現在、周囲に溶け込むのが非常に巧みで、社会に疑われることなく受け入れられているロボットの群れがいる。彼らの使命とは、研究対象として送り込まれた生物がどのように行動し、交流するのかを学び、その知識を使って、潜入先の社会を創造主たちがよりよい未来だと考える方向へ導くことだ。
幸い、これは人間社会を内部から破壊しようとする高度なアンドロイドの話ではない(そうしたものはまだ存在しない……少なくとも、私たちの知る限りでは)。
いや、ミツバチの話だ。
今月、5年間にわたる欧州の研究イニシアチブ「FOCAS(集団適応システムの基礎)」が終了した。この研究の目的は、社会性動物のコミュニケーションの仕組みを解明することだった。そのため研究者たちは、動物の社会に加われるほど本物に似た外見と行動を備え、ミツバチやゼブラフィッシュを欺くよう設計されたロボットの群れを作った。
これにより研究者たちは、ミツバチの群れという文字どおりの「巣の集合知」をかつてないほど深く観察できた。さらに、これらのロボットを使って、ミツバチを適応へと導き、絶滅の危機に直面するなかで生き延びる手助けができるかもしれない。
こうしたロボットは、長年にわたる群ロボット工学の研究から生まれた。ミツバチ特有の8の字ダンスをまねる小型ドローンを作るだけでは不十分だ。研究者たちは、独自の集合知を持つ小さなロボットのチームを作る必要があった。また、機械がばらばらに動くのではなく、ひとつの群れとして移動し、行動し、学習できるようにする必要もあった。たとえば、グラーツ大学の技術者たちは、ドローン自体の性能が高まるにつれて、ロボットの行動を実際のミツバチにより近づけるために、人工知能を活用した。さらに、2つのロボットの群れが互いにやり取りするようにし、個体が勝手に飛び去ったり、互いに衝突したりせず、一体となって飛び回れるようにした。
こうした小さな改良を少しずつ重ねたのは、最終目標である、実際の動物に受け入れられ、交流し、さらには後をついてこさせるほど高度なロボットのスパイを実現するためだった。ロボットをコロニーにぽんと入れて、そこにいるのが当然であるかのように十分長く振る舞わせると、本物として通用するようだ。種を救う取り組みが実際に行われるのはまだ先だが、チームの研究は、本物のミツバチがロボット昆虫にプログラムされた行動に従うことを示している。ミツバチの群れを内部から観察することで、科学者はどのような環境要因がミツバチやほかの動物に圧力をかけているのかを正確に理解できる。
「私を刺したロボットスパイ」は、ミツバチの生存を守るだけでなく、家畜や農業の管理にも役立つ可能性がある。そのことは、ウォルマートが今年初めに類似技術へ多額の投資を行い、特許を取得した理由の説明になるかもしれない。
死んだミツバチをロボットの花粉媒介者で置き換えるという発想は、どこか気が滅入るうえ、現実性にも大きく欠ける。一方、FOCASから生まれた新たなロボットの群れは、ミツバチのような動物がどのように行動するのか、そして絶滅の危機に直面するなかで生き延びられるよう、どう支援すればよいのかを、私たちがより深く理解する助けとなる。





