戦争と世界の防衛支出が増加する一方、援助予算、人道支援資金、平和活動は縮小している。
従来の援助国における政治的変化、予算上の圧力、ガバナンスの課題により、援助の流れは一層不確実になり、対応も遅れている。その結果、早期警戒と行動の間の隔たりが広がっている。
旧来のモデルが後退するなか、再生とレジリエンスは、地域の担い手に力を与え、戦術的なリスクテイクを受け入れ、テクノロジーを活用し、平和を地球規模の公共財として捉え直すことにかかっている。
世界の紛争が急増するまさにその時、紛争の予防と解決を目的に設計された枠組みは機能不全に陥っている。研究機関の記録によると、61の戦争が2024年に発生し、1946年以来最多となった。同時に、世界の防衛支出は約10%増加し、2.7兆ドルに達した。その一方で、援助予算は縮小した。
経済協力開発機構(OECD)のデータによると、政府開発援助も昨年、実質ベースで7%超減少し、人道支援資金は同じ期間に「地殻変動級の縮小」とも言える約10%の落ち込みを経験した。紛争と脆弱性が高まる一方で、それに対応するはずのシステムが衰退しているという矛盾は明白だ。
無秩序を生む要因
世界的な無秩序を生む要因は、よく知られている。軍事支出は急増し、紛争は拡大し、軍備管理条約などの安全策は崩れつつある。ウクライナから紅海、台湾に至るまで、対立は激化している。西側諸国では、ルールに基づく秩序が崩壊しつつあるとの見方が強まっている。
人工知能(AI)の覇権をめぐる競争や、経済競争の激化も不安定さを増し、気候変動の脅威と民主主義の後退が混乱を深めている。2024年には世界の気温が過去最高を記録し、民主的自由は19年連続で後退した。その結果、危機は増える一方で、集団的に対応する道筋は減っている。
世界的な混乱の受け止め方は地域によって異なる。多くの人にとって、世界は近年の記憶にあるどの時点よりも、安定性と予測可能性に乏しく、はるかに危険に感じられている。
アジアの多くの地域では、雰囲気はより慎重で、ときには楽観的だ。多極化は、北京、デリー、ジャカルタ、リヤドに主体性をもたらす。グローバルサウス全域では、多くの政府がリスクを分散し、都合に応じて米国の安全保障を活用し、対価が見込める場合には中国市場にアクセスし、保険として地域の枠組みに参加している。
現在の世界的な変化を深刻な脅威と見る人もいれば、めったにない好機と見る人もいる。特に重要なのは、グローバルサウスから、援助と開発をボトムアップで再構築すべきだとの声がますます高まっていることだ。南側の担い手自身が、優先課題の設定、介入策の設計、資源配分の決定で中心的な役割を担うべきだと訴えている。
多国間主義の後退
国連が改革案とともに創設80周年を迎えるなか、多国間行動の余地は狭まっている。それでも、世界的な協力を強化する機運は弱い。人道支援の要請は恒常的に満たされず、2025年に必要な455億ドルのうち、提供されたのは17%未満にとどまる。一方、コンゴ民主共和国、マリ、その他の地域では平和活動が終了しつつあり、安全保障理事会は拒否権によって機能不全に陥っている。
国際救援委員会、ノルウェー難民評議会、セーブ・ザ・チルドレンなどの国際非政府組織(NGO)は、活動を縮小している。支援疲れとコンプライアンス費用に圧迫されているためだ。ファウンデーションズ・カウンシルは、資金不足を補うため助成を増やしている慈善団体が多いと明らかにした一方で、政治的攻撃やコンプライアンス上のリスクが高まったため、リスク回避の姿勢を強めた団体もある。理事会のなかには、政治的に敏感な予防活動や権利に基づく活動よりも、安全な事業を優先するところもある。
大きな理由の一つは、従来の援助の支柱となってきた国々の先行きが読みにくくなっていることだ。これにより、パートナーは長期計画を立てにくくなり、予算には競合する需要が押し寄せ、人道支援資金も不足しがちになっている。こうした動きにより、将来を見据えた投資の継続が難しくなり、隔たりが広がっているのは、早期警戒と迅速な対応の間だ。
私たちは極度に不安定な時代にいる。この不安定さが恒常的な無秩序へと固定化するかどうかは、実務者、援助提供者、識者がこの厳しい時代に合わせて平和構築を再構築できるかにかかっている。
最近の危機は、ハイチ、ミャンマー、スーダンのいずれであれ、その課題を示している。警告は事前に発せられていたが、緊急事態が深刻化するまで行動は遅れた。今日の不安定な環境では、構造的な弱点がいっそう顕著になっている。
最盛期を迎えた多面的な国連平和維持活動も、もはや過去のものだ。ミッションは小規模化し、臨時的なものとなり、資源不足に陥ることも多い。アフガニスタンと南スーダンでの失敗により、平和構築も勢いを失っている。
主権への配慮、市民社会の活動空間の縮小、援助の流れの減少により、野心的な国際介入は実現しにくくなっている。言葉遣いさえ変化し、「平和構築」は「安定化」や「レジリエンス」に置き換えられることが増えた。それでも、社会が暴力の連鎖から抜け出せるよう支援するという根本的な課題は変わらない。
分断されたシステムにおける再生戦略
この新たな無秩序への適応には、現実を見据える必要がある。米国のリーダーシップ、信頼できるOECD援助国、強力な国連ミッションを柱とした旧来のモデルが復活する可能性は低い。
少なくとも重なり合う5つの将来像がある。それは、分裂と漂流、現実的な地域主導、西側諸国の後退、中国の影響力拡大、そして競争的な多極型援助の動きだ。
この複雑で不確実な情勢を乗り切るには、機敏さと従来にない連携が求められる。今後に向けた教訓にはどのようなものがあるだろうか。
戦術的なリスクテイクを受け入れる:紛争予防と平和構築には実験が必要だ。国連機関、NGO、援助提供者は、「失敗してもよい」試験的事業、地域の調停プラットフォーム、デジタル監視システム、複合型の金融手段を支援すべきだ。失敗するものもあれば、規模を拡大できるものもある。過度な慎重さ自体が戦略上の誤りだ。
徹底した地域主導を進める:資源と意思決定を、正統性や機動力で優位に立つことの多い地域の担い手へ、大胆に移す必要がある。政府や慈善団体は、南側の研究ネットワーク、ディアスポラ主導の取り組み、地域のNGOを、北側の大きな間接費を伴わずに直接支援することで、このプロセスを加速できる。
反対勢力に正面から立ち向かう:援助に携わる人々は顧みられないだけでなく、しばしば標的にされている。権威主義体制は、NGOを外国の手先と決めつけて正統性を損なおうとする。退けば、相手を勢いづかせるだけだ。シンクタンクや財団は、より効果的な情報発信に投資し、偽情報を暴き、攻撃を受ける活動家の連帯ネットワークを構築すべきだ。
テクノロジーを活用する:デジタルツールは抑圧を定着させる一方で、予防や平和構築の取り組みを後押しすることもできる。AIプラットフォームは複合的なリスクをモデル化し、衛星は人権侵害をリアルタイムで記録し、安全なプラットフォームは分断された市民団体をつなぐことができる。慈善団体は、セーフガードの整備を推進しながら、こうしたツールに投資すべきだ。
平和と安全保障を公共財として捉え直す:気候変動、移住、デジタルガバナンスなどの地球規模の課題に取り組むうえで、予防が不可欠であると改めて位置づける必要がある。予防には相乗効果もある。紛争に配慮した気候資金は、排出量と脆弱性の双方を減らせる。デジタル・レジリエンスは民主主義を守り、安定の維持にもつながる。平和を喫緊の優先課題と結びつければ、新たな支持層を得られる。
激動の時代における、かすかな好機
世界の主要な権力の中心地は、今日の激動を大きく異なる形で受け止めている。ワシントンとブリュッセルでは警戒的な雰囲気が漂い、アジアではより戦略的に捉えられ、グローバルサウスの多くでは好機として見られている。
大小さまざまな国が立ち位置を変えるなか、グローバルサウスの多くの国々(BRICS諸国を含む)が援助と開発の再定義を目指している。その背後には、核保有国間の紛争激化、規制のないAI、気候ショックという存亡に関わるリスクが迫っている。
市民社会と慈善団体だけで冷戦後の秩序を再建することはできないが、適応することはできる。政府にはできないリスクを引き受け、政治が停滞する場で対話を招集し、未来を形作るテクノロジーや地域の担い手に投資できる。
市民社会の活動空間を守り、抑圧を暴き、平和と安全保障を慈善ではなくレジリエンスに不可欠なものとして位置づけることもできる。私たちは極度に不安定な時代にいる。この不安定さが恒常的な無秩序へと固定化するかどうかは、実務者、援助提供者、識者がこの厳しい時代に合わせて平和構築を再構築できるかにかかっている。
