誰もが担い手となる、安全で公正な未来。その理由とは

Earth system change is causing displacement, loss of livelihoods and death, fuelling a dangerous cycle undermining social and planetary stability.
Earth system change is causing displacement, loss of livelihoods and death, fuelling a dangerous cycle undermining social and planetary stability.Image: NASA/Unsplash
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  • 地球システムの変化は、人々の移住や生計の喪失、死を引き起こし、社会と地球の安定を損なう危険な悪循環を助長している。

  • 「安全で公正な地球システムの境界」は、不可逆的なティッピングポイントを越えないようにし、人々の尊厳ある暮らしを確保し、地球規模の共有資源を守る方法を示している。

  • この安全で公正な領域こそ、今日追求する価値のあるあらゆる企業活動、経済活動、政治的機会の基盤である。そこへ進むうえで、都市と企業は主導的かつ変革を促す役割を担う。

私たちは、近代史において比類のない転換点の瀬戸際に立っている。今日の行動が、はるか未来の世代にまで及ぶ暮らしの条件を決める分岐点だ。

COP28では、世界各国の過半数が、科学的に定められた1.5°Cの経路に沿って、化石燃料から秩序ある公正な形で脱却することを求めた。科学は今回も、数値を明確に示していた。最終的な合意文書には大きな不備が残ったものの、企業や市民社会の間では大きな機運が高まった。彼らは、化石燃料からの公正な脱却、2030年までの再生可能エネルギーの3倍増、生物多様性損失の阻止と回復を求め、変革への意欲が存在することを示した。

言葉を現実に変えなければならない。今すぐ、迅速に。

現在のCO2排出量が続けば、残された炭素予算で1.5°Cの気温上昇抑制を50%の確率で実現するために使える期間は、あと7年しかない。これまで排出削減が不十分だったため、私たちはこの道のりで「1.5°C超過」の期間に入る可能性が高い。その超過の規模と期間を最小限に抑えることが極めて重要だ。そうすることで、人間や他の種への深刻な被害、一部地域の気候に不可逆的な変化が生じるリスク、そしてそれに続く社会や経済への衝撃を避ける必要がある。

しかし、排出削減だけに取り組んでも十分ではない

人間の活動は、地球システムにおける負のティッピングポイントへと私たちをますます近づけている。すでに地球の重要な生命維持システムを損ない、世界各地で深刻な不公正を引き起こしており、それが人々と地球への負の影響をさらに悪化させている。気候危機は、生物多様性の損失、致命的な大気汚染、淡水不足、そして国家内・国家間の格差拡大と切り離せない関係にある。

言い換えれば、地球システムの変化は、人々の移住や死、生計の喪失を招き、社会の安定を損ない、地球へのさらなる圧力となる危険な悪循環を助長している。

こうした課題はどれも、「炭素だけにとらわれた視野」で取り組んでも解決できない。相互につながる課題には、相互につながる対応が必要だ。

変革をもたらす、安全で公正な領域

朗報は、社会と経済のシステムを前向きに変革することも可能だということだ。

世界中の人々が尊厳ある暮らしを送り、地球システムの変化による深刻な被害を避け、経済と社会に不可欠な地球規模の共有資源を守れることが、証拠によって示されている。

今年5月、私たちは「安全で公正な地球システムの境界」を発表した。この研究では、不可逆的なティッピングポイントの通過と、人間や他の種の暮らしへの広範な影響を避けるため、9つのプラネタリー・バウンダリーのうち5つについて、社会的・生物物理学的な限界を科学的に定量化した。

境界の一つは、農地、管理された森林、都市部など、人間の活動が支配的な景観のあらゆる1平方キロメートルについて、20~25%を自然のために確保し、重要な地域の生態系サービスを維持することだ。こうしたサービスは見えにくく、市場では評価されていないことが多いが、社会、経済、そして生存に不可欠であり、単に「あれば望ましい」ものではない。受粉、水質の調整、害虫や病気の抑制、自然に触れることで得られる身体的・精神的健康への実証済みの恩恵などが含まれる。

新たな研究では、資源へのアクセスの最低水準を調査し、安全で公正な境界に関する研究をさらに深めた。この定量化により、地球上の誰もが尊厳ある暮らしを送り、貧困から抜け出すために必要な、安全で公正な基盤を定義する。これを、以前の研究で定めた上限(地球システムの変化による被害からすべての人を守る水準)と合わせることで、その間にある安全で公正な領域が形を取り始める。

今後数カ月以内に発表する私たちの調査結果は、資源の過剰利用が進むほど格差が広がり、地球システムの崩壊がもたらす結果は、今日最も脆弱な人々だけでなく、すべての人と未来の世代にとって一層厳しいものになることを示している。いかなる国、市場、地域社会も免れることはない。

居住不可能な地域から多数の人々が移住を余儀なくされる事態や、生態系の崩壊、生命維持システムの破壊を避けることは、「私たちと彼ら」の問題でも、「次のCEOに任せる」問題でもない。今取り組むべきことであり、尊厳ある暮らし、安全な市場、そして事業継続への需要を守ることだ。

この今後発表される論文の数値と知見を、「安全で公正な境界」の定量化と組み合わせれば、経営者や政策立案者が21世紀にふさわしい意思決定を行う指針となる。危険なティッピングポイントや破局的な結末を避け、すべての国、地域社会、経済にとって豊かさと均衡に満ちた新時代へ向かう道筋を描くことができる。

Image: Superflux
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安全で公正な領域は、今日追求する価値のあるあらゆる企業活動、経済活動、政治的機会の基盤でもある。そこへ進むには大規模な変革が必要であり、とりわけ企業と都市が主導的な役割を担う。最も迅速な道筋は、消費の削減と再配分、経済システムの転換、テクノロジー、ガバナンスという4つの主要分野の変革を通じて実現する。

「安全で公正な境界」は、企業や都市、国が目標に落とし込み、あらゆる場所の経済や地域社会に影響をもたらせるよう設計されている。その取り組みはすでに始まっている。

Holcim、Nestlé、Tescoを含む17社が、気候に関する科学的根拠に基づく目標と並行して、自然に関する科学的根拠に基づく整合的な目標をすでに試行している。各社はその過程でイノベーションを進め、複合的で相互につながるリスクが高まる急速な変化の世界で、事業を将来にわたって守る新たな機会を活用している。各社が実感しているのは、簡単ではないということだ。どれも簡単ではない。

気候、生物多様性、栄養素、淡水、エアロゾルがどう結びついているか、そして人々がこれらの資源をどう公平に分かち合えるかについて、多層的で全体を捉えたビジョンが必要だ。すべての企業、金融機関、政府がこの相互関係を明確に理解しなければ、破綻の瀬戸際へ進み、他の人々まで巻き込む危険がある。

適切に進めれば、得られるものは多い。いつ、どこで方向転換すべきかをレーザーのように明確に見極め、誰にも何にも害を与えずに目的地へ安全にたどり着けるという確信が必要だ。

今こそリーダーたちはヘッドライトを点灯し、取り返しのつかない被害を避けるため、安全で公正な領域へ進む機会をつかむべきだ。社会全体にわたる公正な変革によって実現でき、すべての人が未来の世代にわたって繁栄できるようにするため、望ましい選択でもある。

そこへたどり着くことは、誰もが担うべき課題だ。

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