ロシアは新たな国際安全保障上の役割を確立したのか?

Turkish and Russian military vehicles return following a joint patrol in northeast Syria, as they are pictured near the Turkish border town of Kiziltepe in Mardin province, Turkey, November 1, 2019. REUTERS/Kemal Aslan - RC1815599D90
Russia's intervention in Syria is generally seen as a successImage: REUTERS/Kemal Aslan
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本記事は、世界経済フォーラムの地政戦略プラットフォームの一部です。

ロシアは、軍事、外交、経済のいずれであれ、モスクワが強みを最大限に生かせる条件が整った、慎重に選ばれた問題において、大きな影響力を行使できることを明確に示している。

シリアのバッシャール・アル=アサド政権をおおむね成功裏に防衛したこと、そしてトルコが両国の共有する国境のシリア側にいわゆる「安全地帯」を設置しようとする動きをめぐる最近の外交を受け、一部のロシアの外交政策アナリストや論評者は、国際問題における自国を「安全保障の提供者」、より限定的には「主権の提供者」と呼ぶようになった。

しかし、シリアで目立った活動を展開しているにもかかわらず、ロシアの国際安全保障上の役割は、この見方が示唆するより限定的なままかもしれない。

旧ソ連圏外で数十年ぶりとなるロシアの大規模な軍事介入として、モスクワによる4年間のシリア作戦が大きな注目を集めたのは当然だ。

ロシア軍は新たな能力を実証し、豊富な経験を積み、ジョージアとの戦争で露呈した欠点の一部を克服した。たとえば、航空戦力と地上戦力の連携が挙げられる。

国際問題の観点からより重要なのは、モスクワがシリアの崩壊を防ぎ、同盟者であるアサド大統領を権力の座にとどめたことだ。ロシアは、役割と作戦目標をかなり限定的に定義したまま、人的・金銭的に比較的低いコストでこれを成し遂げた。

このような成功が、ソ連の国際的地位と今日のロシアの地位との隔たりに長年不満を募らせてきた外交政策・国家安全保障エリートの誇りを刺激するのは理解できる。ロシアの観察者が米国の力は衰退していると見る時期には、そうした感情はとりわけ強まりやすい。

それでも、ロシアの専門家や指導者は、モスクワが何を成し遂げたのか、またシリア政策がこれまでおおむねなぜ、どのように機能してきたのかについて、冷静な視点を保つべきだ。

ロシアに有利な要素

これまでロシアに有利に働いてきたシリア紛争の主な要素をいくつか考えてみよう。第一に、シリアは旧ソ連圏外にあるものの、ロシアからそれほど遠くなく、地中海沿岸国であるため、ロシア軍にとって容易にアクセスできる。この二つの要素が組み合わさり、ロシアは、より大きな負担をロシアの能力に強いる空路ではなく、海路で迅速に部隊を展開し、補給することができた。

第二に、ロシアがシリアの反政府勢力やイスラム国(IS)の戦闘員と戦う際、相手は高度な装備を備えた近代的な軍隊ではなかった。そのため、たとえばロシア軍は地対空ミサイルによる過度の危険を負わずにヘリコプターを使用でき、ロシアの人員と装備に及ぶ危険も抑えられた。

第三に、モスクワには不可欠な同盟国イランがいた。イランは正規軍を派遣しただけでなく、数千人のレバノンのヒズボラ戦闘員の作戦を支援し、シリアの地上部隊に重要な支援を提供した。これによりロシアは地上部隊を追加投入せずに済み、死傷者を減らし、補給任務へのさらなる負担も避けられた。

第四に、ロシアは、主な競争相手である米国が自発的にシリアへの関与を制限する状況から恩恵を受けた。これは単に、バラク・オバマ前大統領とドナルド・トランプ現大統領がシリアでの大規模な米軍作戦を拒んだという意味ではない。それ以上のことを意味していた。

ロシアの指導者たちは、自国の国境から離れた別の場所で、モスクワがシリア作戦を再現できる可能性はどれほどあるのか、自問してもよいだろう。

ワシントンは長らくイスラム国への空爆を主導し、その結果、ロシアはシリアの反政府勢力への攻撃に集中できた。ワシントンはシリアの反政府勢力に先進兵器を供与せず、ISにも渡らないよう努めてきた。また、紛争を封じ込め、そうでなければロシアが戦っている勢力を支援しかねない地域の同盟国やパートナーを抑制しようとした。実際、イランを除けば、地域諸国のシリア内戦への関与は、ロシアが介入を開始する前にピークを迎えていた可能性が高い。

招請を受けて

最後に、ロシア当局者がよく指摘するように、シリア政府はロシアに支援を求め、ロシア軍を自国に招き入れた。それに加え、ロシアはすでにシリアに小規模な海軍施設を持っており、シリアの支援を得て、重要な空軍基地を迅速に設置できた。ほかに、ロシアが同じような歓迎を受けられる場所はあるだろうか。

こうした点を踏まえれば、ロシアの指導者たちは、自国の国境から離れた別の場所でモスクワがシリア作戦を再現できる可能性はどれほどあるのか、自問してもよいだろう。しかし、その必要はないかもしれない。ほかの場所で同じように有利な軍事条件を当てにできないことは、かなり明白だからだ。したがって、ロシアを世界規模の「安全保障の提供者」とみなす考えは成り立たない。

軍事的要因を別にしても、国際政治の状況がロシアの世界的な役割にどう影響するかについて懐疑的になるべき重要な理由がある。最大の論点は米国だ。米国はシリア紛争への実質的な関与をおおむね控えており、そのため、米国の国際関与が長期的に縮小すると予想する人もいる。それは誤りだろう。

イラクでの長期にわたる米軍戦闘作戦、そしてそれより程度は小さいもののアフガニスタンでの作戦は、トランプ大統領が「終わりのない戦争」と呼ぶものへの国民の不満を間違いなく高めた。こうした紛争を、1960年代から1970年代にかけての米国の苦いベトナム介入と比べる人さえいる。しかし、1975年4月のサイゴンからの米軍撤退後、米国の外交政策は比較的早く転換した。現在、一部の人々はこの出来事を、トランプ大統領がシリアの基地から米軍を撤退させる決定と結びつけている。

しかし1980年代初頭までに、ベトナム後の自信を失った米国に代わり、ロナルド・レーガン大統領の対ソ連強硬姿勢、さらには対決的なアプローチが台頭し、グレナダ侵攻など新たな軍事行動も行われた。

ゼロサムの対立

1983年、ソ連指導部はレーガンの新たに活発化した政策を強く警戒し、NATOの大規模軍事演習「エイブル・アーチャー」は、NATOによるソ連への大規模攻撃の準備を隠すための策略ではないかと懸念した。もちろん、レーガンの政策とそれを支える国内の支持は、一部には1979年のモスクワによるアフガニスタン侵攻への反応だった。その決定もまた、一部は米国が関与を縮小するというソ連の期待に影響されていた。

冷戦期のゼロサムの対立と今日の対立との違いは、米国側の持ち札がロシア側よりはるかに大きいことだ。劣勢をうまくやりくりすれば短期的な成功は得られるが、それは国際的な主導権を握るための持続可能な国家戦略ではない。

ロシアは、安全保障の提供者というより「主権の提供者」としての方が、より大きな可能性を持つだろう。これを、モスクワの大国としての地位、国連安全保障理事会での拒否権、そして米国に対抗する意思を実証してきたことにより、各国政府がロシアに頼ることでワシントンに逆らう余地を多少広げられる、という狭い意味に定義するならば、である。しかし結局のところ、米国の10分の1の規模の経済と、改善してはいるものの依然として比較的限られた軍事能力で、ロシアが何か国のパートナーを同時に米国から守れるのか、疑問は残る。また、ロシアの新たなパートナー候補のうち、実際に米国との決裂に賭けたい国がどれほどあるのか、それともクレムリンとの目立つ対話を利用してホワイトハウスからより良い条件を引き出したいだけなのかも、問うべきだ。

ロシアは、軍事、外交、経済のいずれであれ、モスクワが強みを最大限に生かせる条件が整った、慎重に選ばれた問題において、大きな影響力を行使できることを明確に示している。モスクワがより幅広い国際的役割を築けるかどうかは、さほど明らかではない。そのためには、米国が空けた場所を埋める以上のことが必要だ。それを長期にわたって続けるには、いずれ避けられない米国の再び活発化する局面に備える必要もある。

ロシアは新たな国際的役割を確立したのか?ポール・J・サンダース、ナショナル・インタレスト・センター米国外交政策担当シニアフェロー。ヴァルダイ・ディスカッション・クラブ掲載

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