本記事は世界経済フォーラムの 地政学プラットフォーム
シリアは「紛争後国家」ではありません。そう呼ぶのは時期尚早です。シリア社会の再統合には1年以上、場合によっては10年以上かかる可能性があります。しかし、数年にわたる過酷な内戦を経たばかりの国を再建することは不可欠であり、このプロセスにおいては人道的な側面を最優先しなければなりません。
この国の再生を、政府の再編や西洋式の民主化の推進といった実現不可能な政治目標と結び付けることは、決してあってはなりません。たとえば2003年以降のイラクでは、そのような試みが行われました。まずは、一般市民の生活条件の改善を目指す、実行可能で的を絞った措置から始めるべきです。
シリア国民にとって、短期的にも長期的にも極めて重要となる分野に注力することが大切です。具体的には、インフラ、エネルギー、水、交通に加え、農業、教育、医療です。これらの分野への投資は、自宅にとどまった人々にとっても、国内の比較的安全な地域や国外への避難を余儀なくされた人々にとっても重要となるでしょう。
もちろん、これだけで、国内避難民や難民の帰還に伴う問題を速やかに解決できるわけではありません。彼らの数はシリアの人口のほぼ半分に上ります。とはいえ、すでに数十万人が帰還しており、近いうちに帰還を望んでいる人々も既にいます。彼らの帰還と社会への再統合は、一定の政治的選択を伴うものでもあります。通常の生活環境が整い、国際社会の支援が得られれば、この選択は、シリアのみならず地域全体における社会の安定と平和の確立に向けた、持続可能で長期的な貢献となり得ます。
すべての人にとっての配当とは?
シリアにおける人道危機と、その結果として生じた社会経済的なつながりの断絶は、インフラの破壊に劣らず深刻な打撃を国の経済に与えました。それによってシリア自体の発展だけでなく、隣国、特にレバノンやヨルダン、さらにはトルコの発展も逆行または大幅に減速し、これらの国々の状況を悪化させ、新たなリスクを生み出しました。
シリアの人道危機は地域横断的な広がりを持っていました。その影響は、地理的に遠く離れた国々、とりわけヨーロッパにまで及びました。
世界のメディアは、シリア危機が欧州大陸に及ぼした影響を間違いなく誇張していました。人口5億人を超えるEU加盟国が、シリア・アラブ共和国からの難民を合計で約100万人受け入れたにすぎません。これはレバノンが受け入れた数より少なく、レバノン自体の人口は400万人をわずかに上回る程度です。政治的には、欧州におけるこの問題は依然として非常に深刻であり、たとえばドイツでは一部の政治勢力が移民問題を巧みに利用し、有利な立場を獲得しています。
しかし、難難民の早期帰還は、受け入れ国内での過激化を防ぐための客観的な鍵です。言い換えれば、これは国家安全保障の問題です。したがって、この決定には現実的で、イデオロギーにとらわれないアプローチが求められます。
移民の負担を同時に取り除くことを課題とすべきでは決してありません。性急な決定は、事態を悪化させるだけです。しかし、シリアの再建はすべての欧州(およびそれ以外)の関係者の利益となります。関係するすべての当事者の間で対話の場を広げ、先を見据える必要があります。現在EU域内にいる人々の帰還について考えるだけでなく、将来における新たな「移民の衝撃」をどう防ぐかを考えるべきです。
言い換えれば、難民の帰還と生活基盤の再建に向けた環境整備は、人道面や経済面の成果にとどまらず、政治的・戦略的な成果ももたらし得るということです。その成果はシリアに、西アジア全域に、さらには国際社会全体に及ぶでしょう。ただし、これが実現するのは、計画と実施において体系的な誤算がない場合に限られます。
主なリスクとは何でしょうか?
リスクは数多く存在します。その中には、シリア政府自身の行動に起因するものもあります。2018年の第10号法を思い起こしてください。この法律は「再開発地区」を定めました。住民は立ち退きを命じられ、補償金は住宅の所有権を証明できた場合にのみ支払われました。この措置は世論から非常に否定的に受け止められました。海外から帰還を希望する人々も、国内避難民も、同様にこれを脅威と見なしています。その後、この法律は緩和されましたが、それによって人々が不動産やその他の財産の喪失から保障されているという確信が強まったわけではありません。
懸念の原因を取り除き、自宅に戻る人々のための保障制度を整えることは、シリア社会の再統合にとって極めて重要であり、シリア政府はこの方向で一連の措置を講じるべきです。立法上の取り組みだけでなく、実施されている政策について情報面での支援を行う措置も必要です。そうした措置により、政府の決定の本質をより深く理解してもらい、国内外における復興に対する否定的な受け止め方を最小限に抑えることができるでしょう。
シリアの再建。どこから始めるべきか? ウラジーミル・バルテネフ、モスクワ国立大学ロモノーソフ校世界政治学部安全保障・開発研究センター所長

