今年、南スーダンからイエメンまで、数多くの危機地域を訪れるなかで、情報共有が効果的な共同対応を形づくるうえで果たす重要な役割を、私は強く認識してきました。
共通の状況認識を築くために協力すれば、北バール・エル・ガザールから逃れる女性たちの保護上の優先課題や、イエメンの特定の県で子どもたちの栄養不良を引き起こす要因を把握できます。パートナー間のデータ共有は健全な人道支援エコシステムを促進します。それがなければ、調整も効果的な行動も不可能です。
しかし、危機的状況下でデータを収集、処理、分析、共有することは非常に困難です。そうした状況では、治安の不安定さ、予測不能性、遠隔地へのアクセス、脆弱な公共サービスに加え、多くの場合、通信環境の悪さや接続性の限界が見られます。また、人道支援システムは複雑で分権化されており、地域のNGOや市民社会団体から国連機関、政府、民間セクターのパートナーまで、何千もの援助団体が、地球上でも特に混乱の激しい状況下で人々を支援しようとしているため、取り組みはさらに難しくなっています。

被災者や人道支援パートナーによって、これまで以上に多くのデータが収集・共有されているのは確かです。しかし、このデータを信頼できる形で意思決定に役立てるには、仕事の進め方に重要な変更を加える必要があります。今こそ、こうした変更を受け入れるべき時です。人々は透明性を求めており、迅速に対応し説明責任を果たすリーダーシップを支える確かなデータが必要であることは、誰の目にも明らかです。
第一に、あらゆるデータが責任を持って取り扱われるよう徹底するとともに、援助の効率を高める共有データの価値について共通認識を築かなければなりません。組織内の個人間で場当たり的に行われているデータ共有を、危機の種類を問わずデータの共有方法と利用方法を定める組織間の合意に置き換える必要があります。また、単一の拠点を経由してデータを流すハブ・アンド・スポーク型から、信頼できる接続基盤を通じて、どこからでも誰にでもデータを共有できるネットワーク型へと、共有の方法を変える必要があります。人道支援コミュニティがデータ主導型へと移行するなかで、プライバシーを守り、とりわけ紛争地域で機微なデータを適切に扱うことは、極めて重要な課題です。
この方法を取れば、複数の情報源のデータを迅速に組み合わせた状況分析を作成できます。たとえば、世界食糧計画(WFP)の市場分析、ユニセフ(UNICEF)の子どもの栄養状態、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と国際移住機関(IOM)の難民の所在地や移民の移動状況、世界保健機関(WHO)のワクチン接種率、コールセンターや地域調査を通じて被災者から直接寄せられる意見などです。危機の全体像を描き、どこで介入すべきかを把握するため、場所と時期をそろえてこれらすべてのデータを集約しなければなりません。
第二に、支援を必要とする人々を助ける新たな事業モデルを生み出す必要があります。新たに任命された事務総長が、より機動的な国連の構築と官僚主義の簡素化を重視していることを歓迎します。人道支援コミュニティには、変革に向けたロードマップがあります。それは人道のためのアジェンダです。地域のシステムを強化し、各機関の任務や分野を越えて協力することなどを盛り込んだ5項目の計画です。この計画は、データと共同分析を行動の基盤とするよう求めるとともに、物資供給主導のアプローチから、最も脆弱な人々のリスクへの対処を動機とするアプローチへ移行するための出発点は、データと分析であるとしています。
最後に、データ活用のスキルと技術力を高めるため、民間セクターとの新たなパートナーシップを築く必要があります。テクノロジー業界や医療業界で見られる事業変革を推進するために、民間セクターのパートナーがデータをどのように活用しているのかを学びたいと考えています。こうした教訓を人道支援セクターに活かせれば、これまで以上に多くの人々の暮らしを改善し、命を救うことができるでしょう。これは地球規模の社会的インパクトです。3月には、国連人道問題調整事務所(OCHA)が、マウンテンビューにあるGoogleのキャンパスで、テクノロジーを活用して人道支援の対応の中心に人々を据える方法を探る会議を開催します。
今年、OCHAはオランダに人道データセンターを開設し、上記の課題に取り組みます。このセンターは、人道支援システムがデータを活用できるようになるために必要な変革を加速させ、最終的には、より効果的で効率的な活動につながると考えています。私たちのビジョンは、人道危機に関わるすべての人が、責任ある情報に基づく意思決定を行えるよう、必要なデータに、必要な時に、必要な方法でアクセスできる未来をつくることです。このビジョンの実現に向けて、ともに取り組みませんか?

