温室効果ガスについて話すとき、通常は二酸化炭素について話します。メディアが気候変動を報じる際には、決まって石炭火力発電所の冷却塔が映し出されます。
それももっともです。二酸化炭素(CO2)は最大の要因で、オーストラリアの温室効果ガス総排出量のほぼ75%を占めます。その大半はエネルギー部門と化石燃料の燃焼によるものです。
しかし、温室効果ガスにはほかの気体も関わっています。メタンと一酸化二窒素も、オーストラリアの温室効果ガス排出量に寄与しています。どちらも地球温暖化への大気中の影響は、二酸化炭素よりはるかに大きいものです。
気候変動を測る基準となるのは二酸化炭素です。この基準では、大気中に排出されるメタン1トン(たとえば家畜由来)は、二酸化炭素排出量34トンに相当します。一酸化二窒素1トンは、二酸化炭素298トンに相当します。
一酸化二窒素の大気中寿命は110年です。一酸化二窒素を大気から除去する過程では、オゾンも減少します。つまり一酸化二窒素は温室効果ガスであるだけでなく、オゾンを破壊する物質でもあります。
一酸化二窒素(N2O)は、一般に笑気ガスとして知られています。しかし、大気中の一酸化二窒素は歯科医から出るのではなく、窒素系肥料に由来します。
世界では、食料生産のために土壌へ施用される窒素肥料の約1%が、一酸化二窒素として大気中に放出されます。オーストラリアでは、この割合は実際には約0.5%です。
確かに非常に小さな数字ですが、地球温暖化に対する農家の影響を考えるうえでは大きな意味があります。
問題は気候だけではない
一酸化二窒素は温室効果ガスであるだけでなく、栽培農家の農業実践の効率や、作物に施用する窒素の管理状況を示す非常に優れた指標でもあります。
一酸化二窒素が1キログラム排出されるごとに、ほかの窒素ガス(例:窒素分子N2)も、はるかに多い2~70キログラムが失われています。これらのガスは大気(すでに窒素分子が78%を占めています)に影響を与えませんが、生産の損失、ひいては農家の収入の損失に相当します。
窒素肥料は安くありません。窒素1トンは栽培農家に1,000豪ドルを超える費用をもたらしますが、急速に増加する世界人口の需要を満たすうえで欠かせません。
オーストラリアの農家は全体で、毎年ほぼ100万トンの窒素を施用しています。施用量1トン当たり(控えめに見積もって)25キログラムが大気中に失われるとすれば、経済から毎年2,500万豪ドルが失われることになります。
持続可能な農業は気候変動と闘う
オーストラリアの農家はかつてないほど生産性と効率性を高めており、多くの場合、豊かな作物を育てる需要に応えるため、窒素肥料の施用量を増やしています。同時に、施肥の適切な時期を選ぶことで、窒素のより多くを大気中ではなく作物に取り込ませることができます。
農業部門でよく使われる「窒素利用効率の向上」という言葉は、生産性、収益性、環境面での持続可能性など、複数の観点から持続可能な農業にとって極めて重要です。
持続可能な農業の基本を実践し、土壌有機物中の土着の窒素供給を増やしたり、大気中の窒素を無料で供給するマメ科植物を利用したりすることで、栽培農家は窒素肥料への依存を減らし、温室効果ガスの排出を抑えています。
こうした取り組みはいずれも新しいものではありません。オーストラリアでは、大多数の栽培農家が実践しています。
だからといって、手をこまねいてよいわけではありません。まだ初期段階であり、地域や産業によって状況には差があります。たとえば、半乾燥地の作物栽培地域では、降雨量の多いサトウキビ栽培地域に比べ、窒素の排出量が極めて少なくなっています。
経済と環境の持続可能性の観点から、農村産業と政府はこの分野への投資を続けなければなりません。
歴史的に、世界中の農家は環境への配慮に欠けると見なされてきました。しかし、持続可能な農業の原則と、増加する人口への食料供給は、気候変動の緩和と両立します。
本記事は The Conversationとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。
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著者:Louise Bartonは西オーストラリア大学の土壌科学者です。Peter Graceはクイーンズランド工科大学の地球環境変動学教授です。
画像:2014年6月4日、タスマニア州北西部、ローンセストン郊外の農地の上空に雲が見える。REUTERS。





