「奇跡の金属」を精製する:アルミニウムを脱炭素化する方法

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  • アルミニウムは汎用性、強度、品質、リサイクル性が高く評価されている一方、エネルギー集約型の加工によって人為起源の排出量の約2%を生み出している。

  • 地球上で最も排出量の多い産業の脱炭素化を支援するために設立された、世界経済フォーラムのファースト・ムーバーズ・コアリション(FMC)のメンバーは、2030年までに毎年調達する一次アルミニウムの少なくとも10%を、排出量をほぼゼロにする製造プロセスで生産することを約束している。

  • アルミニウムの需要増加が見込まれるなか、いくつかの技術を組み合わせることで、アルミニウム脱炭素化に向けた野心的な目標を達成できる。

アルミニウムは「奇跡の金属」と評されてきた。地殻中で最も豊富な金属である一方、精錬の複雑さから、19世紀には銀や金よりも貴重な金属とされていた。ナポレオン3世はそれほど高く評価し、最も敬意を払う客にはアルミニウムの皿で料理を出していた。今日も高価値の素材であり、軽量で汎用性に優れ、軍事用途にも耐える強度と耐食性を備え、無限にリサイクルできることから重宝されている。

では、欠点は何だろうか。原料のボーキサイト鉱石を純粋な金属に変える一連のエネルギー集約型プロセスでは、平均して一次アルミニウム1トンの生産につき、CO2を16トン排出する。業界全体では年間約11億トンのCO2を排出し、世界の人為起源排出量の2%を占める。このうち60%超は、消費される電力の発電に由来するもので、これは製錬工程で使われる。

さらに、輸送、建設、包装、電気産業などの需要に支えられた「奇跡の金属」の需要は、2030年までに約40%増加すると予測されている。この増加分の3分の2は中国とアジアで見込まれる。中国の製錬工程が自家用の石炭火力発電所に大きく依存していることを考えると、これは懸念材料だ。リサイクルと脱炭素化が進まなければ、同業界の排出量は2050年までに20億トン近くに達する可能性がある。

ファースト・ムーバーズ・コアリションが掲げる厳しい目標

アルミニウムをクリーンにする可能性を秘めた新技術はいくつかあるが、最も野心的なものだけが、世界経済フォーラムのファースト・ムーバーズ・コアリション(FMC)が掲げる厳しい目標を満たす。FMCは、企業の購買力を活用し、地球上で最も排出量の多い産業の脱炭素化を目指す世界的な取り組みだ。FMCのメンバーは、2030年までに毎年調達する一次アルミニウムの少なくとも10%を、排出量をほぼゼロにする製造プロセスで生産するという目標を約束している。「ほぼゼロ」の定義が難しい点だ。一次アルミニウム1トン当たりのCO2排出量を3トン未満にすることを意味する。これは現在の排出量から85%以上削減することに相当する。

このような大幅な脱炭素化を実現する方法を理解するため、アルミニウムの製造工程を手短に見てみよう。原料のボーキサイトは地中から採掘され、約1,000℃まで加熱する工程を含む複数段階のプロセスを経て、酸化アルミニウム、すなわち「アルミナ」に精製される。この熱を得るため、多くの精錬所では現地で化石燃料を燃やし、その過程で大量のCO2を排出する。第2の工程である製錬では、電気分解によってアルミナを純粋なアルミニウム金属に変える。この工程では大量の電力を使い、炭素陽極からも大量のCO2が排出される。

水力や太陽光など既存の再生可能エネルギーを使えば、アルミニウムの排出量ゼロに向けた道のりの約3分の2まで進める。

ラモン・アラティア、ボール・コーポレーション グローバル副社長兼最高サステナビリティ責任者|ナンシー・ギリス、世界経済フォーラム 気候行動・ファースト・ムーバーズ・コアリション プログラム責任者

朗報は、水力や太陽光など既存の再生可能エネルギーを使えば、アルミニウムの排出量ゼロに向けた道のりの約3分の2まで進めることだ。ボーキサイト鉱石をアルミナに精製する際に使う新しい電化ボイラーや焼成炉、そして電力を大量に消費する製錬工程にも、クリーンエネルギーを利用できる。ただし、短期的には費用がかさむ可能性がある。再生可能電力を利用できる場所へ工場を移転し、新しい設備を導入するために精錬所を改修する必要がある。

既存のアルミニウム工場に導入できる新興技術のなかには、排出量ゼロのアルミニウムに向けた隔たりを縮めるものがある。炭素陽極を、CO2の代わりに酸素を排出する不活性陽極に置き換えれば、製錬工程を完全に脱炭素化できる。「機械式蒸気再圧縮」と呼ばれるプロセスでは、精製に必要な熱エネルギーを放出せずに再利用できる。残る排出量に対しては、炭素回収・利用・貯留(CCUS)などの技術を使って、精製工程と製錬工程の両方からの排出を回収できる。こうした画期的な技術をいくつか組み合わせれば、アルミニウムの製造工程全体で、一次アルミニウム1トン当たりのCO2排出量を3トン未満に抑えられる。

FMCに参加する他の多くの業界と異なり、アルミニウムは無限にリサイクルできるとされることから、リサイクルは同業界の脱炭素化に向けた取り組みで大きな役割を果たせる。リサイクルに必要なエネルギーは、新しいアルミニウムの製造に必要なエネルギーの約5%で済むため、商業面でも環境面でも理にかなっている。アルミニウムの再溶解はすでに大規模に普及しており、現在ではリサイクルアルミニウム3,000万トン超が毎年、新たな製品に再び使われている。また、回収、選別、リサイクルは新たな雇用を生み出す可能性があり、一次アルミニウム生産を支えるために必要な天然資源の採掘を減らせるため、公正な移行にも貢献できる。

そのためFMCは、メンバーが2030年までに毎年使用するアルミニウムの少なくとも50%をリサイクル材にするという追加目標を定めた。しかし、リサイクルだけでは金属への世界的な需要の高まりを満たせない。実際、ミッション・ポッシブル・パートナーシップが発表した、1.5℃目標に整合する移行戦略によると、リサイクルで供給できるのは2050年に見込まれる需要の半分にすぎない。そのため、一次アルミニウムの生産を可能な限り排出量ゼロに近づけることが、引き続き最優先課題となる。

アルミニウム脱炭素化に向けた技術的解決策はすでにある

アルミニウム生産を脱炭素化する技術は試作品として存在するかもしれないが、規模拡大に至っていない他の新技術と同様、費用がかかる。商用化は難しく、課題はコストだけではない。アルミニウムのバリューチェーンは複雑で長い。

例えばビール缶は、通常50%超がリサイクルアルミニウムで作られているが、それでも一次アルミニウムが必要だ。まずボーキサイトを採掘し、アルミナに精製する。多くの場合、別の場所へ運ばれ、純粋なアルミニウムに製錬される。その後、金属は板やコイルに加工され、企業が購入して缶の形に打ち抜く。缶は飲料会社や瓶詰め業者に販売され、小売業者に配送されて、ようやく消費者の手に渡る。この長いサプライチェーンは、買い手の規模によってさらに複雑になる。自動車メーカーや政府調達機関などの大口の「アンカーバイヤー」がいる鉄鋼やコンクリートとは異なり、アルミニウムは多くの事業者が少量ずつ購入する。鉱山会社から飲料小売業者まで、関係するすべての事業者が、脱炭素化の目標と費用を共有するために足並みをそろえなければならない。

ボール・コーポレーションは、アルミニウム包装の大手メーカーでありFMCのメンバーでもある。同社は、バリューチェーンのパートナーとの連携に向け、先陣を切った。同社はアルミニウム供給業者でありFMCのメンバーでもあるノベリスおよびリオ・ティントと協力し、カナダ初の低炭素飲料缶として特別表示を施した製品をコロナビール向けに製造した。この缶はリサイクルアルミニウムの一部に加え、水力発電を利用して精製し、「Elysis」と呼ばれる温室効果ガスを排出しない不活性陽極技術を用いて製錬した、排出量がほぼゼロの一次アルミニウムを使用している。この画期的な成果は、競合するアルミニウム業界の2大企業、アルコアとリオ・ティントによる前例のない協力に加え、アップルからの1,300万カナダドルの投資と技術支援、さらにカナダ政府とケベック州政府からそれぞれ8,000万カナダドルの追加投資を得て実現した。Elysisはまだ試作段階だが、チームは2024年までに商用化を目指している。

FMCのような連合を通じてバリューチェーンの足並みをそろえることは、脱炭素化の取り組みに不可欠だ。バリューチェーン内の連携がなければ、需要のシグナルが生産者に変化を促さない可能性がある。こうした連合は、リサイクル政策の強化から研究開発への共同投資まで、さまざまな課題について政府との対話を深めることにもつながる。

画期的な技術を組み合わせて使えば、アルミニウムの製造工程全体で、一次アルミニウム1トン当たりのCO2排出量を3トン未満に抑えられる。

ラモン・アラティア、ボール・コーポレーション グローバル副社長兼最高サステナビリティ責任者|ナンシー・ギリス、世界経済フォーラム 気候行動・ファースト・ムーバーズ・コアリション プログラム責任者

一次アルミニウムの精製と製錬の脱炭素化を促すうえで、政府は重要な役割を担う。中東には豊富な太陽光発電の潜在力を生かす機会がある。中国では、石炭火力を使う精錬施設の一部を閉鎖し、水力発電が豊富な地域に新工場を開設するなど、望ましい方向への動きが見られる。しかし、政府は業界に直接的な財政支援を行う必要もあるだろう。追加の再生可能電力、CCUS、不活性陽極を軸とした製錬工程の再設計など、アルミニウム脱炭素化に必要な新技術には、2050年までに約1兆ドルかかる。そのため、各国政府はインセンティブ、投資、市場ベースの措置を通じて介入する必要が生じる可能性が高い。低炭素への移行に不可欠なリチウムや銅などの素材生産には、すでに政府補助金が投入されている。輸送やバッテリー技術など他の部門の脱炭素化を支える役割を考えれば、アルミニウムも同様の支援を受けるべきだ。

欧州では、欧州連合(EU)が提案する炭素国境調整メカニズム(CBAM)が、単一市場への輸出を目指すアルミニウム供給業者に警鐘を鳴らしている。2030年までにCBAMは、輸入製品や素材に含まれるCO2 1トン当たり100ユーロの課税を課す可能性があり、EU域内の生産者に排出量取引制度(ETS)が課す費用に合わせる仕組みとなる。CO2排出量がアルミニウム1トン当たり16トンの場合、金属のコストは60%上昇する可能性がある。こうした制度は、商用化された後に脱炭素化済みのアルミニウムが継続的に競争できるよう後押しする可能性がある。一方、画期的な技術への政府直接投資というモデルは、民間資金を呼び込み、脱炭素化への道筋のリスクを軽減するために必要となる可能性がある。

同業界は、必要な供給を実現するため、初期段階にある排出量ほぼゼロの生産を拡大しようと時間との競争に直面している。企業は明確なリーダーシップを発揮し、2050年までのネットゼロ達成に向けて業界の足並みをそろえるために必要な、大幅な脱炭素化技術の導入を支援する必要がある。追加費用は発生するが、FMCのような連合は、その費用への対処に必要な透明性と協力関係の構築に役立つ。実現に必要な技術はすでにある。それを祝うなら、グラスを掲げるのもよいが、低炭素ビール缶を掲げるのもふさわしい。

ジョナサン・ウォルターとアンドリュー・アルコータが本記事の執筆に協力した。

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