの信頼に関する調査によると、
世界の投資家の10人中8人超が、企業のESG情報開示の正確性に疑問を抱いています。
10人中7人超は、企業が表明したサステナビリティ、ESG、DEIへの取り組みを実現できるとは考えていません。
さらに、Googleのために実施された最近の調査では、企業幹部の半数超が、自社はグリーンウォッシングを行ったことがあると考えていました。こうした状況で、消費者、株主、従業員による抗議活動が激化しても、驚くにはあたりません。
過度なステークホルダーの期待や、ESG・インパクト課題に関する企業の自己中心的な発言が、信頼を損なうことがあります。いずれにせよ、信頼が不足すれば、事業上の財務リスクや業務リスクが大きくなり得ます。上記の事例は例外というより、むしろ常態を示しています。注意深く見れば、企業のESGやインパクトに関する失策に対応する危機管理チームの姿を、ほぼ毎日のように目にするでしょう。
信頼構築の緊急性と、それを阻む逆風を踏まえ、リーダーは企業のESG、サステナビリティ、インパクト実績をめぐる信頼の確保を最優先課題にしなければなりません。
ステークホルダーの信頼を得る3つの鍵
私たちが話をする経営幹部や取締役は、自らが複雑な課題に直面していることを理解しています。事業実績にとって重要なインパクトやESGの課題を特定し、それらに関するすべてのステークホルダーの期待を理解し、各課題への現状の対応状況を測定し、重要課題に対処するための資本配分を決めると同時に、多様なステークホルダー全体との信頼を築かなければなりません。
成功への道には、3つの中核的要素があると私たちは考えます。
1. 現状の把握
まず企業は、主要なESG・インパクト課題ごとに、各ステークホルダーとの信頼関係の水準を把握する必要があります。そのためには、ステークホルダーの信頼を支える要因を分解し、彼らの動機、行動、ニーズをより深く理解します。現状を把握することで、企業が注力すべき領域と、実施できる、また実施すべき取り組みの優先順位を決めやすくなります。
2. 取り組み
次に、企業のリーダーは、自社の行動やコミュニケーションが従来の財務・業務実績指標に及ぼす影響を把握する必要があります。指標には、株主総利回り、評価倍率、資本コスト、従業員のエンゲージメントと定着率、ブランド認知度、顧客ロイヤルティ、購入意向などが含まれます。
3. 効果測定
最後に、どの信頼構築施策が最も大きな価値を生み出すかを見極めます。この情報によりリーダーは、ESGやインパクト施策への投資1ドル当たりに生み出される価値、すなわち「信頼への投資収益」の基本的な予測を立てられます。
このように意図的に信頼を育むことで、さまざまな恩恵が得られます。ESGやインパクトの実績が正確だというステークホルダーの確信を高め、そうした取り組みが事業成果に結びつくことを示し、環境・社会面でより大きな成果をもたらし、新たな方法でステークホルダーの関与を促し、懐疑と不信の悪循環を断ち切る助けとなります。
今日の企業は、ESGやインパクトについて発言したことに責任を持ち、約束を果たす必要があります。実績を測定し、進捗を報告し、外部に対して率直で誠実なコミュニケーションを保つことが、すべてのステークホルダーのために最大の価値を生み出すうえで欠かせない信頼を育みます。



