コンクリートは地球上で最も多く生産されている素材ですが、世界の二酸化炭素排出量の8%超を占めています。
製造業者の利益率が低く、排出量削減技術への投資余力が乏しいため、コンクリート業界は脱炭素化が最も難しい業界の一つです。
世界各地の多くの業界で、セメントとコンクリートのカーボンフットプリントを大幅に削減できる新たな戦略や技術の検討、試験導入が進められています。
急速に変化する気候がもたらす課題に対処するには、地域市場と世界市場の双方に合わせた一連の解決策が必要になるかもしれません。
人類は地球上のどの素材よりも多くのコンクリートを生産しています。コンクリートは文字どおり現代文明の基盤であり、それには十分な理由があります。
コンクリートは強度と耐久性に優れ、手頃な価格で、地球上のほぼすべての地域で利用できます。しかし、世界のコンクリート業界には知られざる問題があります。業界だけで世界の二酸化炭素排出量の8%超を占めており、排出量は航空業界に関連するものの3倍以上に上ります。アジアの都市の成長に伴い、こうした排出量は過去20年間で倍増し、需要も前例のないペースで拡大し続けています。
また、脱炭素化が最も難しい業界の一つでもあります。その一因は、製造業者が通常、地域に密着して事業を営み、利益率も低いため、排出量削減技術に投資する余力が乏しいことです。
しかし、難しいからといって不可能とは限りません。
世界各地の建築家、エンジニア、科学者、セメント・コンクリートメーカーは、セメントとコンクリートのカーボンフットプリントを大幅に削減できる新たな戦略や技術の検討、試験導入を進めています。その一部を紹介します。私のチームがコロラド大学で取り組んでいるものも含まれます。天然の微細藻類を活用し、コンクリートの最大の排出源であるセメントの問題を解決する方法を探っています。
セメントを100%使う必要はない
コンクリートが気候に与える影響の主な原因は、コンクリートの原料となる粉末、ポルトランドセメントの製造です。
セメントは、炭酸カルシウムを豊富に含む石灰石を華氏2,640度(摂氏1,450度)を超える高温で加熱して作られます。炭酸カルシウムは分解して酸化カルシウム、つまり生石灰と、気候を温暖化させる温室効果ガスである二酸化炭素になります。ポルトランドセメント協会が「化学反応に伴う避けられない事実」と呼ぶこの化学反応が、セメント関連排出量のおよそ60%を占めています。残りは窯を加熱するエネルギーに由来します。
コンクリートのカーボンフットプリントを削減する有望な短期策の一つは、石炭火力発電所から出るフライアッシュ、鉄鋼生産で生じるスラグ、焼成粘土などをコンクリート配合に使い、ポルトランドセメントの一部を置き換えることです。これらは混合セメント材料と呼ばれます。
フライアッシュ、スラグ、焼成粘土を20%から50%使用すると、コンクリート配合の内包炭素を、ほぼ同じ割合で削減できます。
少量の粉砕石灰石でセメントの一部を置き換える方法もあり、標準的な手法になりつつあります。厳格な試験を経て、カリフォルニア州運輸局は最近、同局のプロジェクトでPLCとして知られるポルトランド石灰石セメントの混合物を使用できると発表しました。セメントの5%から15%を粉砕石灰石で置き換えるPLCは、ほぼ同じ割合で排出量を削減できます。カリフォルニア州の決定を受け、他州もすぐにPLCの使用を承認しました。
多くの研究者は現在、石灰石焼成粘土セメントの採用を提唱しています。これはポルトランドセメントを約55%、粉砕石灰石を15%、焼成粘土を30%含みます。排出量を45%超削減できる可能性があります。
電化と炭素回収でできること
セメント工場では、排出量を大幅に削減するため、炭素回収技術や電気窯の試験も始まっています。しかし、炭素回収は高コストで、セメント・コンクリート業界の需要を満たせる規模まで技術を拡大するのは容易ではありません。
窯の電化も同じ障壁に直面しています。世界でも特にエネルギー集約度の高い工程の一つを電化するには、新技術と多額の設備投資が必要です。それでも、燃焼に伴う排出をゼロにできるという期待は、一部の起業家やセメント企業を引きつけています。その中には、セメント生産に太陽エネルギーを100%利用することに関心を寄せる企業もあり、技術面でも経済面でも大規模展開が可能な解決策を見つけようと競っています。
インフレ抑制法は2022年8月に米議会で可決され、こうした技術の普及を後押しする可能性があります。同法には、設備の近代化や炭素回収機能の追加に向けた資金に加え、メーカーが排出量を削減するための税額控除措置も盛り込まれています。
藻類の活用も視野に、セメントを使わない方法へ
別の戦略は、ポルトランドセメントをまったく含まない、機能的に同等な材料を製造することです。
アルカリ活性化スラグやフライアッシュセメントコンクリートなどの材料は、スラグ、フライアッシュ、またはその両方を非常に強いアルカリと混ぜて製造します。こうした材料は、炭素排出量を90%以上削減できることが示されています。規模とコストの基準を満たせる可能性がありますが、技術面と規制面の課題はなお残っています。
市場で普及している低炭素でポルトランドセメントを含まないコンクリート製品の例には、ウォラストナイトを基材とするモジュール部材、圧縮成形土ブロック、プレキャストのバイオセメント製品があります。その中には、光合成と生物鉱化作用を行う微細藻類を使って製造された製品も含まれます。
藻類はセメント窯を加熱する代替バイオ燃料としても使われており、藻類の培養システムをセメント生産と連携させて炭素を回収する取り組みも行われています。
コロラド大学ボルダー校の私のチームと私は、藻類由来の石灰石をポルトランドセメントの製造に用いる方法を研究しています。セメント製造に伴う排出量の60%削減に役立つ可能性があります。この技術の魅力は、従来のセメント生産工程にそのまま導入できることです。
コンクリートを使って回収したCO2を固定する
エンジニアたちは、回収した二酸化炭素をコンクリートに注入する方法や、コンクリートに混ぜる砂利や砂の代わりに二酸化炭素から作った骨材を使う方法も試しています。
期待の持てる構想ですが、これまでのところ、注入による二酸化炭素削減効果は限定的で、二酸化炭素を貯留する骨材の生産もまだ規模を拡大できていません。
深刻化する課題
結局のところ、こうした技術やほかの技術が期待に応えるかどうかは、時間がたたなければ分かりません。
確かなのは、セメント・コンクリート業界全体が、解決すべき課題を抱えており、万能の解決策はないと認識するに至ったことです。増え続ける人口に対応し、急速に変化する気候に向き合うという目先および長期の課題に対処するには、地域市場と世界市場の双方に合わせた一連の解決策が必要になるかもしれません。






