2010年、複数の民間企業が、2020年までに主要なコモディティのサプライチェーンから森林破壊をなくすという大胆な公約を掲げました。それ以来、ニューヨーク森林宣言や持続可能な開発目標を通じて、多くの企業や組織がこの取り組みに加わっています。
こうした公約の実現に向けて大きな進展があった一方、森林をめぐる見通しは厳しいものです。2016年、世界の樹木被覆損失は過去最高の2,970万ヘクタールに達しました。ニュージーランドとほぼ同じ面積に相当するこの損失は、前年より51%増加しています。評価によれば、国際社会は2020年の目標を達成できない見込みです。残された日数が1,000日を切るなか、森林問題への取り組みはかつてないほど急を要しています。
しかし、本当に問うべきなのは、なぜ森林が重要なのかということです。世界資源研究所の上級特別研究員であり、『なぜ森林なのか?なぜ今なのか?』の著者でもあるフランシス・シーモア氏に、森林破壊を食い止めるためにあらゆる努力を尽くすべき理由を聞きます。
1. 世界のリーダーたちが未来を形づくるために集うダボスに、注目が集まっています。ダボスを訪れた目的と、貢献したいことを教えてください。
森林の重要性、森林破壊を食い止める緊急性、そしてそれが実現可能であることへの認識を高めるために活動しています。2017年11月にボンで開かれた気候交渉の「森林デー」で話し合われたように、森林は気候変動におけるシンデレラのような存在です。シンデレラが暖炉の灰を片付けても家族から認められなかったのと同じように、森林は炭素を吸収して大気中の化石燃料由来の排出を取り除いています。それでも、森林保護の取り組みが受ける政治的な注目や資金は、エネルギー利用による排出削減を重視する解決策に比べ、公平な分配にはほど遠い状況です。

また、森林とダボスの主要議題である持続可能な農業や食料安全保障とのつながりを明らかにしたいと考えています。世界の気候の安定化に貢献するだけでなく、新たな科学的知見によって、近隣の農地を冷やす働きから、大陸規模の距離にわたって降雨をもたらす働きまで、森林が天候にどのような影響を与えるかが明らかになりつつあります。

ダボスに集うリーダーたちは、世界的な議題における森林の存在感を高め、世界に残された森林を守る先住民コミュニティ、NGO、公共部門の機関、そして先進的な企業に、正当な評価と資源を振り向けるうえで大きな役割を果たせます。
2. 森林はなぜ重要なのでしょうか。共に持続可能な未来を築くうえで、どのような役割を果たしますか。
森林は、気候変動に関するパリ協定の目標達成に不可欠です。問題の大きな要因であると同時に、それを上回る規模で解決策の一端を担います。熱帯林の森林破壊を一つの国にたとえるなら、気候変動の原因となる温室効果ガス排出源として、中国、米国に次ぐ世界第3位となります。地球温暖化を1.5度未満に抑えるには、こうした排出を削減しなければなりません。
また、森林は炭素回収・貯留のための安全で自然な、実証済みの唯一の技術であり、炭素排出と除去の均衡を図るうえで最も有望な手段です。森林破壊を止め、損なわれた森林の再生を促せば、あらゆる発生源からの現在の排出量を最大30%削減することに相当します。

森林がもたらす物やサービスも、国連の持続可能な開発目標の達成に大きく貢献します。森林から得られる野生の産物は重要な収入源であり、栄養源でもありますが、地域社会や国家経済に森林が提供する目に見えない生態系サービスのほうが、さらに重要な場合もあります。たとえば天然林の被覆は、頻度と勢力を増す沿岸暴風雨による風や波、豪雨による洪水や地滑りなど、気候変動の影響から人々の暮らしを守ります。

3. 何が危機にさらされているのでしょうか。政府や企業はなぜ行動を起こすべきですか。
気候変動が貧困世帯や貧しい国々に不均衡な苦しみをもたらすことは、科学的に明らかです。その苦しみを和らげる森林の可能性を生かすことは、道義的な責務です。同時に、森林は地域社会における社会正義をめぐる命がけの闘争の舞台でもあります。世界に残された森林の多くは先住民族の慣習的な領域にあり、その生計と文化的な一体性は森林の維持にかかっています。それにもかかわらず、森林破壊は増加し続けています。主な原因は、大豆、牛肉、パーム油、製紙工場向けの成長の早い木材など、世界で取引される商品を生産するための農業が、絶え間なく拡大していることです。

持続可能な土地利用を促進し、人権を守るために必要な法的・規制的枠組みを整備し、執行するうえで、政府は欠かせない役割を担います。しかし、コモディティのサプライチェーンに資金を提供したり参加したりする企業にも、変革を推進する責任があります。自社製品の調達先を問わない企業は問題の一部です。一方、サプライチェーンから森林破壊や権利侵害をなくすため、サプライヤー企業や政府と連携する企業は、解決策の一部です。
4. これまでに進展はありましたか。変化をもたらし得る新たな取り組みには、どのようなものがありますか。
希望を持てる理由は数多くあります。REDD+の枠組みに基づく政府間協力は、森林破壊や森林劣化による排出削減の成果に応じて、先進国が途上国に資金を支払う仕組みです。政治的な注目を高め、森林ガバナンスの改善に向けた経済的なインセンティブを生み出す助けとなります。
REDD+の取り組みはすでに多くの国で、森林破壊を減らすために必要な変革をめぐる重要な国内対話を促し、森林の監視能力の向上を後押ししてきました。残念ながら、REDD+への資金は依然として大幅に不足しており、森林破壊の削減に対する金銭的な報奨を得られる見込みは、森林の豊かな国々の大半で薄いままです。
技術の進歩も楽観できる理由の一つです。衛星は今や、十分な解像度と速さで伐採を検知できるため、当局は違法伐採や森林伐開の警報に即座に対応できます。こうした警報は、たとえばグローバル・フォレスト・ウォッチが提供しています。森林破壊に関するこのデータをコモディティの生産や取引に関する情報と組み合わせれば、企業や監視団体は製品を原産地まで追跡し、企業が「森林破壊ゼロ」の公約を守っているか確認できます。
最後に、社会規範も変わりつつあります。ごく最近まで先住民族の権利が公の議論のタブーだったインドネシアなどでは、ジョコ・ウィドド大統領が、かつて国有地とされていた森林地にある先住民族の慣習的領域2カ所を認めました。また、新たな森林破壊の最前線である西・中央アフリカでは、アフリカの7カ国が、世界および国内の買い手や生産者の支援を受け、持続可能なパーム油生産に取り組むことを約束しました。

5. 行動を起こす大きな機会があるようですね。2018年は何を優先しますか。
いくつかの理由から、2018年は森林の豊かな地域単位で行動に注力すべき年です。森林の豊かな国だけでなく、州や省、さらには地区も対象となります。土地利用に関する意思決定は、しばしばこの規模で行われるため、選挙で選ばれたリーダーが森林保全に取り組めるよう、政治的・経済的なインセンティブを整えることが重要です。10年前、ブラジルがアマゾンの森林破壊を劇的に減らすことに成功した事例が示すように、市場や資金への優先的なアクセスは、森林保護のための規制的な手法を補う重要な手段となり得ます。
今年は、パリ協定の目標達成に向けた「国が決定する貢献」(NDC)の野心度を高める動きが改めて重視されます。森林が持つ緩和と適応の可能性を、各国の計画に十分反映させることが不可欠です。また、2018年9月にカリフォルニア州でブラウン知事が主催する世界気候行動サミットでは、米国で見られるように国レベルのリーダーシップがない場合でも、州や地域の関係者に何ができるかが焦点となります。森林もその議題に含める必要があります。
政府、民間部門、市民社会の関係者が連携し、国より下位の地域単位で森林破壊の要因に対処することには、大きな可能性があると考えています。熱帯林アライアンス2020は、世界および各国レベルのマルチステークホルダー・フォーラムとして、すでに有用性を示しており、現在は特定の地域でそうしたプロセスを促進する支援を行っています。2018年は、その成功に向けて取り組みを一段と強化すべき年です。
コモディティ生産に起因する森林破壊を食い止めるための取り組みに関する追加情報:





