米国のイラン核合意離脱がもたらす戦略的余波

U.S. President Donald Trump arrives to announce his intention to withdraw from the JCPOA Iran nuclear agreement during a statement in the Diplomatic Room at the White House in Washington, U.S., May 8, 2018. REUTERS/Jonathan Ernst - HP1EE581FTBTT
US President Donald Trump prepares to announce his intention to withdraw from the Iran nuclear agreementImage: REUTERS/Jonathan Ernst
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先週、トランプ大統領は米国をイラン核合意から離脱させた。同合意の正式名称は「包括的共同行動計画(JCPOA)」である。

大統領は、イランが合意に違反している証拠がないにもかかわらず、これを実行した。それどころか、国際原子力機関はイランの合意順守を何度も確認している。

過去のイランの不正行為にどれほど真実があったにせよ――実際、そこには確かな真実がある――いま合意に違反しているのは、国際社会が機能していると考える合意を破った米国である。

実際には、大統領は、検証に必要な査察を伴ってイランの核開発計画を厳しく制限し続ける取引の一環であった、所定の制裁免除を継続しないと決めた。

米国抜きでもイランへの制約を確保しようと、政権と誠実に協力してきた欧州のパートナーにとって、さらに悪いことに、大統領は合意から「強硬な」離脱を選び、イランで事業を行う欧州企業への例外措置を認めなかった。

政権は欧州諸国に対し、エアバスのような企業のライセンス取り消しを含め、イランとのあらゆる経済活動を直ちに停止するよう求めている。(イランとのボーイング契約も打ち切るため、イランへの米国投資にわずかに開かれていた道も、いまや閉ざされた。)

大統領の立場が固まったいま、その余波が現政権の任期を超えて続く可能性の高いこの決断がもたらす戦略的帰結を先読みすべき時である。

北朝鮮への影響

まず、主要な焦点とすべきでない点から始めよう。北朝鮮との交渉への影響である。イラン核合意の崩壊が北朝鮮との交渉の進展に影響する理由については、合意の支持派、反対派の双方からさまざまな議論が出ている。

合意からの米国の離脱によって、米国の信頼性や国際的な約束を守る能力への疑念が生じれば、交渉が損なわれる可能性があると主張する人もいる。

一方で、大統領は予測不能で、気に入らない合意から離脱する意思があることを示したため、交渉上の立場が強まったと考える人もいる。しかし、政権がことさらに強調しようとしているように見える北朝鮮との関連づけは、論点をそらすものだ。

北朝鮮とその近隣諸国が交渉の席に着くのは、イラン合意とはほとんど、あるいはまったく関係のない独自の動機による可能性が高い。北朝鮮との交渉の成否が、イランの核開発計画の行方に左右されるとは考えにくい。

どのようなシナリオを想定しても、この決断が中東にもたらす影響は壊滅的なものになりかねない。

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確かに、イランの指導者、とりわけJCPOAをもともと嫌っていた強硬派は、核兵器保有国が国際舞台でより大きな影響力を持つように見えることに注目するかもしれない。しかしこれは、核兵器を保有する国がイスラエルだけである中東において、核兵器が依然として魅力的な抑止力と見なされているという、より一般的なジレンマである。

いずれにせよ、この決断が中東にもたらす影響は、どのようなシナリオを想定しても壊滅的なものになりかねない。

考えられる中で「最悪ではない」筋書きでは、欧州、中国、ロシアが――このような決断があって初めて形成されうる連携のもとで――イランを合意にとどまらせることに成功する。

そのためには、イランに対する欧州の経済的な誘因を維持する必要がある。つまり、石油部門を含め、イランに投資する欧州企業を保護し、イランの石油輸出が大幅に減少するのを防ぐことだ。

市場の不確実性を踏まえれば、中国が欧州投資の減少分の一部を確実に補うだろう。しかし、欧州が政治面、経済面で関与を続けなければ、イランが合意順守を続ける可能性は低い。

貿易戦争

このことは、トランプ政権が二次制裁を再発動する意向を撤回しない限り、欧州諸国は米国の制裁から欧州企業を守るブロッキング法を再び導入する必要があることを示唆している。実質的には、米国と欧州の間で貿易戦争が起きるリスクを意味する。

さらに、合意を離脱したことで、米国はイランが合意に違反していると判断した場合に、いわゆる「スナップバック制裁」を発動する影響力を失う。また、ロシア、中国、欧州がイランの順守状況を米国ほど厳格に解釈する可能性は低い。

さらに悪い結果は、米国が離脱した以上、イランが合意を順守する理由はないと考えることだろう。欧州に米国の二次制裁に対抗する意思や能力がない場合や、合意の価値を疑問視させるイラン国内の圧力が高まる場合に、そうなる可能性がある。

JCPOA合意によって、イランが核兵器へのプルトニウム経路を再開するのは難しくなるが、合意が崩壊すれば、イランは合意前の水準まで濃縮能力を速やかに回復できる。

その結果、イランは核物質を兵器化できる能力に危険なほど近づく。合意のもとでは少なくとも1年かかるところが、数カ月となる。

さらに、JCPOAの査察体制がなくなり、イランの民生用核開発計画に関する透明性はほとんど失われる。イランが核兵器不拡散条約から完全に脱退する可能性は低い。そうすればロシアや中国との危機を引き起こしかねないからだ。

しかし、JCPOA以前にあったイランの核拡散への懸念が再燃し、地域全体に懸念が広がるとともに、近隣諸国が独自の核開発計画を追求する動機も強まる可能性が高い。

通常戦力による地域の緊張激化も進む可能性が高く、米軍と数百万人の民間人が危険にさらされかねない。

どのようなシナリオでも、米国を信頼できるパートナーと見なさなくなる可能性のある欧州の同盟国との摩擦は強まり、イランは中国とロシアに接近するだろう。

新世代のイラン人の米国への反感も強まる可能性が高い。彼らは自分たちの暮らしを改善できなかった自国の指導者と米国の指導者の双方を、同時に憎むことができる。

確かに、中東の一部の国々はトランプ大統領の決断を歓迎したかもしれない。しかし、世界の大半は、戦略的観点から多くの人が不可解と受け止めたこの決断に、失望と非難を表明した。

米国には今後、良い選択肢が残されていない。この決断が米国の利益や地域の安定にどう資するのか、見通すのは難しい。

米国のイラン核合意離脱がもたらす戦略的余波、ダリア・ダッサ・ケイ

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