多くの研究者や民間企業の団体は、ブルーカーボン生息地の再生が炭素排出の相殺に役立つと考えている。
しかし、新たな研究の著者らは、気候面での恩恵はまったく確実ではなく、排出削減効果の規模は過大に見積もられている可能性があると論じる。
著者らは、ブルーカーボン吸収源がもたらす可能性のある恩恵について、より詳細な研究を求める一方、生息地の再生が炭素除去以外にも果たす役割を強調している。
大気中から数千億トンの炭素を除去することは、気候変動の最悪の影響を回避するために必要だと考えられている。生息地を再生させることで自然の力を活用し、この目標の達成を支援すれば、環境と気候の双方にとって一石二鳥の解決策となるように思われる。
マングローブ林、塩性湿地、海草藻場の下にある堆積物には、有機炭素が豊富に含まれており、それは何百年もの間に蓄積してきた。二酸化炭素(CO₂)などの温室効果ガス排出を相殺したい企業や国は、いわゆるブルーカーボン生息地の再生に資金を提供する方法を模索している。
多くの研究者や民間企業の団体は、こうした生態系が大気中からCO₂を除去する速度を将来にわたって正確に予測できるとの前提で、この考えを支持している。
私たちは、海洋生物、化学、気候がどのように相互作用するかを研究している。沿岸生息地が地球温暖化を促すガスを吸収し(また放出する)過程を調べた結果、私たちは確信を持てずにいる。例えばマングローブを植えるなどしてこうした生息地を再生することが気候に恩恵をもたらすかどうかは、まったく確実ではない。また、排出削減効果の規模が大幅に過大評価されている現実的なリスクがある。
私たちの新たな分析では、現状で沿岸生態系による炭素蓄積量を信頼できる数値として算出するのが極めて難しい理由がいくつか明らかになった。そのため、再生プロジェクトが今後50年から100年にわたってもたらす可能性のある炭素オフセットの量を計算する根拠は非常に不確かだ。
不確実性の要因
ブルーカーボン生息地が大気中からCO₂を除去する速度の推定値には大きなばらつきがある。数百件の科学研究を比べると、塩性湿地の炭素埋没量に関する最高値と最低値には600倍、海草藻場では76倍、マングローブ林では19倍の差があった。
特定の生息地について、これらすべての研究の平均値を使うことは、新たな再生プロジェクトで期待できる炭素隔離量を推定する最も手軽な方法だ。しかし、値のばらつきが大きいため、期待される炭素オフセット量は大きく誤っている可能性がある。また、報告された値の大半は低く、ごく一部だけが非常に高いため、気候面の恩恵を過大評価する可能性がはるかに高い。
炭素除去速度の違いは、ほんの数キロメートルの距離でも見られる。信頼できる炭素会計には追加の測定が数多く必要だが、時間と労力がかかり、再生プロジェクトの費用を押し上げる。
問題はそれだけではない。研究で報告される炭素埋没速度は通常、異なる深さの堆積物を採取し、その年代を推定する間接的な方法で算出される。巣穴を掘る生物が新旧の層をかき混ぜると、堆積物が実際より新しく、炭素埋没速度が実際より大きく見えるため、年代測定に誤差が生じる。
沿岸堆積物に埋没している炭素の多くは、陸地から流出して河川で運ばれた土壌など、別の場所に由来する。外部から運ばれた炭素の割合は、わずか10%の場合もあれば90%に達する場合もある。生息地の再生によってどれだけ埋没したのか、また再生の有無にかかわらず埋没していた可能性のある量がどれほどかを明確にするため、オフセット算定に使う推定値からは外来炭素を除外すべきだ。
残念ながら、外来炭素は分解されにくい可能性がある。ある研究では、1か所の塩性湿地で堆積物表層付近に50%あった外来炭素の割合が、深い層では80%に増えていた。深い層の値は生息地の長期的な炭素埋没速度を表すため、炭素除去に対する再生生息地の直接的な貢献は、考えられていたよりずっと小さい可能性がある。
定量化が難しい他の過程によって、ブルーカーボン生息地の再生がもたらす気候面の恩恵は小さくなるどころか、大きくなる可能性もある。沿岸生息地の植物の残骸が堆積物に蓄積せず海へ流れ出ても、長期間にわたって別の場所に貯留される可能性がある。例えば、外洋の非常に深い海域まで沈むかもしれない。しかし、そうした過程に通常どの程度の炭素が関与するのかを、科学者は適切に算定できるほど把握していない。
アブラヤシ農園をマングローブ林に戻したり、沿岸地域を冠水させて塩性湿地にしたりすれば、その土地に炭素が蓄積されるはずだ。しかし、同じ土地からより多くのメタン(湿地ガスとも呼ばれる)や亜酸化窒素が放出され、強力な温室効果ガスである両者によって、気候面での純便益がなくなる可能性もある。
土壌や堆積物の酸素が不足すると、炭素の蓄積を促すのと同じ条件のもとで、これらのガスが生成されるためだ。何が起きているのかを正確に把握するには、高度な技術を要する測定が必要となる。
さらに、こうした生息地、とりわけ海草藻場には、石灰化を行う動植物が生息している。海草の帯状の葉は、殻を持つゴカイやサンゴモの白い殻に覆われていることが多い。これらの生物が炭酸カルシウムの殻を作る際、CO₂が発生する。
フロリダの水中草原では、海草自体が除去する量を上回るCO₂が放出された。別の場所では、溶存CO₂と堆積物中の炭酸塩との化学反応が起こりやすい条件が整い、その結果、炭素吸収量が増える可能性もある。ここでも、こうした影響の重要性を見極めるには、各地点で精密な測定が必要だ。
最後に、将来についても考える必要がある。再生された沿岸生態系は、熱波、暴風雨、海面上昇など、気候変動の甚大な影響に耐えられるだろうか。また、そもそも生息地の消失を招いた可能性のある農業、養殖業、観光業、その他の産業や活動の侵入を防げるよう、十分に適切な管理が行われるだろうか。
沿岸植生が世界的に失われるのを食い止め、可能な限り回復させるため、あらゆる努力を続けるべきだ。ブルーカーボン生息地は、炭素吸収源であるだけでなく、地域社会を暴風雨から守り、生物多様性や漁業の対象となる種を育み、水質を改善する役割も果たす。
ブルーカーボン生息地が将来にわたって効果的に保護され、地球温暖化がその生存にとって重大とされる、産業革命前の水準から2.3°C~3.7°Cの上昇幅の閾値を下回ることを、私たちは切に願っている。残念ながら、それは決して確実ではない。こうした気温の閾値を超えれば、植生が堆積物の侵食を防げなくなり、新たに蓄積された炭素が大気中に戻る可能性がある。
ブルーカーボン生息地による長期的な炭素除去・貯留の規模は非常に不確かであり、継続的な排出を相殺する手段として頼るのはリスクが大きすぎる。目標を達成できなかった場合の代償はあまりに大きい。したがって、最優先すべきは排出削減を一段と強化することであり、炭素除去手法は確実に機能すると見込める場合に限って、ネットゼロの達成を支援するために用いるべきだ。








