人為的な気候変動の影響を打ち消すことを目的とする新興技術、ジオエンジニアリングには、地球温暖化をめぐる政治的分極化を和らげる可能性もあると、 新たな研究が示している。
2月9日に学術誌 『Annals of the American Academy of Political and Social Science』に掲載されたこの研究によると、米国とイングランドの双方で大規模な全国代表サンプルから選ばれた参加者は、ジオエンジニアリングについて知った後、気候変動を示す証拠に対してより開かれた姿勢を示し、そうした証拠の重要性についても、より意見が一致した。
「この結果は、ジオエンジニアリングの登場によって人々が安心し、無関心になるという主張に疑問を投げかけるものです」と、 イェール大学ロースクール の法学・心理学教授で、研究を実施したチームの一員でもあるダン・カハン氏は述べた。
「まったく逆の結果が得られました。温室効果ガス排出の削減を気候変動対策として必要だと伝えられた人々と比べ、ジオエンジニアリングについて知った人々は、地球温暖化への懸念が強く、意見の分極化も小さかったのです」と同氏は語った。
米国科学アカデミー(NAS)の定義によれば、「ジオエンジニアリング」とは、人為的な気候変動がもたらす有害な影響の一部を相殺するため、地球環境に意図的かつ大規模な操作を加えることを指す。想定される例には、太陽光をより多く地球から反射させて地球の気温を下げる太陽光反射装置や、大気中からCO2を除去する、いわゆる「炭素スクラバー」がある。
NASと、英国を代表する専門科学者の協会である王立協会は、いずれもジオエンジニアリング研究の強化を求める報告書を発表している。また、国連の気候変動に関する政府間パネルによる最新の評価報告書でも、地球温暖化の影響に対抗するために必要な対策として位置づけられた。
研究では、研究者らは3,000人の参加者をグループに分け、一部にはジオエンジニアリングに関する情報を、ほかの参加者には温室効果ガス排出を制限する提案に関する情報を提示した。参加者には、化石燃料の燃焼などの人間活動が地球の気温を上昇させ、沿岸部の洪水や干ばつを含む深刻な環境リスクを生み出していることを示す、実際の研究結果を読み、評価するよう指示した。
「ジオエンジニアリングについて知った参加者は、炭素排出制限に関する情報を得た参加者よりも、証拠の妥当性をめぐる意見の分極化が小さかったのです」とカハン氏は述べた。
「実際、炭素排出制限について読んだ参加者は、政策対応の可能性について事前に知らされず、地球温暖化の証拠に関する情報だけを読んだ対照群の被験者よりも、意見の分極化が大きくなりました」と同氏は語った。
この結果は、「文化的認知」と呼ばれる力学に関する先行研究とも一致していた。この概念は、環境リスクの証拠が自分の価値観や集団のアイデンティティを脅かすとき、人々がその証拠を退ける傾向を表す。
カハン氏は、「ジオエンジニアリングに関する情報は、技術を支持する見方を持つ参加者に対し、地球温暖化の証拠を認めても、必ずしも『自由市場の終わり』や『資本主義の死』を意味するわけではないと示すことで、偏りを和らげました。こうした表現は、気候変動政策を支持する一部の人々が強調しています」と述べた。
カハン氏はさらに、この研究の意義は、ジオエンジニアリングの登場が気候科学への市民参加を抑えるのか、促すのかという問題にとどまらないと付け加えた。
「重要なのは、人々が科学に関する情報を、その内容だけでなく、文化的な意味や重要性に基づいて評価することです」とカハン氏は説明した。「この研究は、科学コミュニケーションを担う人々がメッセージを届けたいのであれば、『内容』と『意味』の両方の経路で、人々を引きつけるシグナルを発信する必要があるという結論を裏付けています。」
本記事は、 Yale Newsとの協力により掲載しています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。
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著者:デブラ・クロスナーはYale Newsに寄稿している。
画像:ペリト・モレノ氷河の側面の一つから氷の破片が剥がれ落ちる。ロイター/アンドレス・フォルサ

