地球には何百万もの種が生息しています。しかし、トラやゴリラのような、ほんの数十種の動物ばかりをメディアが取り上げている様子からは、そうとは思えないかもしれません。
この偏った注目は、大型でかわいらしい生き物への人々の関心を最大限に利用しています。自然保護活動家は、こうした人間以外の有名人を活用して重要な問題への認識を高め、絶滅の危機にある動物を救うための寄付を募っています。自然保護には数十億ドル規模の資金不足があることを考えると、社会の支援は欠かせません。
人気の高い種ほど、野生生物保護のための資金を多く集めます。では、ニンバカワウソトガリネズミやキューバオオミミナガコウモリなど、絶滅の危機にありながら知名度の低い種はどうでしょうか。また、ユキヒョウやオランウータンの生息地に限らず、危機にさらされたあらゆる緑地も注目に値するのではないでしょうか。
従来の考え方では、資金集めには昔ながらの方法を続けるべきとされ、自然保護活動家はコウモリやヘビのような動物を救いようのない存在と見なしがちです。自然保護を研究する私たちは、マーケティングによってこうした種を救えるかもしれないと考えました。企業がモップなどのありふれた商品をうまく売れるのなら、自然保護活動家が地味なキンモグラを救うための資金を集められないはずはありません。鼻先だけが出た小さなクッションのような姿をしていても、です。この問いに答えるため、マーケティング活動と自然保護資金集めの成果との関連を測定しました。
対照的な2種類の動物
最近発表した私たちの研究では、2つの自然保護団体によるオンライン募金キャンペーンを比較しました。世界自然保護基金米国支部(WWF-US)と、ロンドン動物学会(ZSL)が運営するEDGE of Existenceプログラムです。
この2つのキャンペーンは大きく異なります。WWF-USは、気候変動や野生生物の違法取引から森林や海洋の保全まで、地球規模の課題に取り組む幅広いプロジェクトのために資金を集めています。私たちが分析したEDGEのキャンペーンは、絶滅の危機にある哺乳類100種の保護に焦点を当てています。
こうした異なる取り組みを踏まえ、マーケティングがどのような場合に効果をもたらすのかを調べたいと考えました。そのためには、募金の対象となる種そのものが重要かどうかも考慮する必要がありました。そこで、動物の「魅力」を測定しました。魅力は、かわいらしさ、大きさ、知名度など、さまざまな要素によって決まります。どの動物が最も魅力的かを調べるため、自然保護を支援する850人に、WWF-USとEDGEのウェブサイトに掲載された動物の写真から無作為に選んだものを見せ、順位をつけてもらいました。
まず、動物の「養子縁組」制度を通じて資金を集めるWWF-USを見てみましょう。寄付をすると、人々はよく知られた種を支援する意思を示すことになります。そのお返しとして、ぬいぐるみ、動物の写真、養子縁組証明書がもらえます。ただし、WWF-USが集めた資金は、「養子」となった動物だけでなく、より広い利益をもたらすプロジェクトに使われます。
WWF-USへの寄付者の選択には、動物の魅力と絶滅の危険度という2つの要因が影響していることが分かりました。マーケティング活動は関係していません。説明や見せ方にかかわらず、最も魅力的な種が常に多くの寄付を集めました。人々がすでにその種を知り、好んでいたためと考えられます。
EDGEプログラムは異なる方法で資金を集めています。アジアゾウのように広く知られた動物も支援していますが、支援対象の多くは人々にとって魅力が低く、さまざまなネズミやコウモリも含まれます。これらの種はそれぞれウェブサイトに掲載されており、訪問者はリンクをクリックして詳しい情報を確認し、寄付できます。
人々は一般に、魅力的な種への寄付により関心を持ちますが、マーケティングの量も影響することが分かりました。EDGEが積極的に宣伝した動物は、寄付を検討する人々からより良い反応を得ており、その中には見た目が地味な動物もいました。同様に、EDGEのサイト上部に掲載された種を紹介すると、その保護に資金を出そうと関心を持つ人が増えました。
げっ歯類を救う方法
EDGEの実績から、マーケティング手法を使って野生生物保護の資金を集めれば、人気の低い種を助ける寄付を増やせる可能性がうかがえます。マーケティングがどれほど効果をもたらすかを推定するため、EDGEのデータ分析に基づいた数理モデルを作成しました。このモデルは、種の魅力(固定要因)と、EDGEがその種を宣伝したか、またはウェブサイト上部に掲載したか(変更可能な要因)に基づいて、寄付額を予測する方程式です。
次にEDGEの職員と協力し、自然保護を支援するボランティアが評価した、魅力が最も高い動物10種と最も低い動物10種について、さまざまな募金シナリオをモデル化しました。マーケティングを行わない場合、魅力が最も高い種は最も低い種の10倍の資金を集めると予測されました。これは予想どおりで、WWF-USの戦略を裏付ける結果でした。
しかし、EDGEのマーケティング活動の影響をモデル化すると、結果は変わりました。魅力が最も低い種をウェブサイトで目立つように紹介した場合、それらの種への寄付は26倍に増えると予測されました。十分に力を入れれば、慈善団体はコウモリやげっ歯類のような種の保護資金も集められることを示しています。
私たちの研究結果は、野生生物を支援する資金を集める方法が、自然保護活動家の想像以上に多くあることを示しています。
マーケティングはいつ寄付を増やせるのか
では、知名度の低い種のために募金すべきなのはどんな場合でしょうか。答えは、その動物がどれほど絶滅の危機にあるか、すでにどれほど支援を受けているか、保護にいくらかかるか、そしてプロジェクトが成功する可能性によって決まります。自然保護活動家がゾウやサイなど人気のある種の保護だけに注目すると、こうした点を見落としがちです。
だからといって、WWF-USがなじみのある動物への注力をやめるべきだということではありません。集めた資金は「養子」となった動物だけでなく、幅広い利益をもたらすプロジェクトに使われるため、特定の種への人々の広範な関心に応えるのは理にかなっています。
確かに、私たちの研究では、マーケティング活動によって寄付総額が増えるかどうかは測定していません。しかし、キャンペーンにより多様な種を含めることで、寄付が増える可能性があります。特に、絶滅の危機にあるカエルやタランチュラなど、あまり顧みられていない動物、さらには植物への寄付が増えるかもしれません。
また、人々の目に触れる種の総数が増え、誰もが野生生物の保護に貢献できる多様な方法を知るきっかけにもなるでしょう。
自然保護活動家は、守ることが重要な動物が見過ごされることがあるとよく嘆きます。私たちの結果は、嘆くのをやめてマーケティングを始めるべきだと示しています。





