この女性は、自然界にも「パリの瞬間」をもたらそうと尽力している

Elizabeth Mrema, Executive Secretary, UN Convention on Biological Diversity
Global wildlife populations have plummeted by 69% on average since 1970.Image: REUTERS/Maja Smiejkowska
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  • 生物多様性条約事務局長のエリザベス・マレマ氏は、12月にモントリオールで開かれるCOP15生物多様性サミットで、自然を守る歴史的な合意の成立に向けた取り組みを主導する。

  • COP15で自然界にも「パリの瞬間」をもたらすだけの国際的な支持が得られることが期待されている。これは2015年のパリ気候協定を指す。

  • 自然関連財務情報開示タスクフォースの共同議長として、マレマ氏は企業や投資家が自然関連リスクを報告するための枠組みづくりにも取り組んでいる。

  • 12月の交渉で掲げられる目標のいくつかは、事業と直接関係している。例えばターゲット15では、大企業や金融機関に対し、2030年までに自然への影響と自然への依存度を評価し、開示するよう求める。

  • 自然だけでなく、世界に残る生物多様性の80%を守っている先住民の権利も保護されなければならないと、マレマ氏は述べる。

小柄なエリザベス・マルマ・マレマ氏の肩には、多くのものがかかっている。タンザニア出身の弁護士で、生物多様性条約事務局長を務める同氏は、12月にモントリオールで開かれるCOP15生物多様性サミットで、自然を守る歴史的な合意の成立に向けた取り組みを主導する。

それだけではない。自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の共同議長も務め、企業や投資家が自然関連リスクを報告するための枠組みづくりを目指している。リスクには、自然に及ぼす影響と、事業を営むうえで自然に依存している度合いの両方が含まれる。

2021年に任命されたばかりのマレマ氏と共同議長のデービッド・クレイグ氏(リフィニティブの元創業者)は、猛スピードで作業を進め、来年9月までに実用可能なTNFDの案をまとめようとしている。

日程は、COP15で自然界にも「パリの瞬間」が訪れることが期待される時期からわずか数カ月後となるよう設定された。これは2015年のパリ気候協定を指す。196カ国が生物多様性条約の「2020年以降の世界生物多様性枠組み(GBF)」を承認する見通しだ。

しかし、6月にナイロビで行われたCOP15前の交渉では、GBFの21の目標のうち原案のまま残ったのはわずか2つだった。NGOは、合意に至らなかった2009年の気候交渉のような「コペンハーゲンの瞬間」にもなりかねないと警告した。

自身の国連での重責を抱えるなか、TNFDの仕事を引き受けて「はい」と答えたことを後悔しているかと『Ethical Corporation』のインタビューで問われ、マレマ氏はこう語った。「後悔はしていません。仕事が多すぎるのは確かです。(生物多様性)条約に200%(の力)を注ぎ、タスクフォースにも200%を注いでいます。でも、ビジネス界の業務について理解が深まりました。……それは私にとってプラスでした」

自然を守らないことのリスクについて、企業の認識は高まっていると同氏は言う。世界経済の50%超は、自然がもたらす生態系に依存している。「(自然を守らなければ)影響を受けるのは企業自身です」

オランウータンにとって、森林伐採が最大の脅威となっている。Image: ロイター/ダレン・ホワイトサイド

失敗した場合の代償は、改めて次の報告書で示された。最新の「リビング・プラネット・レポート」WWFの報告によると、世界の野生生物の個体数は1970年以降、平均で69%減少した。

今週発表されたもう一つの報告書、「森林宣言評価」によると、森林減少と土地劣化を2030年までに食い止め、回復させることを目指した「グラスゴー首脳宣言」から1年が経過したが、軌道に乗っている世界的な指標は一つもない。目標達成には、森林の保護と回復に向けた資金を200倍に増やす必要がある。

一方、企業が自然に積極的に関われば、生物多様性の損失と気候変動の両方への対策に役立つ可能性があると同氏は主張する。2030年までに、自然を活用した解決策によって、費用対効果の高い温室効果ガス排出削減の3分の1超を実現できる可能性がある。

これが、海運の脱炭素化が気候変動対策の鍵となる理由です。
これが、海運の脱炭素化が気候変動対策の鍵となる理由です。
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12月の政治交渉は難航が予想されるが、マレマ氏はTNFDの取り組みが成果を上げると期待している。事業に直接関係する目標がいくつかあり、特にターゲット15は、大企業や金融機関に対し、2030年までに自然への影響と自然への依存度を評価し、開示するよう求める。

昨年、任意開示プラットフォームCDPを通じて気候変動の影響に関するデータを開示した企業は1万8,600社を超え、42%増加した。一方、自然への影響に関する報告の遅れは広がっており、森林データを報告した企業は1,000社強(20.5%増)、水の安全保障リスクを開示した企業は4,000社(16%増)にとどまる。

330社を超える企業がすでに声明に署名している。ビジネス・フォー・ネイチャー連合がまとめたこの声明は、企業による自然への影響の報告を義務化することで、ターゲット15の原案を強化するよう各国政府に求めている。

ビジネス・フォー・ネイチャーの声明には、こう記されている。「現状では、企業や金融機関はビジネスモデルを変えるために必要な政治的確実性を得られていません。また政府も、こうした変化を実施させ、進捗を追跡するために必要な情報を持っていません。評価と開示は行動を促すための不可欠な第一歩ですが、義務化されなければ効果はありません」

TNFDはガイドラインの採用義務化を求めてはいないが、「企業がこの議題を自ら担っていることの表れです」とマレマ氏は言う。「私には、企業が取り組みに加わってきたように見えます」

12月、マレマ氏には得られる限りの支援が必要となる。国連の気候交渉と同様、21の目標について196の署名国すべての合意が必要だ。ターゲット15は、義務化の有無を問わず採択される可能性がそれなりにある一方、他の事業関連目標はモントリオールでさらに厳しい交渉を迫られる。ターゲット19は世界の北から南への資金の流れを増やすことを目指す。ターゲット18は、「生物多様性に有害なインセンティブを、公正かつ公平な方法で方向転換、転用、改革または撤廃し、最も有害な補助金をすべて含めて年間少なくとも5,000億米ドル削減するとともに、公的・民間の経済的および規制上のインセンティブを含むあらゆるインセンティブが、生物多様性にとってプラスまたは中立となるようにする」ことを目指す。

マレマ氏はこう語る。「化石燃料や食料システムに有害な補助金として、毎年4兆~6兆ドルが支出されていることは分かっています。これを生物多様性にプラスとなる活動に振り向けたら、枠組みの実施にどれほどの資源が生まれるか、想像できますか」

コンゴ民主共和国の銅・コバルト鉱山で働く小規模鉱山労働者。Image: ロイター/ケニー・カトンベ

それでもターゲット18は、最も議論の多い目標の一つだ。ナイロビでの協議後、WWFのマルコ・ランベルティーニ事務局長は、特にブラジルが「一貫して進展を妨げている」と非難した。また、対立する文案をモントリオールで合意にまとめるには、「政治的意思、注目度、意欲を大きく変える必要がある」と交渉担当者に求めた。

インタビューでマレマ氏は、より慎重な見方を示し、ブラジルとアルゼンチンはいずれも技術交渉に建設的に参加していたと述べた。「しかし、最後に政治判断を下す段階で何が起きるかは、誰にも分かりません……。交渉担当者には、12月に解決すべき課題がまだ山積しています」。原案に残る1,800カ所の角括弧付き文言を整理する必要がある。

「多くの人が、モントリオールで生物多様性にも『パリの瞬間』が訪れることを望んでいます。しかし、それが実現するのは、現在交渉中の枠組みを各国政府が、実効性があり、実施可能で、簡潔かつ柔軟なものとして採択できた場合に限られます」と同氏は語った。「3年後になって、『交渉担当者はここで何を実現しようとしていたのか』と問い続けるような枠組みにはしたくありません。それでは行動が遅れるだけです」

マレマ氏とデービッド・クレイグ氏は、TNFDの策定でも遅れを避けようとしている。TNFDタスクフォースの34人のメンバーに政府代表はおらず、金融機関と企業のみで構成されている。リスク評価の枠組みは段階的に策定されており、最初の案は3月に公表された。「これはビジネス界が、ビジネス界のためにまとめる合意です」と同氏は言う。

TNFDフォーラムに参加する650社の企業・金融機関は、各段階の案を実地に試し、次の案に改善を反映できるよう結果を報告するよう招かれている。第3版は11月、第4版は2月に公表され、最終的な枠組みは9月に発表される予定だ。

「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言を研究し、TNFDの枠組みに十分反映しました。すでに気候への影響を報告するのに苦労している企業からすぐに反発を受けることになるので、過剰な報告負担を課さないことを目指しました」とマレマ氏は言う。

それでも、自然に関する報告は複雑だ。CO2換算や地球温暖化を1.5℃以内に抑えることのような、共通の指標や目標が一つに定まっていないためだ。また、CO2排出は発生場所を問わず地球の大気に影響するが、生物多様性への影響では場所が重要となる。

どれほど難しい作業になろうとも、企業が気候と自然の両方に関するリスクの全体像を把握することは極めて重要だ。そうすることで、必要となるトレードオフを最小限に抑えられる。一部の経済活動が自然生態系やそこに暮らす地域社会に大きな負担を与えるという厳しい現実がある。風力発電所や鉱業など、エネルギー転換に欠かせない活動もその例だ。

特に、世界に残る生物多様性の80%を守っている先住民の権利は保護されなければならないと同氏は述べる。また、COP15のプロセスでは、先住民、女性、若者が交渉に実質的な貢献をできるよう、参加費用を負担することも含め、さまざまな措置が講じられてきたと付け加えた。

今月、200を超える団体が公開書簡に署名し、COP27事務局に対し、人権、特に先住民の権利を気候変動対策の中心に据えるよう求めた。エネルギー転換は「迅速さだけに焦点を当て、公正さも重視しなければ、失敗するように仕組まれてしまう」と主張している。再生可能エネルギー事業に関連する土地権をめぐる紛争により、2015年以降、先住民コミュニティへの攻撃はすでに369件発生した。新たな報告書を発表したのは、ビジネス&人権リソースセンター。

マレマ氏はこう語る。「開発を止めることはできません。鉱山が必要です。鉱物資源が必要です。(しかし)企業は、被害をどのように軽減しているかを示す必要があります。被害を100%軽減できないとしても、地域社会にどのような利益をもたらしているかを示さなければなりません」

また、自然を企業のCO2排出量を相殺する「万能薬」として扱わないことも意味すると同氏は言う。「真に世界規模のエネルギー転換が必要です」

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