ESGは企業への信頼を築くことも損なうこともある。そのための5つの方法

More trustworthy and useful ESG data is needed in order to build trust.
More trustworthy and useful ESG data is needed in order to build trust.Image: Unsplash/Sean Pollock
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  • 環境・社会・ガバナンス(ESG)課題への投資家の関心が高まるなか、サステナビリティ報告に関する世界共通基準を求める声が広がっています。

  • つまり、より信頼性が高く有用なESGデータが必要です。

  • サステナビリティ情報に関する基準の強化と独立した保証は、企業が信頼を築く助けになります。

  • 基準は、サステナビリティ報告の比較可能性と透明性を高めるものであるべきです。新興国間の比較可能性と透明性も含まれます。

環境・社会・ガバナンス(ESG)の動きは、成否を分ける局面にあります。投資家の関心は歴史的な高水準に達しており、その背景には、新世代の投資家(ミレニアル世代とZ世代)の期待もあります。

しかし、ESGをめぐる議論は依然として流動的で、ESGの適切な定義だけでなく、資本配分に最も有用な情報は何かについても、さまざまな見解があります。その情報には、ESG報告と開示、タクソノミー、ESG評価、そして基礎となる科学、データ、モデリング能力が含まれます。

私たちが「サステナビリティ情報エコシステム」と定義するものは、多くの担い手によって成り立っています。投資家、取締役、経営陣、従業員、市民社会のメンバーから、評価機関、監査人、規制当局、政策立案者まで多岐にわたります。現時点では、この集団のなかで、ESGに何が含まれるのか、合意された指標をどう適用するのか、利用可能なデータをどう活用するのが最善かについて、ほとんど合意がありません。

サステナビリティ報告に関する世界共通基準の策定と、財務(Financials)の「F」とESGの結び付きを強めることには、広範な支持が寄せられています。「FESG」。直近の調査であるEYグローバル機関投資家調査の対象となった投資家の圧倒的多数(89%)は、世界的に一貫した基準に照らして測定されるESG実績の報告を、義務化してほしいと回答しました。

さらに、異なる法制度や多様な社会的・政治的背景が、サステナビリティ情報を規定する基準や規制の原則に影響を与えています。各法域が異なる速度と方法でESG報告ルールの策定・実施を進めているのは、驚くことではありません。

本稿では、サステナビリティ情報エコシステム全体で取り組むことで、意思決定に役立ち、信頼されるESG情報の報告へと前進する助けとなる、5つの重点分野を取り上げます。

新たなサステナビリティ情報エコシステムを定義する

財務情報エコシステムとサステナビリティ情報エコシステムのつながりが強まる一方で、サステナビリティ情報エコシステムには、ほかにも多様な声があります。これには、規制がほとんどないESG評価・データ提供機関、市民社会(アクティビスト投資家を含む)、従業員などが含まれますが、これらに限りません。

サステナビリティ情報エコシステムは、主に次の2つの投資家グループに役立つことを目指しています。

1. 財務リスクに注目する投資家。つまり、サステナビリティ関連要因が企業に及ぼす財務的影響に関する重要情報を求める人々

2. 社会的影響に注目する投資家。つまり、企業が外部環境(人々、地域社会、環境、社会を含む)に及ぼす影響についての情報を求める人々

有用なESGデータを求める投資家のニーズによりよく応えるため、サステナビリティ情報エコシステムの関係者は信頼を築き、連携を強化する必要があります。Image: EY

有用なESGデータを求める投資家のニーズによりよく応えるため、サステナビリティ情報エコシステムの関係者は信頼を築き、連携を強化する必要があります。EYの新たな調査、「新たなサステナビリティ情報エコシステム」(PDF)は、この目的を支える5つの重点分野を明らかにしました。

1. 複合指標の透明性を高める

複合指標では、企業は幅広いESG課題について評価され、各課題に異なる重み付けを行って総合的なESG評価を算出します。対象となる課題は、気候変動から汚染や廃棄物、製造物責任から税の透明性まで多岐にわたります。

複合ESGスコアにおける気候変動関連指標の重み付け。Image: ロジウム・グループによる分析

課題の一つは、ESG評価が財務的重要性に重みを置いているため、社会的影響に関心を持つ投資家のニーズに応えていないことです。大手ESG評価機関はいずれも、ESG評価の作成にあたり、財務的重要性(すなわち財務リスクに基づく)アプローチを採用しています。さらに、財務リスクに注目する投資家にとっても、ESG課題の重み付けに関する透明性の欠如は、明確さと意思決定への有用性を損なう可能性があります。

複合的なアプローチには、ほかにもいくつかの課題があります。たとえば、定義や算定方法について合意がなければ、組織の環境パフォーマンスを厳密に分析することが難しくなります。また、人権、労働基準、民族・人種間およびジェンダーの公平性などの社会課題は、法域間の社会的・政治的な違いにより、合意された基準に照らして定量化することがより困難な場合があります。

投資家は、こうした相違、測定上の限界、ばらつきを認識する必要があります。

2. サステナビリティ情報の多様な用途への理解を深める

サステナビリティ情報には、財務リスクの評価と社会的影響の評価という2つの用途があります。これらは相互に排他的ではありませんが、混同されやすいものです。

これまで、サステナビリティ情報エコシステムは、主に財務リスクの評価に関心を持つステークホルダーの期待に応える形で発展してきました。たとえば、ほとんどのESG報告制度や主要なESG評価機関はいずれも、企業が社会に及ぼす影響を測定していません。測定するのは、さまざまな内外の財務リスクや機会に対する企業の相対的なエクスポージャーです。

一方、近年のESG投資の拡大は、社会的・倫理的な考慮を重視するミレニアル世代などの投資家に後押しされています。2020年の調査では、世界の個人投資家のほぼ4分の3(71%)が、投資目標の一環として社会に良い影響を与えたいと回答し、ミレニアル世代ではその割合がさらに高く(75%)なりました。1

近年のESG投資の拡大は、社会的・倫理的な考慮を重視するミレニアル世代などの投資家に後押しされています。

ここで問われるのは、現在のサステナビリティ情報エコシステムが、財務的影響と社会的影響の双方の評価に役立っているかどうかです。

主なESG投資動機には重なり合う部分があるものの、サステナビリティ情報の用途の違いをさらに明確にする必要があります。同様に、基準設定機関やESG評価機関を含むエコシステムの関係者には、サステナビリティ情報のすべての利用者のニーズにどう応えられるかを検討する機会があります。

3. 保証を可能にする環境を整える

独立した保証は、サステナビリティ情報と、サステナビリティ情報エコシステムを構成する多くの関係者への信頼構築に役立ちます。

今後数年間で、市場の力により、サステナビリティ情報に対する強固で独立した外部保証の需要が高まるでしょう。米国と欧州連合(EU)はすでに、サステナビリティ開示ルールに対する保証要件の義務化を検討しています。

保証への需要が高まるなか、サステナビリティ情報エコシステムの関係者が、「3つのディフェンスライン」として知られるリスク管理の考え方を理解し、遵守することが不可欠です。この3つのラインは、信頼を築き、正確で偏りのない情報を提供する厳格な報告体制を維持するうえで重要だと広く認識されています。具体的には次のとおりです。

  • 第1のライン:経営陣、取締役会、監査委員会、内部監査の役割を含む、強固な内部統制制度を備えたコーポレートガバナンス

  • 第2のライン:独立した外部保証

  • 第3のライン:規制当局による監督

4. 比較可能で相互運用性のあるタクソノミーを策定する

サステナビリティ情報の真の透明性と比較可能性を実現するには、各法域が相互補完的な原則に基づくタクソノミーを必要とします。タクソノミーとは、どの経済活動を持続可能とみなすべきかを定める体系です。ある活動がそのタクソノミーの持続可能性の定義に該当する(または該当しない)理由を、明確でデータに基づいて示すことで、何が持続可能とみなされるのかについての混乱を解消できます。

すでにタクソノミーの策定で大きく前進している地域や国もあります。たとえば、EUタクソノミーは、持続可能な投資を拡大し、欧州グリーンディール(2050年までに欧州を気候中立にするという欧州委員会の計画)を実施するために、EUを支援することを目的としています。

EUはまた、異なるエネルギー転換の道筋や政治的現実を反映しながら、タクソノミー間の共通点を見いだすため、中国とコモングラウンド・タクソノミーに取り組んでいます。

5. 新興国の市場参加者が直面する障壁に対処する

新興国は、2050年までに世界の温室効果ガス排出量の大部分を占めることになります。一方、気候変動の影響に適応する力は、一部の他の市場よりも弱い状況です。また、地理的な位置から、深刻な気候関連事象の影響を受けやすい可能性も高くなっています。

新興国で包括的なサステナビリティデータが不足していることから、これらの国の市場参加者がサステナビリティ情報を開示する際の障壁を下げる必要があります。これは、逆効果になりかねない別個の基準を提唱するものではありません。しかし、サステナビリティ情報エコシステムにおいて、新興国への技術支援に関する能力向上と関与をさらに進めるべきです。

国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が進める国際的な基準設定の取り組みも、新興国がその基準を自国の法制度に採用する機会を活用すれば、利益をもたらす可能性があります。

企業、政策立案者、投資家が次に取るべき行動

ESGの動きはまだ始まったばかりであり、開かれた連携と信頼構築を促すためには、さらなる取り組みが必要です。それでも、政策立案者、基準設定機関、規制当局が、投資家の求める情報を定義し規制するための重要な措置をすでに講じていることは心強いことです。同時に、市場参加者は新たな形で連携し、革新的な報告やデータモデリングのソリューションを開発しています。

こうした取り組みを進めるにあたり、すべてのステークホルダーが政策プロセスと市場主導の取り組みの双方に参加し、自らの声を届けることが不可欠です。ここで取り上げた行動は、こうした取り組みに貢献するものであり、連携の輪を築き協働を進めることが、なぜすべての人にとって重要なのかを示しています。

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