細粒の浚渫土砂は海洋に投棄されることが多く、扱いが非常に難しい。しかし再利用すれば、複数の環境課題が重なる状況の解決に役立てることができる。
グアヤス・デルタに新たに築かれたマングローブの島は、浚渫土砂を再利用して造られ、生息地の再生を目的に地域コミュニティと共同設計された。
生息地の再生を拡大するには、政策改革、適切な資金調達、建設会社・科学者・地域コミュニティ・規制当局の連携を可能にする環境が必要だ。
細粒の浚渫土砂は、海洋に投棄されることが多く、港湾や航路の浚渫で生じる不要な副産物と見なされがちだ。しかし、気候変動と生物多様性の損失が深刻化するなか、拡大可能な自然を活用した解決策が急務となっている。
そのような解決策の一つであるAquaForestは、浚渫土砂を循環型に再利用することで、生態系の再生と気候レジリエンスに向けた新たな道が開けることを示している。
複数の課題が重なる状況
海洋土木建設会社である当社Jan De Nulは、エクアドルのグアヤキル港に通じる航路の維持管理について25年間のコンセッションを保有している。そのため、堆積した土砂を取り除くために航路を定期的に浚渫し、安全で航行可能な水路を確保する責任を負っている。
浚渫土砂は扱いが非常に難しい。粒子が細かく、不安定で、汚染されている可能性もあるため、処分には物流面・環境面の課題が伴う。従来、こうした土砂は海洋に投棄されるか、封じ込め施設に保管され、生態的にも経済的にもほとんど価値を生み出さなかった。
グアヤキルでは、航路を繰り返し浚渫する必要があることから、重要な問いが浮かび上がった。こうした土砂を再利用して海岸を安定させ、劣化した生態系を再生できないだろうか。海岸侵食、生息地の喪失、土砂処分という課題が重なっており、そのすべてに対処する解決策が必要だった。
さらに、Jan De Nulは事業を通じて地域コミュニティと協力している。その多くは、漁業やカニの採取、高潮からの防護をマングローブ生態系に依存している。こうしたコミュニティとの関わりは、プロジェクトの礎となった。彼らの知見やニーズ、知識が私たちのアプローチを形づくり、AquaForestの共同創出を後押しした。

新たな島の生態系を築く
私たちが提案したのは、グアヤス・デルタにある既存の砂州――締め固まった砂とシルトからなる潮間帯――をかさ上げし、AquaForestと名付けた新たな島の生態系へと変えることだった。
エクアドル西部に位置するグアヤス・デルタは、国内でも生態学的に重要な河口域の一つであり、広大なマングローブ林と豊かな生物多様性を擁している。
自然界で最も効果的な海岸安定化機能を持つものの一つであるマングローブ林に着想を得て、AquaForestを生きた適応型の構造物として設計した。
コンクリート護岸や突堤など、従来の固定式の安定化構造物とは異なり、マングローブは侵食の抑制、生物多様性の保全、水質の改善、炭素隔離、気候変動の緩和など、重要な機能を果たすほか、社会経済面でも大きな便益をもたらす。
実現可能性を確認するため、1年間にわたる現地調査を実施した。調査には以下が含まれる。
成長条件を特定するため、マングローブ生育地を訪問する。
自然を活用した侵食防止策を試験する。
連携大学と協力し、浚渫土砂におけるマングローブの育苗を検証する。
これらの調査は、マングローブが再利用した土砂で順調に生育できることと、島の設計が流体力に耐えられることを確認するうえで不可欠だった。また、波、流れ、土砂、構造物の相互作用を再現する流体力学モデルを用いて設計の水理的安定性を検証し、関係当局に提示した。
このデータをもとに、地域の関係者と共同で、マングローブの生育に最適な条件を組み込んだ、環境工学的な手法によるマングローブ島の設計を策定した。具体的には、波や流れから島を守ること、適切な種類の土砂を使うこと、島の排水条件を整えること、地域に合わせた植林計画を策定することが含まれる。
多層的なインパクト
AquaForestプロジェクトは、具体的な成果に重点を置いている。
環境面:新たなマングローブ島の創出は、侵食の抑制、生物多様性の向上、炭素隔離に貢献する。
規制面:本プロジェクトは環境許可を取得し、実現可能性評価にも合格した。これにより、将来の自然を活用したインフラ整備の先例となった。
科学面:環境工学的に整備された環境におけるマングローブの成長に関する新たなデータを生み出し、今後の再生事業に役立てている。
社会面:エコツーリズム、持続可能な漁業、地域主導の保全活動に新たな機会を生み出した。
地域コミュニティと関係者の参画
地域の関係者は、あらゆる段階で不可欠な存在だった。まずコミュニティを把握し、ニーズを理解するために率直な対話を始めた。主な取り組みは以下のとおり。
コミュニティ連携担当者を任命する。
情報委員会を設置する。
当局に透明性のある報告を行う。
長期的なモニタリングに向け、大学や地域の関係者と連携する。
啓発ワークショップを通じて、マングローブ再生について地域コミュニティの理解を深めた。また、技能向上のためのセッションにより、収入源の多様化を後押しした。これには、長期的な管理体制を確保するためのエコツーリズム、持続可能な養殖、ガバナンスに関する研修が含まれた。
コンソーシアム、コミュニティ代表者、関係者が署名した正式な誓約書によって責任の共有が確立され、リビングラボから成熟した生態系への円滑な移行が確実になる。
生息地再生の拡大
各国政府や機関が気候変動対策に沿ったインフラを重視するにつれて、AquaForestのような自然を活用した解決策への需要は拡大すると見込まれる。しかし、その規模を拡大するには技術的な成功だけでは不十分だ。次の取り組みが求められる。
革新的な再生アプローチを可能にする政策改革。
次のような金融メカニズム:ブルーボンド、生物多様性クレジット、インセンティブを重視した生態系サービスへの支払い制度。
建設会社、科学者、地域コミュニティ、規制当局の分野横断的な連携。
この転換が起きなければ、生態系への脅威を再生型の解決策へと変える重要な機会を逃しかねない。
AquaForestは、適切なパートナーシップとビジョンがあれば、浚渫廃棄物でさえ、生物多様性、レジリエンス、地域コミュニティのエンパワーメントの基盤になり得ることを示している。




