パキスタンの氷河融解、「生と死のはざま」で暮らす村人たち

A shopkeeper tries to save belongings as residents use a bridge covered with floodwater after heavy rain in Nowshera District on the outskirts of Peshawar, Pakistan April 4, 2016. REUTERS/Fayaz Aziz TPX IMAGES OF THE DAY
Pakistan is home to more than 7,200 glaciers - more than any other non-polar country.Image: REUTERS/Fayaz Aziz
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7月、パキスタン北部ギルギット・バルティスタン州で氷河湖が決壊した際、シェル・バズは、家族の家が水に押し流されるのをなすすべもなく見ていた。

ヒンドゥークシュ山脈の雪を頂く峰々の麓、イシュコマン渓谷に位置するバドスワット村の住民たちは、住宅や道路、橋だけでなく、作物や森林まで奪った鉄砲水の猛威にさらされた。

「命が助かったことを神に感謝します。しかし、氷河湖が決壊したとき、洪水ですべてを失いました」と、4人の子どもを持つ30歳の父親、バズは語った。

バドスワット村の近くには複数の氷河があるが、住民によると、記憶にある限り氷河湖の決壊は今回が初めてだった。当局は、村人を間に合うように避難させたため、死者は出なかったと述べた。

バズは、この出来事で取り残されたように感じたと語った。

「山々と泥水に囲まれ、生と死のはざまで暮らしているようです」と、彼はトムソン・ロイター財団に語った。

Image: REUTERS/Wolfgang Rattay

氷河の現状

パキスタンには、極地以外のどの国よりも多くの氷河があり、パキスタン気象局(PMD)によると、カラコルム山脈、ヒマラヤ山脈、ヒンドゥークシュ山脈に7,200を超える氷河が存在する。

氷河は、同国の水源を支えるインダス川水系に水を供給している。しかし、過去50年間に集められたデータから、気温上昇により約120の氷河を除くほぼすべてに融解の兆候が見られることが分かったと、気象当局者は述べた。

氷河が後退すると、氷のダムや岩石、土砂の堆積物にせき止められた湖が残る。こうしたダムはもともと不安定で、しばしば決壊し、膨大な量の水が下流の村々へ流れ込む。

「氷河の融解が以前より速まるなか、私たちはより脆弱になり、自然災害の脅威に常にさらされているように感じます」と、別の村人、シャクール・ベイグは語った。

洪水への対処には慣れているものの、45歳の農家である彼は、これほどの規模の洪水は見たことがないと述べた。

自宅や作物、農地を失ったベイグは、バドスワット村で避難した約1,000人の住民とともに高台へ移り、その一部は仮設シェルターで暮らしている。

山々と引いていく水、損壊した道路に囲まれて孤立し、住民に十分な食料やテントを届けるのは困難だったと、地元の支援団体アガ・カーン居住環境改善機関は述べた。同機関はパキスタン軍と協力して、支援物資を空中投下した。

森林の喪失

氷河専門家でPMD局長のグラム・ラスールは、こうした出来事は始まりにすぎないと述べた。

「この地域で氷河湖の決壊によって起きる災害は、これで終わりではありません。決壊の危険がある氷河が非常に多いため、今後も続くでしょう」と、彼はトムソン・ロイター財団に語った。

ラスールによると、長年にわたる森林伐採と気候変動が重なって、この地域の気温が急上昇し、氷河の融解を招いている。

彼によると、過去80年間でギルギット・バルティスタン州の平均気温は1.4度(華氏2.5度)上昇した。これに対し、標高の低いシンド州、パンジャブ州、カイバル・パクトゥンクワ州では0.6度(華氏1度)の上昇だった。

森林に対する政府のずさんな管理と木材需要の増加により、木々が伐採されてきたと彼は述べた。森林の保全は、二酸化炭素排出を吸収し、気候変動と闘ううえで不可欠であるにもかかわらずだ。

「森林の喪失により、地球温暖化はパキスタン北部の山岳地帯に直接的な影響を及ぼしています。当局の怠慢が原因で森林伐採が進み、人々は建築や燃料のために木を切ってきました」と、ラスールは語った。

「今後、地球温暖化が氷河に及ぼす影響を和らげるために、森林を増やすことが何より重要です。」

地元当局は森林の再生を優先課題に挙げたが、地域の緑を取り戻すには時間がかかると述べた。

「州政府は、山岳地帯で急速に進む気温上昇を抑えるため、ほかの対策とともに、すでに森林を増やすキャンペーンを開始しています」と、地元政府の報道官ファイズッラー・ファラクはトムソン・ロイター財団に語った。

ファラクによると、国連国際農業開発基金(IFAD)の支援を受け、当局は、脆弱な村の住民が移転を余儀なくされた場合に備え、近隣地域のインフラ整備も進めている。

「これは大きな課題で、一夜にして解決できる問題ではありませんが、その方向に向けて取り組んでいます」と彼は述べた。

ラスールによると、PMDは3つの地域に早期警報システムを設置し、氷河に関する脅威を脆弱な地域社会に知らせている。次の事象に備えて十分な時間をもって警告できるよう、さらに設置する必要があるという。

また、ラスールによると、PMDは地域社会が緊急事態への対処について、より十分な訓練を受けることを勧めている。

その間、村人のバズにできるのは、家族がもう一日生き延びられるよう祈ることだけだという。

「土地を失い、仕事もなくなったので、将来や家族をどう養うかが心配です。これ以上自然災害に見舞われないよう、神にお守りくださいと祈っています」と彼は語った。

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