ハリケーンの進路予測は進歩したものの、予報担当者は緊急措置や避難の判断に欠かせない要素、すなわち勢力の特定に依然として苦慮している。
嵐の力、つまり勢力をより正確に予測できれば、住民は、接近するハリケーンが昨年プエルトリコを壊滅させたマリアのように木々を根こそぎ倒す壊滅的な洪水や強風をもたらすのか、それとも枝を揺らし窓をガタガタ鳴らす程度なのかを把握し、より十分に備えられる。
「嵐がどこへ向かうかを、はるかによく理解できるようになったことは、大きな第一歩です。円の半分ほどが埋まった状態で、残る半分、つまり勢力という要素も埋める必要があります」と、保険会社エーオン・ベンフィールドのインパクト・フォーキャスティング・チームのディレクター兼気象学者、スティーブ・ボーエン氏は述べた。
海水温と気温の上昇により、嵐のエネルギーも増しており、勢力予測に影響する可能性があると、一部の気候科学者は指摘している。
「気候変動は、熱帯低気圧の発生頻度、勢力、進路に影響を及ぼす可能性がある」と、MITの気候学教授ケリー・エマニュエル氏は最近の学術論文に記した。
壊滅的な被害をもたらした2017年のシーズンを経て、今年、大西洋のハリケーンシーズンがピークを迎える中、ハリケーンの勢力を迅速に測定し、その変化を予測することは、住民が備える時間を確保するうえで重要だ。
昨年、相次いだ壊滅的なハリケーンの一つであるマリアは、推定4,465人の命を奪い、プエルトリコの電力網を停止させ、900億ドルの損害をもたらした。
米国立ハリケーンセンターは昨年の報告書で、2016年のハリケーン・マシューがカテゴリー5の嵐へ急速に発達し、最大持続風速が時速165マイル(時速270キロ)に達することを十分に予測できなかったと述べた。
ロイターが収集したデータによると、この嵐はカリブ海で破壊的な爪痕を残し、ハイチで1,000人以上の命を奪った。
ハリケーンの中心部
科学者によると、ハリケーンの勢力を予測する科学モデルは12種類以上あるものの、用途は限られている。
嵐の追跡科学が周辺部の状況に関するデータに大きく依存する一方、勢力の予測では、嵐の中心部で起きていることを測定し、エネルギーがどこから来ているのかを突き止める必要がある。
通常は、ハリケーン観測機を嵐の中へ飛ばす、嵐が上空を通過する際に気象ブイで風速を測る、あるいは1日おきにしか上空を通過しないこともある衛星に頼ることになる。
勢力予測に必要なデータをさらに得るプロジェクトの一つが、サイクロン全球航法衛星システム(略称CYGNSS)だ。NASAが2016年に打ち上げた、低軌道衛星8機からなる衛星群である。
NASAによると、比較的まれにしか上空を通過しなかった従来の衛星は、嵐の中心部における海面付近の風を測定するのが難しかった。中心部の激しい雨によって信号が劣化することも多かったという。
「急速に変化する嵐では、急激な勢力増強のような現象を見逃す可能性があります」と、CYGNSSの主任研究者でミシガン大学の気候科学教授、クリストファー・ラフ氏は述べた。
CYGNSSは、従来は宇宙から測定できなかった地域を含め、熱帯低気圧の内核やその周辺の海面付近の風を測るために設計された。衛星の数が増えてより頻繁に上空を通過し、嵐に近い位置にあることで、勢力モデルに取り込める、よりリアルタイムに近いデータを提供できると研究者らは述べた。
現在、研究者らは、ハリケーンがテキサス州、フロリダ州、プエルトリコに壊滅的な被害をもたらし、数千億ドルの損害が生じた2017年のシーズンに注目している。CYGNSSが収集したデータを再検証し、予報の精度にどう影響したか、勢力予測にどう活用すればよいかを調べている。
研究者らによると、CYGNSSは来年、全面運用に入る可能性がある。
米国立ハリケーンセンターのハリケーン専門部門の部門長、マイケル・ブレナン氏によると、2017年のハリケーンシーズンには、嵐の勢力が急速に増したり弱まったりする急激な変化が数多く見られた。
同センターは2009年、10年間のハリケーン予報改善プログラムを開始した。ハリケーン研究を調整し、予報の改善に取り組むことで、嵐の進路や勢力をよりよく理解する助けとなっている。
ブレナン氏によると、昨年、大西洋海域で起きた急激な勢力増強39件のうち、予報担当者が正しく予測できたのは6件だった。
「決して優れた数字には聞こえませんが、10年前ならゼロだったでしょう」と同氏は述べた。





