Q&A:イラン・米国危機を解説

The Nimitz-class aircraft carrier USS Abraham Lincoln (CVN 72) breaks away from the fast combat support ship USNS Arctic (T-AOE 8) after an underway replenishment-at-sea in the Mediterranean Sea in this April 29, 2019 photo supplied by the U.S. Navy. U.S. Navy/Mass Communication Specialist 3rd Class Garrett LaBarge/Handout via REUTERS ATTENTION EDITORS -THIS IMAGE WAS PROVIDED BY A THIRD PARTY - RC13F0257520
The deck of USS Abraham Lincoln, the aircraft carrier leading the US naval strike group in the GulfImage: USS Abraham Lincoln
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この記事は、世界経済フォーラムの地政学プラットフォーム

ペルシャ湾岸で米国とイランの緊張が高まっている。

イランのハッサン・ロウハニ大統領は、米国がさらに強化した国際制裁により、同国が「前例のない圧力」を受けていると述べた。

画期的な2015年の核合意(包括的共同行動計画、JCPOAとして知られる)は、イランと国連安全保障理事会の加盟国、およびドイツとの間で締結されたが、ほぼ崩壊状態にある。米国は昨年離脱し、イランは今や合意の条件を順守しないと表明している。制裁緩和に進展がなければ、同国はウラン濃縮計画を加速させるという。

米国のジョン・ボルトン国家安全保障担当補佐官は、米国またはその同盟国への攻撃には「容赦ない武力」で対抗すると警告し、強力な米空母打撃群と戦闘機が同地域に派遣された。

米国は、アラブ首長国連邦(UAE)の領海内にいたとみられる商用タンカーへの最近の攻撃4件について、イランまたはその代理勢力に責任があると表明した。

湾岸地域で紛争の脅威が高まるなか、世界経済フォーラムは、アトランティック・カウンシルの「イラン未来イニシアチブ」ディレクター兼非常勤シニアフェロー、バーバラ・スラヴィン氏に状況の評価を依頼した。

1)4年前、バラク・オバマ大統領は、イラン指導者が「拳を開く」なら手を差し伸べると申し出た。その働きかけは核合意につながった。今、米空母打撃群とB-52爆撃機がペルシャ湾へ向かっている。何がうまくいかなかったのか。

包括的共同行動計画(JCPOA)を損なった原因をドナルド・トランプ氏の当選に求めるのは簡単だ。実際、関係が急速に悪化した責任の大半はトランプ政権にある。

トランプ政権下の米国はイランに対して極めて敵対的な姿勢を示し、核合意から離脱し、イランが核関連の義務を順守していたにもかかわらず、ますます苛烈な制裁を科した。しかし、米国とイランの根底にある緊張はオバマ政権下でも続いており、すべての責任をトランプ氏に負わせるのは正確ではない。

JCPOAは米国とイランの間に一種の緊張緩和をもたらすはずだったが、両国の勢力はそれを許さなかった。イランでは、情報機関が2016年1月に他の拘束者を解放する一方で、米国人シアマク・ナマジ氏を人質として拘束し続け、その後、シアマク氏の80代の父親を含む、罪のない米国人をさらに逮捕した。イランは米国とイスラエルに対する強硬な言辞を続け、ハッサン・ロウハニ大統領は国連でオバマ大統領と会うことさえできなかった。

一方、米国では議会が拒否権を覆す多数で法案を可決し、以前はビザなしで米国に渡航できた欧州人などに対し、イランを訪問したことがあればビザ取得を義務付けた。これは貿易を制限し、文言そのものに違反したとまでは言えないにしても、イランの核計画を制限する見返りに世界市場へのアクセス改善を約束したJCPOAの精神に反していた。

とはいえ、機能していた合意を、代わりとなるものを何も用意せずに破棄するというトランプ氏の非合理な固執が、米イラン関係が歴史的な低水準にある主な理由だ。トランプ氏の行動は欧州の同盟国を遠ざけ、米国を孤立させたうえ、中東に対するより均衡の取れた政策を放棄させ、紛争解決を促す機会も損なった。

その結果、イエメンでは最も悲惨な形で紛争が続き、地域の指導者たちの最悪の傾向が助長され、イランは近隣諸国の問題に深く関与し続けている。

2)イランが米国との直接的な軍事衝突を求める可能性は低い。だが、両国の代理勢力間の衝突が増える可能性はどれほどあり、地域にとってどれほど危険なのか。

アラブ首長国連邦沖で石油タンカーが損傷したとの最近の報道からも分かるように、これは非常に危険な状況だ。

私は、1980年代にペルシャ湾で米軍とイラン軍が直接衝突したことを覚えている。その衝突は、米巡洋艦ヴィンセンスがイランの民間旅客機を撃墜し、搭乗していた290人全員が死亡するという悲劇につながった。

イランが支援する代理勢力が、米軍や地域の同盟国の部隊を攻撃する可能性もある。特に懸念されるのはイラクだ。そこに駐留する我々の5,000人の部隊は非常に無防備で、指揮統制がほとんど及ばない武装民兵が国内を動き回っている。イエメンのフーシ派が発射したロケット弾がサウジアラビア人や米国人に着弾し、報復と、制御が難しい緊張激化の連鎖を招く可能性もある。米イラン紛争を望む地域の勢力による偽旗作戦の可能性も軽視すべきではない。

こうした事態はまったく必要のないものであり、イランの石油輸出をすべて断ち切り、文字どおり政権を飢えさせて屈服させようとしたトランプ政権の決定から直接生じている。イランが何らかの形で反応すると予想せずにこれを実行したのは、外交上の失策と無謀さの極みだった。

3)イランは事実上、世界経済から締め出され、経済危機に陥っている。それでもイランは戦う用意があると宣言し、核兵器につながりかねない計画を進めている。イランの行動にはどのような理屈があるのか。また、イラン経済を締め付ける米国の戦術は成功するのか、それともイランの決意をかえって強めるだけなのか。

イランは並外れた忍耐を示してきた。米国が一方的にJCPOAを離脱してから1年以上が経つが、イランへの圧力はそれより前に始まっていた。イランへの投資を計画していた欧州企業は、トランプ氏の当選後まもなく撤退し、合意の下で約束されていた利益をイランから奪った。心理的な影響も深刻だ。一般のイラン国民がこれほど希望を失って見えたことはない。

米国の戦術はイラン経済と国民の士気を打ち砕くことには成功した。しかし、制裁と合わせて現実的な外交戦略をイランが見いだせないかぎり、イランが新たな「より良い」JCPOAに向けた交渉に同意するとは考えにくい。イラン当局者は、トランプ政権が他の敵対国との関係でいかに無力だったかを目の当たりにしており、イランがさらに譲歩する見返りとして米国が約束することを信頼する理由はない。

ロウハニ大統領のような現実主義者は信用を失い、ワシントンとの和解を一度も求めたことがなく、ロシアや中国により近い強硬派の当局者に取って代わられる可能性がある。テヘランにとっては、持ちこたえながら核問題と地域情勢の双方で交渉力を高め、2020年の米大統領選の結果を見守る方が理にかなっている。

4)双方を交渉の席に戻すには、何が必要だろうか。

率直に言って、トランプ氏が再選されないかぎり、現政権との交渉が実現するとは考えにくい。再選されれば、経済的圧力によってイランは接触を試みざるを得なくなるかもしれない。イラン側はおそらく、トランプ氏が内閣を改造し、ジョン・ボルトン氏、場合によってはマイク・ポンペオ氏も更迭することを望むだろう。

両氏はイランの政権転覆を求める主張と結び付けられており、ボルトン氏の場合は軍事行動による転覆を唱えている。トランプ氏は少なくとも、イランとの外交で成功した実績を持つライアン・クロッカー氏やジェームズ・ドビンズ氏のような特使を任命し、秘密裏の交渉を始める必要がある。両氏は9・11後、イランと協力してアフガニスタンに政府を樹立した。

トランプ氏は、写真撮影を目的とした首脳会談を目指すのをやめる必要がある。イランは北朝鮮ではなく、その指導者たちはリアリティー番組の小道具になることに関心がない。

米国はまた、交渉の前提条件とみられるポンペオ氏の「12項目の要求」を撤回し、より絞り込んだ懸念事項に焦点を当てる必要がある。オバマ政権が成功させた手法に倣うなら、より広範で確実な制裁緩和と引き換えに、JCPOAの核制限を延長し、場合によっては強化することを目指すだろう。

囚人交換を盛り込むこともできる。地域紛争やミサイルに関する協議には他の当事者も加え、核合意とは切り離す必要がある。ほかに必要となることについては、こちらのブログに書いた。

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