生物多様性は、心身双方のウェルビーイングに不可欠です。
しかし、報告によると生物多様性は減少しており、経済や健康へのリスクにつながるおそれがあります。
ここでは心理学者が、自然界を守ることがなぜ重要なのか、4つの理由を説明します。
新型コロナウイルス感染症のロックダウン中、裏庭や近所の公園にいる動物や木々、花の多様さに気づく人が増えています。そして、自然と触れ合うことが幸福感にどう影響するかにも注目が集まっています。
こうした生命の多様性は、生物多様性と呼ばれ、私たちの健康とウェルビーイングに欠かせません。私たちは、飲み水や食べ物、呼吸するきれいな空気を自然界の生物多様性に依存しています。
しかし、報告によると、生物多様性は減少しており、その速度は前例のないほど速く、甚大な経済・健康上のリスクにつながる可能性があります。例えば、農業では植物の受粉をミツバチやチョウに頼っており、その受粉によって果物や野菜が実ります。花粉を運ぶ生物が失われれば、英国の農業部門は毎年最大7億ポンドの損失を被り、国の食料供給にも深刻な影響が及びます。
私たちの新しい研究では、身の回りの植物、動物、昆虫、細菌が、さまざまな形で間接的に人間の健康にどのような恩恵をもたらすか(場合によっては害を及ぼすか)を調べています。以下に、研究から得られた主な4つの知見を紹介します。
1. 生物多様性は私たちの生存に不可欠
約75%の承認済み医薬品は自然界に由来しており、新薬を見つけるために私たちは植物や動物の生物多様性に頼っています。これまでに薬効が調べられた植物、動物、微生物はごく一部にすぎません。つまり、未開拓の大きな可能性が残されているかもしれません。
しかし、恩恵は薬だけではありません。私たちが食べるものはすべて、動植物の生物多様性、そして植物の受粉を担うミツバチやチョウの働きによってもたらされます。世界の淡水の多くは、森林から供給されます。森林に生息する多様な生物は、水を浄化し、ろ過する働きもしています。
生物多様性は、極端な暑さを和らげることで人間の健康にも役立ちます。多様な樹木が生える都市の緑地は、都市の過度な暑さを防ぐことができます。
2. 心身の回復にも役立つ
日々のプレッシャーは、ストレスへの対処や、注意を集中して問題を解決する力を圧迫し、ストレスや精神疾患のリスクを高めます。しかし、生物多様性に富む環境が心身の回復に役立つことが研究で示されています。例えば、鳥の多い地域に住む人は、ストレスが少ないと報告しています。また、ストレスを抱える人に、さまざまな植物が生える多様な草地を見てもらった研究では、植物が1種だけの草地より、少なくとも32種の植物がある草地を見たときに最もリラックスできることが分かりました。別の研究では、自宅からの眺めを調査し、さまざまな植物や低木、樹木を多く見渡せる人は、主要なストレスホルモンの一つであるコルチゾールの濃度が著しく低いことが分かりました。
3. 物事を広い視野で捉えられる
自然の多様性が織りなす光景や音――何百羽もの海鳥が飛ぶ姿や森の中にいることなど――は、畏敬や驚嘆、感嘆といった強い感情を呼び起こします。こうした体験は、物事を広い視野で捉え、自分自身の人生の目標を振り返る助けになります。
植物や鳥の種の豊富さが際立つ緑地にいると、人生を振り返り、広い視野を得やすくなることが研究で分かっています。。
生物多様性は、より健康的な暮らしを促すことにも役立ちます。米国で行われた研究では、例えば、トネリコの木が失われた地域の人々は、トネリコの木がある地域の人々に比べ、屋外で運動する機会が減ったと報告しました。トネリコは米国やカナダの一部で、庭や街路沿いによく見られますが、中国、日本、台湾、韓国、モンゴル原産の侵入種である甲虫、エメラルドアッシュボーラーによって枯らされています。
4. 生息地の喪失と野生生物取引が生物多様性を脅かす
とはいえ、生物多様性は私たちに害を及ぼす可能性もあります。季節性アレルギー、イラクサの刺毛、マダニ、ウイルスは、いずれも自然界の有害な側面の例です。さらに懸念されるのは、生息地の喪失や野生生物取引によって生物多様性が持続不可能な形で管理されると、感染症を媒介する動物との接触リスクが高まり、将来のパンデミックが起きやすくなる可能性があることです。これは、生態系の保全や野生生物の違法取引の阻止を通じ、生物多様性を持続可能な形で管理する必要性を示しています。
100万種が絶滅の危機に瀕していること、そして生物多様性の喪失が人間のウェルビーイングと健康に悪影響を及ぼすことを踏まえれば、今すぐ行動が必要なのは明らかです。生物多様性の喪失は世界的な問題であり、実質的な変化を起こすには、国と世界の両方の規模で解決策を実行する必要があります。



