シリア人会計士が難民危機について教えてくれること

Children fly their kites as they play inside a refugee camp for people displaced by fightings between the Syrian Democratic Forces and Islamic State militants in Ain Issa, Syria October 3, 2017. REUTERS/Erik De Castro - RC1C3D183EB0
Children fly their kites as they play inside a refugee camp for people displaced by fighting in SyriaImage: REUTERS/Erik De Castro
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2017年、地政学的な変化、人口構成の変化、そして事業環境の混乱によって、私たちは日々、新たな現実に直面しました。技術革新が新たな機会を生み、世界経済の活性化に寄与する一方で、渡航禁止措置、拡大するジェンダー格差、根深い所得格差など、後退を招く要因もありました。

世界経済フォーラム年次総会に出席するため、世界のリーダーたちがダボスに集う今、官民両部門が過去1年を振り返り、これから社会問題の解決に向けて協力することは、かつてないほど重要です。そこには、現代における最も深刻な人道的課題の一つ、世界的な難民危機も含まれます。

世界で6,500万人を超える人々に影響を及ぼす難民危機は、世界規模の解決策を必要とする問題であり続けています。およそ110人に1人が戦争や迫害から逃れています。一つの国や統治機関、多国籍組織だけで対処することはできません。

難民を一人ひとりの人間として捉える

多国籍企業が、社会的・政治的混乱によって故郷を追われた難民を受け入れ、統治機関と協力して、彼らが世界各地の職場に加われるよう支援するとしたらどうでしょうか。

最近、私の心を動かした例を一つ紹介します。シリア難民で会計士を職業としていたモハマド・バセル・アルヨウネスさんは、ベルリンまで2,300マイルの道のりを旅した後、ドイツの報道クルーに迎えられました。ドイツで始める新しい生活に何を望むかと尋ねられ、彼は「EYで働きたい」と答えました。うれしいことに、ドイツのEYの同僚がそのインタビューを見て、ソーシャルメディアを使ってバセルさんを見つけ、EYは彼を採用しました。

バセルさんは現在、EYのドイツ・ダイバーシティ・チャーター難民支援チームとともに働いています。同チームはドイツのCharta der Vielfalt(ダイバーシティ・チャーター)と連携し、企業、政府機関、社会団体を結び付けて行動を起こしました。協力して、世界各地から来た難民の就労を支援し、ドイツで新たな生活を築けるよう取り組んでいます。

EYのチームはまた、ドイツ企業50社と連携し、優れた取り組みを共有して難民向けインターンシップ・プログラムを改善し、他国にも拡大してきました。チャーターの一環として、欧州各地の多国籍企業がすでに実施している同様のプログラムを見つけ、協力する方法を探すよう促されました。統合に画一的な方法は通用しないと学ぶ一方、鍵は難民を一人ひとりの人間として捉えることだと分かりました。

私は、多国籍企業が政府との協力を続け、包摂的な統合の取り組みを広げるとともに、難民一人ひとりのニーズに応える個別の方法を見いだすことを期待しています。

Image: ロイター/ファブリツィオ・ベンシュ

恐怖や誤解を乗り越える

先行きが不透明で所得格差が拡大する状況では、自分たちと異なる人々がもたらす脅威への恐怖をあおるのは簡単です。この数年、そうしたことが招く結果を私たちは目の当たりにしてきました。しかし、難民は国を形づくる一員です。彼らは社会、政府、経済に大きく貢献してきましたし、今も貢献しています。

その好例が、移民であり、2度にわたって難民となったマデレーン・オルブライトです。彼女は実業家、活動家、慈善家として活躍し、米国初の女性国務長官となりました。

「難民危機によって表面化した分断は、世界的な不平等の問題を浮き彫りにしています……難民は私たちの国の暮らしに大きく貢献してきました。シリア難民は英語を学び、良い仕事に就き、家を買い、事業を始めています。つまり、彼らは私自身を含む過去の世代の難民がしてきたことをしているのです」とオルブライト氏は述べました。

マデレーン・オルブライト元米国務長官Image: ロイター/ジョシュア・ロバーツ

それでも、経済的制約、インフラの限界、労働コストを懸念する国々は、世界的な難民危機にしばしば抵抗を示します。

「人々には……難民を負担ではなく、実際に社会の力となる存在として見てほしいと思います。難民の多くは教育を受け、技能を持ち、起業家精神に富んでいます」とオルブライト氏は述べました。

オルブライト氏の指摘は的を射ています。米国の大企業のうち最大規模の企業の40%は、移民またはその子どもによって創業されました。カナダ、オーストラリア、ドイツでは、移民や難民は現地生まれの人々よりも起業に成功する割合が高くなっています。

この可能性を最大限に生かすには、多国籍企業、政府、NGOが難民に伴う経済的な利点を効果的に伝え、難民を労働市場により円滑に受け入れる方法を見つける必要があります。そうすれば、難民はすぐに意義ある経済的貢献を始められます。

危機に対処する創造的な方法

各国の法律や渡航禁止措置によって国境を越える移民の自由な移動に新たな制限が課されるなか、多国籍企業はテクノロジーを取り入れ、難民危機に対処する創造的な方法を見つけなければなりません。

ソーシャルメディアのおかげで、EYはバセルさんを見つけて採用できました。テクノロジーのもう一つの創造的な活用例として、EYのドイツ・ダイバーシティ・チャーター難民支援チームのメンバーが、難民採用における最大の課題の一つである言葉の壁を克服するため、語学学習アプリの資金を確保しました。

メッセージアプリを使えば、難民は携帯電話の通信網がなくても連絡を取り合えます。GPSによる位置情報の共有や、Crisis Info Hubのようなデータベースによって、難民が情報を得やすくなり、故郷を離れる際により安全に移動できるようになっています。

Coursera for Refugeesでは、難民を支援する非営利団体が資金援助を申請し、難民がオンライン講座を受講できるよう支援できます。これにより、急速に変化する世界で活躍し続けるために必要なスキルを身に付けられます。

多国籍企業は、ビッグデータ、人工知能、データの可視化などの新興技術を活用して、政府や難民がこの危機に対応できるよう支援するだけでなく、危機をより的確に予測し、備えられるようにするプログラムを開発すべきです。

政府やNGOと協力し、新興技術を活用して世界の社会に影響を及ぼす問題に対処することで、多国籍企業はより包摂的な未来の基盤づくりを支援できます。

混乱と不確実性が続けば、社会や世界経済に新たな課題が生じます。これは今後も続くでしょう。そして、所得格差という課題に正面から取り組まなければなりません。

包摂、尊重、寛容、そして違いを受け入れる姿勢という、多国籍組織の基盤となる価値観を先頭に立って実践するときにのみ、前進できます。難民を包摂することで生まれる経済的な可能性は、問題の一部ではなく、解決策の一部です。この点について、私は確信しています。

2018年1月23日から26日まで開催される世界経済フォーラム年次総会では、「分断された世界に共通の未来を築く」をテーマに、世界のリーダーたちが集います。

この記事に示された見解は著者個人のものであり、EYグローバル組織またはそのメンバーファームの見解を必ずしも反映するものではありません。

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