ジャワ島の北西海岸に位置するインドネシアの首都ジャカルタは、世界有数の大都市の一つだ。また、世界でも特に急速に姿を消しつつある都市の一つでもある。
ジャカルタが位置する土地は沼地だ。その主な理由は、13本の川が市内を流れていることにある。市は低く平坦な沖積平野にあり、平均標高は海抜わずか8メートルだ。洪水は常態化しており、ジャカルタは危機的な速さで沈下している。沈下が進んだため、市内を流れる川の多くは海にたどり着くまで上り坂を流れなければならず、海に着く前に水をあふれさせることもしばしばある。
約3,000万人が暮らすジャカルタ首都圏は、過去30年間で4メートル沈下した。状況が最も深刻なのは市内5行政区の一つである北ジャカルタで、過去10年間だけで2.5メートルも沈下した。これは沿岸部の大都市における世界平均の2倍に当たる。このペースが続けば、2050年までに北ジャカルタの95%が水没することになり、市の人口1,000万人のうち180万人が直接影響を受ける。
水はあたり一面にあるのに……
ジャカルタはジャワ海沿岸に位置しており、直面する問題の一つが海面上昇だ。NASAは1993年から衛星で海面を観測している。その間に約85ミリメートル上昇し、現在のペースでは年に3.2ミリメートル上昇していることが確認された。
ジャカルタから遠く離れた極地では、気候変動によって氷が恒久的に失われている。氷床が縮小するにつれ、氷河の融解水が海に流れ込んでいる。海水も温暖化している。温かい水は冷たい水より密度が低いため、海水は膨張し、海面が上昇する。東部熱帯太平洋のエルニーニョのような地域的な気候現象も、世界の一部でこうした影響を強めている。複雑な地球規模の海流も影響しており、グリーンランドの氷の融解が、メキシコ湾から大西洋を横断してブリテン諸島へ流れるメキシコ湾流を乱す可能性がある。
……でも、飲める水は一滴もない
水に囲まれて暮らしているにもかかわらず、ジャカルタの人々は、清潔な水道水を安定して利用できない。その代わりに、地下深くの帯水層から水をくみ上げているが、そこでは雨水による補給が十分ではない。
その結果、市の地下では地盤が圧縮され、崩落している。首都の一部では、防潮堤だけが街路や住宅を押し寄せる水から守っている。丘陵地の斜面全体がジャワ海にのみ込まれ、かつて海まで歩いて行かなければならなかった人々は、今では海のすぐそばで不安を抱えながら暮らしている。現在、市のほぼ半分は海抜を下回っている。
しかし、この持続不可能な状況を招いている根本的な悪化要因の一部は、解決策の一部にもなり得る。
水のくみ上げが問題となっているのは、安定した水供給がないためだが、個人や企業が自由に井戸を掘れるよう認める規制もそれを可能にしている。許可や規制のない地下水へのアクセスによって、水の需要は歯止めなく増加し、過剰消費や排水流出の問題への対処も進まない。これは市当局が向き合わなければならない課題の一つだ。
また、不動産需要に応えるため、開発業者が街路や地区を建設・再開発していることから、土地にも大きな圧力がかかっており、それが水の需要をさらに押し上げている。
海岸から約32キロ沖合で、洪水対策工事が始まっている。新たな防御施設は、川が流れ込む人工のラグーンを造るとともに、防潮堤としても機能する。これにより洪水の一部を軽減できる。しかし、ジャカルタの沈下問題を解決するには、すべての要因を考慮し、一貫性をもって対処する必要がある。防潮堤の建設で得られるのは、海抜を下回る地盤がさらに沈み続ける都市にとって、時間の猶予にすぎない。
ジャカルタはインフラを近代化するための投資を必要としている。とりわけ、住民に安定的で持続可能な水を供給すること、そして当局、企業、個人が協力して築く将来像が求められている。






