災害は頻度、激しさ、被害額を増しており、その影響を最も大きく受けているのは世界の最貧国です。
しかし、レジリエンス、すなわち地域社会や経済が災害を予測し、耐え抜き、そこから回復する能力への資金は、依然として不足しています。
レジリエンスへの投資は不可欠です。災害を予測し、耐え抜き、回復するための資金を、5つの方法で拡充できます。
災害はもはやまれな出来事ではありません。頻度と激しさを増し、被害額も大きくなっており、その影響を最も大きく受けているのは最貧国です。
『防災に関する世界評価報告書(GAR)2025』 によると、災害による直接的な費用は年間約2,020億ドルに増加しており、連鎖的な影響や生態系への損失を考慮すると、実際の費用は2兆3,000億ドルを超える可能性があります。
さらに、過去20年間の直接損失の95%超は、地震、洪水、暴風雨、干ばつ、熱波という「5大災害」によるもので、その多くは予防可能です。
しかし、レジリエンス、すなわち人々や地域社会、経済が災害を予測し、耐え抜き、そこから回復する能力への資金は、依然として不足しています。国際援助プロジェクトのうち、防災を目的に掲げるものは2%未満で、政府が防災に充てる公的予算も1%未満であることが少なくありません。私たちは今も、被害を防ぐことより、損害の修復にはるかに多くの資金を費やしています。
災害による費用が増大する時代に、このモデルを続けることはできません。レジリエンスへの投資は、合理的であるだけでなく不可欠です。
災害を予測し、耐え抜き、そこから回復するためのレジリエンスの構築
レジリエンスを築く5つの方法を紹介します。
1. リスクを考慮した開発を行う
橋や学校、住宅を新たに建設するたびに、災害リスクに対処するか、無視するかの選択が伴います。リスクはあまりにも頻繁に見過ごされています。危険にさらされやすい地域では今も住宅やインフラが建設され、破壊と資源の浪費が繰り返されています。最初からリスクを避ければ、開発を守る方がはるかに安く、容易です。
チュニジアでは、気候・災害リスク分析が国家戦略と地域計画の双方に活用されています。自治体は現在、洪水や干ばつのリスクマップを土地利用の判断に役立てています。その結果、氾濫原での建設計画は承認されなくなり、新しい道路は地盤が不安定な場所を避けて建設されています。
開発にリスク対策を組み込めば、次の災害で進歩が無に帰す事態を防げます。
2. レジリエンスのための資金を確保する
回避できないリスクには、災害損失の全てを被るより、対処するための資金を確保する方がはるかに費用対効果に優れています。世界銀行の分析によると、インフラのレジリエンスを高めるコストはわずか3%増にとどまる一方、投資額1ドル当たり4ドルの便益が得られます。
チリでは、当局が定期的にインフラのレジリエンスを検証しています。対象は水、エネルギー、交通、保健、教育、通信の6分野です。その結果、地震の最中も病院が稼働し、洪水時も交通路が通行可能で、送電網が暴風雨に耐えられるようになっています。
3. あらゆる主体の投資を呼び込む
政府だけでレジリエンスを築くことはできません。世界の設備投資全体の約75%は民間部門によるものです。つまり、企業、金融機関、投資家が重要な役割を担います。
日々の事業判断に防災を組み込めば、従業員、顧客、サプライチェーンを混乱から守れます。金融機関にとっては、融資や投資の判断に気候変動や災害のリスクを織り込むことで、市場や経済の安定につながります。また投資家がリスクを考慮したポートフォリオを求めれば、より安全で持続可能な事業に資金が流れます。
ネプチューン・フラッド・インシュアランスは米国を拠点とする企業で、手頃な価格のテクノロジーを活用した洪水保険を提供し、急成長を遂げています。同社は米国内の1,000億ドル相当の住宅などのインフラに保険を提供しており、現在、株式市場での企業評価額27億6,000万ドルを目指しています。これは、投資家が防災を有望な投資先と捉え始めていることを示しています。
民間資本がレジリエンスと結び付けば、リスクの拡大よりも速く防護を強化できます。
4. 人々と経済に保険をかける
災害時に損なわれるのは建物だけではなく、人々の生計もです。農家や小売店主、インフォーマル部門で働く人々は、一夜にして全てを失うことも少なくありません。政府財政が復興に振り向けられることで、国全体が何年にもわたる進歩を失うこともあります。
保険は人々と経済の両方を守り、地域社会の迅速な回復を助け、経済全体に及ぶ混乱を防ぎます。
サモアでは、パラメトリック保険モデルが、異常気象による経済的影響から農家、漁業従事者、小規模企業を守っています。この制度では、早期警報の発動条件に基づき、保険金額の一部が災害発生の24~48時間前に支払われます。これにより、企業の経営を維持し、農家のより迅速な回復を助け、経済が債務に陥るのを防ぎます。
各国は、災害による打撃から予算を守る取り組みも始めています。カリブ海地域では、カリブ海災害リスク保険ファシリティ(CCRIF)が、あらかじめ定めた条件に基づいて迅速に保険金を支払うパラメトリック保険を提供しています。条件には風速や降雨量などがあります。このモデルにより、政府は14日以内に資金を利用でき、迅速な初動対応を支え、財政負担を軽減できます。
地域社会が速やかに立ち直り、各国が予算を損なわずに復興できれば、開発は持続可能になります。
5. 早期警報を拡充する
早期警報システムは命を救うだけでなく、経済的損失も軽減します。わずか24時間前の警報でも、被害を受ける可能性を30%減らせます。そのため、国連防災機関(UNDRR)と国連開発計画(UNDP)をはじめとする多くの国連機関が、2027年までに「すべての人に早期警報を」実現する取り組みを進めています。
気候変動の影響を最も受けやすい7カ国、アンティグア・バーブーダ、カンボジア、チャド、エクアドル、エチオピア、フィジー、ソマリアでは、複合災害に対応する早期警報システムが強化され、2,600万人を超える人々に恩恵をもたらしています。予測、リスク評価、住民に届く最終段階の警報によって、地域社会は早めに行動できます。
こうした取り組みを発展させ、成功事例を拡大しなければなりません。例えば、気候リスク・早期警報システム(CREWS)イニシアチブは、2015年以降、早期警報サービスを77カ国の約4億人に拡大してきました。その3分の1以上が紛争や脆弱性の影響を受けています。
早期警報の時間が1時間延びるごとに、命や生計、未来が守られます。
レジリエンス投資の拡大が不可欠な理由
早期警報からリスクを考慮した計画策定まで、災害を防ぐ解決策はすでに存在します。
私たちは共に活動する中で、そのことを実際に目の当たりにしてきました。例えば、2005年のカシミール地震の後、パキスタンは災害管理体制を大幅に強化しました。
世界経済フォーラムは、レジリエンスの高い社会に向けて貿易をどのように改善しているのでしょうか。
地域・貿易・地政学センターは、変化する貿易動向、地域情勢、地政学的分断について指導者が理解を深めるための、信頼できる場を提供しています。
分野や地域を越えた対話を促すことで、センターはパートナーが不確実性に対処し、共通課題に協力して取り組む方法を探る手助けをしています。
インドでも、私たちはそれぞれUNDPと政府の代表として協力し、国および地方の災害管理当局、早期警報の仕組み、レジリエンスを制度化する建築基準の整備を支援しました。これにより、何百万人もの命と重要インフラが守られています。
大きな進展がありましたが、課題はまだ多く残されています。世界の人道支援ニーズが資源を上回り続ける中、レジリエンス投資を拡大することが、人々の苦しみを減らし、苦労して築いた開発成果を守る唯一の道です。

