20年前、環境政策の立案は、しばしば逸話的な証拠や「専門家」の意見に頼っていました。災害が政策課題を左右することも多く、DDT汚染の問題を描いた『沈黙の春』からエクソン・バルディーズ号の原油流出事故に至るまで、危機や長く放置された問題をきっかけに、20世紀の環境保護は次々と起こる緊急事態への対応に追われました。しかし、そこから生まれた法律や政策は、必ずしも熟慮した分析や科学・データへの体系的な配慮に基づいていたわけではありません。持続可能性に向けた真の前進には、感情的な反応を引き起こす場当たり的な対応以上のものが必要でした。
時がたつにつれて、こうして生まれた環境政策にはばらつきがあり、十分に正当化できない高い費用を伴うことも多いと、ますます明らかになりました。
しかし1990年代には、新世代の環境リーダーが台頭し始めました。彼らは1960年代、70年代の危機に駆り立てられた活動に深く関わっていたのではなく、より確かな分析基盤に基づいて、より良い環境成果を実現することを目指していました。こうした持続可能性の革新者の何人かは、フォーラム創設者兼会長クラウス・シュワブの「明日のグローバル・リーダー」構想の一環として開催された1999年の世界経済フォーラム年次総会で、環境タスクフォースに集いました(この構想は現在のヤング・グローバル・リーダーズ・フォーラムの前身です)。
このタスクフォースは、ダボスに集う大統領、首相、企業リーダーに地球の持続可能性へ一層の注意を向けてもらう具体策を議論し、環境パフォーマンスの評価表が世界の関心を高める助けになると結論づけました。また、環境に関する意思決定をよりデータ主導かつ実証的にする機会もあると認識しました。それによって、判断をより熟慮された持続性のあるものにできるのです。
フォーラムの競争力ランキングが市場における持続的な経済成長を支える政策基盤を明らかにするのに役立ったのと同様に、環境タスクフォースは、各国の環境面での進展をさまざまな側面から浮き彫りにする同様のベンチマーク・ツールが、新たに高まる持続可能性の必要性への関心を促すと考えました。さらに、先進国や遅れている国、優れた取り組みを明らかにすることで、地球全体の環境成果の向上を促す機会があると見ていました。
世界経済フォーラムやその他のグローバル・パートナーから知的・財政的支援を受け、環境パフォーマンス指数(EPI)が誕生しました。この20年間で、EPIは持続可能性を分析する主要な枠組みとして発展してきました。それは「分断された世界における共通の未来」を築くうえで重要な要素です。情報化時代がもたらしたデータサイエンスの機会を基盤に、世界の政策立案はより厳密な分析に基づく方向へと移行してきました。
2018年版EPIは、環境衛生と生態系の健全性を扱う10のカテゴリーにわたる24のパフォーマンス指標を用いて、180か国を順位付けしています。これらの指標は、各国が既定の環境政策目標をどの程度達成しているかを、国単位で測る尺度となります。EPIは、多様な政策課題における優れた取り組みを知る手掛かりとなる評価表を提供し、持続可能性の先進国を目指す国々に指針を示します。
データ主導の政策立案が20年にわたり進展したことで、世界の政策課題は、科学的分析と堅牢な指標をより重視する方向へと移りました。この流れは2015年、周到に構成された17の持続可能な開発目標の採択に結実し、これらは169の定量的なターゲットによって支えられています。2015年のパリ気候協定も、世界の政策における変革を象徴しています。同協定は、温室効果ガス排出の抑制に向けた「自国が決定する貢献」を各国に表明するよう求め、進捗報告を義務づけ、参加国に進捗への責任を負わせました。EPIはこうした環境目標の設定方式を先駆けて導入し、環境政策をより良い方向へ変えました。
今年のダボス年次総会では、2018年版EPIが、より良い成果を継続的にもたらす手段として、データ主導の環境政策立案の機運をさらに高めます。EPIは20年間にわたり、世界の環境パフォーマンスにおける重要な傾向を明らかにし、飲料水や衛生に関わる健康状態、海洋生態系の保護など、一部の課題では世界全体でおおむね改善が進んだことを示してきました。
一方、重大な課題が残る分野もあります。多くの漁業資源は悪化が続いており、エルサルバドル、パプアニューギニア、ポルトガルでは特に深刻な問題があります。インド、中国、パキスタンをはじめ、急速に工業化が進む国々では、今なお多くの人々が大気質の悪化に苦しんでいます。一部の課題では、少数の国が重大な問題への対処を怠っています。例えばインドネシア、マレーシア、カンボジアでは、過去5年間に森林伐採が大幅に進みました。一方、世界全体では森林保護の傾向はおおむね改善しています。
2018年版EPIの結果は、持続可能な開発を成功させるには、インフラに投資するための経済的繁栄と、工業化や都市化に伴って生じる汚染の脅威を慎重に管理することの両方が必要だと示しています。主な上位国は欧州と北米に集中していますが、ニュージーランド、イスラエル、日本、オーストラリア、台湾も含まれます。これらの国・地域は、持続可能性の両側面である環境衛生と生態系の健全性の双方で良好な結果を収め、EPIで高い評価を得ています。総じて高得点の国々は、公衆衛生の保護、天然資源の保全、経済活動と温室効果ガス排出の切り離しに、長年にわたり取り組んでいます。
世界は、データ主導の環境政策立案における新時代に入りました。政府は、汚染抑制や天然資源管理に関するさまざまな課題への対応実績を、定量指標に照らして説明するよう、ますます求められています。よりデータ主導で実証的な環境保護のアプローチは、問題の発見、傾向の追跡、政策の成功と失敗の明示、優れた取り組みの特定、環境保護への投資効果の最大化を容易にすることが期待されます。データが進歩し、情報化時代の統計ツールが環境分野にさらに浸透するにつれて、政府、企業、学術界による環境関連の意思決定が一段と厳密になる可能性は大きいと見られます。






