労働市場が逼迫しているにもかかわらず、英国と米国では雇用の回復がいまだ完了しておらず、パンデミック前の水準を下回っている。
IMFスタッフによる新たな研究は、米国と英国の雇用と求人に関する詳細なデータを用い、広く信じられている4つの説明を検証する。
その中には、募集されている仕事の種類と、人々がそれに就こうとする意思とのミスマッチが含まれる。
米国と英国で最近見られる労働市場の謎は、ミスマッチ、パンデミックが女性(米国)に及ぼした影響、そして高齢労働者の労働市場からの退出によって、部分的に説明できる。
パンデミックが労働市場を大きく揺るがしてからほぼ2年が経つが、多くの先進国では求人が豊富にある一方、労働者はまだ完全には戻っていない。
求人は豊富なのに労働者が不足しているという広範な傾向は、成長、格差、インフレに重大な影響を及ぼす可能性がある。
カルロ・ピッツィネッリ、イッペイ・シバタ
雇用率が新型コロナウイルス感染症流行前の水準を下回るというこの格差は、米国と英国で続いている。求人・失業比率の高さや離職の多さに表れているように労働市場が逼迫しているにもかかわらず、両国では雇用の回復がいまだ完了せず、パンデミック前の水準を下回っている。オミクロン株の感染拡大が労働市場を冷え込ませる可能性もあり、この傾向は予想以上に長引くおそれがある。
IMFスタッフによる新たな研究は、米国と英国の雇用と求人に関する詳細なデータを用い、広く信じられている4つの説明を検証する。
手厚い所得支援が、仕事を探し、就職する意思に及ぼす影響。
募集されている仕事の種類と、人々がそれに就こうとする意思とのミスマッチ。
学校や保育の混乱が続く中、幼い子どもを持つ母親が労働市場から退出すること。
高齢労働者が労働市場から退出すること。
仕事に戻らない高齢労働者の労働参加率低下が共通の要因であり、最も大きな影響を及ぼしていることが分かった。ミスマッチの役割は二次的である。女性の労働参加率低下は米国に限られるが、数量的には重要である。
求人が豊富なのに労働者が不足しているという広範な傾向が続けば、成長、格差、インフレに重大な影響を及ぼす可能性がある。労働需要が持続する中で雇用回復が鈍い状態が続けば、賃金上昇を促す一方で経済成長を抑制しかねない。賃金上昇は労働者にとって朗報だが、インフレをさらに押し上げるおそれがある。
所得支援策の手厚さ
考えられる最初の説明は、パンデミック中の所得支援策によって労働者が仕事を選べるようになり、応募や内定受諾が遅れ、最終的に雇用の回復も遅くなったというものだ。
しかし、米国の連邦失業保険給付上乗せ措置が最近段階的に終了した事例など、論文で検討した予備的な証拠は、新型コロナ関連の失業給付を早期に打ち切っても、人々の職場復帰に及ぼす影響は小さく、一時的だったことを示唆している。
ミスマッチ
第2の候補となる説明は、失業者が仕事を探している産業や職種と、求人が豊富な産業や職種とのミスマッチが拡大したというものだ。レストラン、ホテル、娯楽施設など、対面でのやり取りが必要な仕事は特に大きな打撃を受けた一方、「在宅勤務が可能な」仕事はかなり良好な状況を保った。宅配サービスなど、むしろ急成長した分野もある。打撃の大きかった産業や職種で職を失った労働者が新たな機会への移行に苦労し、その結果ミスマッチが生じたのだろうか。
簡潔に言えば、答えは「はい」だが、これが全体像の一部にすぎない。危機の間にミスマッチによって生じた雇用の減少は小幅であり、意外なことに、より小さかったことが分かった。世界金融危機の時よりも小さかったのである。昨年秋の初めの時点で、ミスマッチが説明するのは、新型コロナ流行前の水準と比べた未解消の雇用格差のうち、米国で約18%、英国で約11%にすぎないと推計している。
シーセッション
第3の説明は、少なくとも米国では、より有力に見える。学校の長期休校や保育サービスの不足が幼い子どもを持つ母親にさらなる負担をもたらし、多くの母親が労働市場から退出した。いわゆる「シーセッション」である。
5歳未満の子どもを持つ母親の雇用減少が他の女性を上回った分は、2021年10月時点で、新型コロナ流行前の水準と比べた米国の雇用格差全体の約16%を占めると推計している。これは9月初めの23%から低下しており、その月後半に対面授業が再開されたことも一因だ。一方、英国ではこのようなシーセッションは起きず、女性の雇用減少は男性より小さかった。その理由として考えられるのは、英国ではパンデミックを通じて保育園が開園を続け、幼い子どもを持つ母親が仕事と育児の間で迫られる選択が軽減されたことだ。
高齢労働者の退出
雇用回復の遅れに寄与する最後の要因で、おそらく最大なのは、両国で高齢労働者が労働市場から大量に退出したことだ。一部の人にとっては、パンデミックに関連する健康上の懸念が理由かもしれない。また、住宅価格や金融資産価格が大幅に上昇する中で、働く必要性を考え直した人もいるだろう。
9月時点で、55歳以上の労働者の非労働力化の増加は、両国の経済で、パンデミック前の水準と比べた未解消の雇用格差の約35%を占めた。退職または離職した人のうち、最終的に労働市場に戻る人がどれほどいるかは不明だ。
雇用への傷跡に注意
ミスマッチ、シーセッション、高齢労働者の労働市場からの退出を合わせると、新型コロナ流行前の水準と比べた米国の雇用格差の約70%を説明できる可能性がある。英国ではシーセッションは起きていないが、雇用格差の約10%はミスマッチ、35%は高齢労働者の労働市場からの退出に起因すると考えられる。
さらに、ブレグジット後の外国人労働者の流出は、パンデミックによって加速し、求人を埋める意思と能力のある求職者の数を徐々に減少させた。分析では、失業給付の拡充やパンデミック関連のその他の所得支援の影響など、他の要因が果たした役割も考えられるが、その大半は残余的なものにとどまる。
より多くの高齢労働者が恒久的に退職し、手頃な保育や就学前教育の機会が不足したまま、一部の幼い子どもを持つ女性が家庭にとどまる状況が続けば、パンデミックは雇用に長期的な傷跡を残す可能性があり、特に米国でその懸念がある。
仕事に戻らない理由が早期退職であれ、保育の不足であれ、共通する点が一つある。米国と英国では、求人は低技能職で最も多く、こうした仕事の雇用は2020年以前の水準を下回ったままだ。いわゆる「大退職」と呼ばれる自発的な離職の増加も、低技能職で最も顕著である。この現象がどれほど広がり、長く続くかはまだ分からないが、これらの事実は、パンデミックをきっかけに労働者の選好が変化した可能性を示唆している。
雇用に長期的な傷跡が残るリスクを最小限に抑えるには、労働者が十分に労働市場へ戻れるよう、パンデミックへの対処を続けることが重要だ。ミスマッチのリスクを減らすために適切に設計された職業訓練プログラムも重要であり、特に米国では、保育や就学前教育の機会を拡充する必要がある。





