研究者は自律型水中ロボットを使って環境DNAを採取し、海洋生態系の生物多様性をモニタリングしています。
採取したDNAからは、影響を受けやすい海域における生物多様性の変化、希少種や絶滅危惧種の存在、外来種の拡大について知見が得られます。
自律型水中ロボットは、これまで調査されていなかった海域を研究できます。こうした新たなデータは、世界の海洋の健全性を高めるのに役立つ可能性があります。
海洋生態系の生物多様性をモニタリングするうえで大きな前進となる新たな研究が、本日、『Environmental DNA』誌に掲載され、MBARIの研究者が自律型水中ロボットを使って環境DNA(eDNA)を採取する方法を詳しく紹介しています。eDNAを使うと、科学者は水生生物が残した微量の遺伝物質から、その生物の存在を検出できます。この「DNAスープ」は、影響を受けやすい海域での生物多様性の変化、希少種や絶滅危惧種の存在、外来種の拡大について手がかりをもたらします。これらはいずれも、健全な海洋を理解し、その促進と維持を図るうえで欠かせない情報です。
活躍する自律型水中ロボット
この研究では、MBARIが開発した2つの新しい自律型プラットフォーム、長距離自律型水中ビークル(LRAUV)と環境サンプル処理装置(ESP)を組み合わせました。LRAUVは機動性の高い水中ロボットで、遠隔地の海域まで移動し、長期間にわたって活動できます。ESPは、海水をろ過してeDNAを将来の研究に備えて保存する、缶詰型のロボット実験室です。LRAUVにESP技術を搭載すれば、研究者は時間的にも空間的にも海洋モニタリングの規模を拡大できます。一方、従来の海洋eDNA採取では、調査範囲が限られた高額な調査船を何週間も利用する必要があります。このような技術革新は、海洋保全の取り組みを大きく変えつつあります。
「eDNAが海洋生物群集の研究に非常に有効なツールであることは分かっていましたが、有人調査船でできることには限界がありました。今では自律型技術のおかげで、時間と資源をより有効に使い、海洋の新たな区域を研究できるようになっています」と、MBARIの生物海洋学者で論文の筆頭著者であるコブン・トゥルーラブ氏は述べています。
海洋生物多様性とは、海に生息する個体と種の豊かさを示す指標です。最小のプランクトンから最大のクジラまで、相互につながる生物の織りなす世界は、食物網を支え、私たちが呼吸する空気を生み出し、気候を調節しています。LRAUVやESPのような自律型水中ロボットにより、MBARIの研究者は海洋に継続的にとどまり、従来は不可能だった方法で、影響を受けやすい生態系の変化をモニタリングできます。
「海洋や五大湖の環境が変化すると生物の移動が起こり、それらの種に依存する人々や経済にも影響します。生物多様性を大規模にモニタリングするには、より低コストで機動性の高い手法が必要です。この研究は、NOAA「オミクス戦略計画」に示された優先事項に直接応えるものであり、必要とされるeDNAと無人技術の相乗的な開発を実現します」と、研究の共著者で米国海洋大気庁(NOAA)の協力研究者であるケリー・グッドウィン氏は述べています。
背景:
この研究でMBARIは、NOAA大西洋海洋気象研究所とワシントン大学の研究者らと協力し、モントレー湾国立海洋保護区で3回の調査航海を実施しました。チームは、MBARIの調査船3隻、NOAA漁業局の調査船ルーベン・ラスカー号、そしてMBARIのLRAUV隊の間で、サンプル採取を調整しました。
船上のチームは、特定の深度までボトルを下ろして水を採取し、保存しました。その一方で、ESPを搭載したLRAUVは、同様の場所と深度で自律的にeDNAを採取・保存しました。eDNAサンプルは詳細なシーケンシングのために研究室へ送られました。
近縁の生物は、遺伝子マーカーと呼ばれる共通のDNA領域を持っています。この研究では、研究者はメタバーコーディングという手法でeDNAサンプルを分析しました。この手法では短いDNA配列を探し、サンプルに含まれる生物群の内訳を明らかにします。eDNAデータを生物多様性の指標に変換するうえで、特に有効な手法です。研究者は、食物網の異なる段階をそれぞれわずかに異なる形で示す、4種類の遺伝子マーカーを分析しました。結果を総合することで、生物群集の構成をより包括的に把握できました。調査船と自律型ビークルで採取したサンプルからは、同様の生物多様性のパターンが明らかになりました。
トゥルーラブ氏は、この研究成果は海洋生態系のモニタリングを前進させる画期的な一歩だと述べました。「この研究の目的は、eDNA研究の規模を拡大することです。個々の種に注目するのではなく、海洋の生物群集の構造をより広い視点から特徴づけられるようになります」と同氏は語りました。
「質の高いデータは、持続可能な海洋管理の基盤です」と、MBARIの上級研究員で研究の共著者でもあるフランシスコ・チャベス氏は述べています。「環境DNAを定期的にモニタリングすれば、そこにどのような生物が生息し、時間とともに何が変化しているかが分かります。海洋の健全性に対する最大の脅威の一つである気候変動の影響を理解するうえで、こうした情報は不可欠です。」
LRAUVは一度に数週間にわたって、数百キロメートルを移動できます。遠隔地を訪れる頻度が通常は低い従来の調査船よりも、関心のある海域で頻繁にサンプルを採取できます。自律型水中ロボットによって、研究者はこれまで調査されていなかった海域を研究できるようになります。こうしたデータの空白を埋めることは、世界の海洋の健全性を高めるうえで重要です。船舶を使った研究は今後も海洋学研究で重要な役割を担いますが、新たな自律型技術を研究手段に加えることで、研究、モニタリング、資源管理の能力が広がります。最終的にMBARIの研究者は、ESP技術を搭載したLRAUV隊の展開を構想しています。
この研究は、デビッド・アンド・ルシール・パッカード財団、NOAA/OAR/'Omics、NOAA/OAR/NOPP、およびNASAプロジェクト#80NSSC20M0001と80NSSX21M003から支援を受けました。






