ケープタウンの危機が示す、水の真のコスト

Debris is seen as water levels fall to about 24 percent full at Voelvlei Dam, one of the region's largest water catchment dams, near Cape Town, South Africa December 5, 2017. Picture taken December 5, 2017. REUTERS/Mike Hutchings - RC1123F069D0
Drought and poor planning mean Cape Town is approaching the day when the taps run dry.Image: REUTERS/Mike Hutchings
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この夏のある時期、南アフリカのケープタウン市民は「デイ・ゼロ」――市内のほぼすべての蛇口から水が出なくなる日――を迎えると見込まれている。その日には、400万人の住民が水を求める際、指定された約200カ所の給水地点に列を作らなければならない。

デイ・ゼロが家庭での水の使用にどう影響するかに注目が集まる一方で、市民は何を食べることになるのか、その食料はいくらになるのかという疑問が残る。この地域の農業は、地元の水供給をほぼ無制限に利用できる恩恵を長年受けてきたが、今、厳しい現実に直面している。そして、それが問題の大きな部分を占めている。

この悲劇は避けられないものではなかった。市当局は、市とその農業が、貯水池に補充される量を上回る水を取水していることを把握していた。そして、2015年に干ばつが始まって以降、状況は悪化する一方だった。しかし、干ばつと計画の不備だけが原因ではない。より根深い問題がある。水のコストが見えないのだ。そのコストが全面的に計上されている場所はなく、農業においてさえそうである。

農業における水のコストの未計上は、南アフリカに限ったことではない。これは世界的な危機であり、ケープタウンが最初の警告だったわけでもない。カリフォルニアで最近起きた水危機を受け、都市部では水の使用制限が義務付けられたが、農業は対象外だった。カリフォルニア州の農場は、州の地表水の80%を使っているにもかかわらずである。同様に、サンパウロ(ブラジル)では最近、2,000万人の住民に供給する水が尽きたが、州の水の59%は農業と工業に流れ続けた。

世界は差し迫った水の危機に直面しており、食料システムを干上がらせるおそれがある。気候変動によって降雨パターンが乱されるなか、世界の水需要は2050年までに55%増加すると予測されている。水需要増加の要因は農業だけではないが、世界の人口増加に伴い、より多くの食料が必要となり、すでに限られている水資源への負荷がさらに高まる。こうした資源は、食卓に上る食料の市場価値には反映されていない。

世界の水需要:基準シナリオ、2000年と2050年。Image: OECD

農業は他のどの経済部門よりも、健全な生態系がもたらす自然の恵みに依存している。自由に使える水は、その一つにすぎない。こうした恵みには、肥沃な土壌の供給、受粉、植物の生物多様性も含まれ、現在の食用作物の野生近縁種もその一部である。しかし、これらの恵みは無限ではない。対価を支払わなければ、いずれ失われてしまう。

生態系サービスの約60%は、すでに劣化している。異常気象が増えるなか、世界の食料生産への脅威と食料価格危機の可能性が高まっている。

生態系サービスに価値を付け、企業における資金の流れを計上するのと同じように、その利用を正式に計上すれば、状況を大きく変えられるだろう。社会が農業による自然からの資源利用を測定し、管理できるようになり、まずは水から取り組める。

地球上の水のうち、淡水はわずか3%であり、飲料水、食料生産、衛生、発電を支え、多様で重要な生物多様性を育んでいる。灌漑農業は現在、この水の70%を取水している。そのうち、膨大な量が無駄になっている。水使用の半分以上が灌漑用である南アフリカでは、植物の根系に適切に届いている水は60%未満にすぎない。

水の価値を誠実に計上して初めて、より賢明な利用が可能になる。たとえば、ありふれたものではないハンバーガーの「真のコスト」には、市場価格を超えるさまざまな影響が含まれる。輸送による二酸化炭素の排出から、家畜飼料の栽培に伴う森林伐採、飼料用穀物に使われる水、牛肉の食べ過ぎに関連する健康コストまで及ぶ。つまり、一見安価なこの食品も、実際には高くつく。

こうしたコストを理解し、適切に配分することで、何をどのように生産するかを見直すきっかけになるはずだ。たとえば、人々は水をあまり必要としない食品を選んで食べることができ、農家も水をあまり必要としない作物を選んで栽培できる。

食肉生産には、野菜の生産よりはるかに多くの水が必要である。鶏肉1kgあたり5,000リットル、牛肉1kgあたり20,000リットルに上る。これに対し、小麦1kgの生産に必要な水は500~4,000リットルである。また、チョコレート1kgの生産には17,000リットルの水が必要だ。

したがって、食品価格に水のコストを反映し、自然の恵みへの依存が少ない食用作物に切り替えることは、環境面で望ましいだけではない。2030年までに85億人を養うと見込まれる世界の食料供給を維持するうえで不可欠である。

ケープタウンは間違いなく、水危機の解決策を見つけるだろう。井戸の掘削や海水淡水化に向けた取り組みは続いており、費用はかかるものの有望だ。それでも、この経験はすでに問題を抱える社会に傷痕を残すだろう。そして、その傷が癒えるには長い時間がかかる。

一方、世界的に見ると、農業における生態系サービスの価値を認識できていないことは、食料安全保障への大きな脅威となっている。今、水のコストをより適切に計上すること、特に私たちが栽培し消費する食料についてそうすることが、世界規模のデイ・ゼロを防ぎ、食料が安定して豊富に行き渡る世界への願いを守ることにつながるかもしれない。

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