ティロス島やパロス島などのギリシャの島々では、ゼロ・ウェイストと炭素排出削減に向けた取り組みが加速している。ギリシャはEUの厳しいリサイクル目標に追いつこうとしている。
ティロス島はごみの最大86%をリサイクルし、埋め立て地を閉鎖した。
リサイクルは炭素とメタンの排出を削減し、埋め立て処分や焼却より多くの雇用を生み出す。
しかし、大都市では、より多くの住民を巻き込むことが課題となる。
小さなギリシャの島、ティロス島がリサイクルで名を知られるようになる前、タベルナ(ギリシャの居酒屋)の経営者アリストテレス・ハジフォンダスは、店のごみを通りの先にある市のごみ箱に捨てるたび、地元の埋め立て地に運ばれることを知っていた。
ギリシャ南岸沖に位置するこの島では、1960年に近隣の島々から船で包装済み商品が運ばれ始めて以来、ごみ処分場が島の景観を損なう問題として深刻化していた。現在の人口は500人だ。
それから60年後の昨年12月、島は汚染問題の解決に向けた大規模なキャンペーンを開始した。当局によると、現在、ごみの最大86%をリサイクルしており、これはギリシャで過去最高の割合で、埋め立て地は閉鎖されている。
ハジフォンダスは、ごみを3つの箱に分別する習慣が身につくまで、わずか1カ月しかかからなかったと語った。1つ目は生ごみ、2つ目は紙、プラスチック、アルミニウム、ガラス、3つ目はそれ以外のすべてを入れる。
「埋め立て地を閉鎖したのは正しい解決策でした」と、彼はトムソン・ロイター財団に語った。「恒久的で、より環境に配慮した答えが必要です」
ティロス島のごみ削減の成功は、島々の間の競争ともいえる状況で同島を先頭に押し上げている。ギリシャが欧州連合(EU)の定める厳しいリサイクル目標の達成を目指して追い上げる一方、世界各地の機関、企業、政府が温室効果ガス排出の抑制に向けてゼロ・ウェイスト政策を採用している。
「私たちは競争に勝つ方法を知っています」と、ティロス島の副市長スピロス・アリフェリスは語った。「しかし、これは短距離走ではありません。これは第一歩であり、簡単ではありません」
島の実績は、ギリシャ全体の状況とは対照的だ。2019年、同国がリサイクルまたは堆肥化した自治体ごみはわずか5分の1で、EU統計局が順位付けした27カ国中24位だった。
これは、自治体ごみの重量ベースで、2025年までに55%、2035年までに65%をリサイクルするか、再使用に向けて準備するというEUの目標にはほど遠い。
ギリシャは、使い捨て文化への対策として、店舗に客への料金請求を義務付けるなど、いくつかの措置を講じてきた。対象は使い捨てプラスチック袋。
それでも「ここではリサイクルや再利用に関して、かなり遅れています」と、ギリシャ北部にあるトラキア・デモクリトス大学で固形廃棄物管理を教えるディミトリオス・コミリス教授は語った。
リサイクルは、原材料を使った新製品の製造需要を減らすことで、地球温暖化を促す排出を削減できる。原材料の採掘は炭素排出量が多いと、コミリスは付け加えた。
埋め立て地をなくせば、メタンの放出も抑えられる。メタンは、食品などの有機物や植物が埋め立て地に埋められ、酸素の少ない環境で腐敗する際に発生する、もう一つの強力な温室効果ガスだ。
環境保護団体は、廃棄物関連の取り組みは、埋め立て処分や焼却より多くの雇用を生み出せると指摘する。ごみの収集、分別、リサイクルには、より多くの労働力が必要だからだ。
しかし、ゼロ・ウェイストの実現は、ティロス島のやり方に倣うほど単純ではない。地域や都市ごとに、ごみの発生状況も処理方法も異なると、ウィーンの社会生態学研究所で持続可能な島への移行を研究するドミニク・ノル氏は語った。
「技術的な解決策は規模を拡大できますが、社会経済的、社会文化的な背景は常に異なります」と、同氏は語った。
「ごみの削減や処理に向けた解決策を実施するには、どのプロジェクトや計画も、こうした背景に注意を払う必要があります」
価値の高いごみをリサイクル
ティロス島は、ギリシャの環境への意欲を試す場として評価を築いてきた。1993年にはギリシャの島として初めて狩猟を禁止し、2018年には地中海で初めての島々の一つとして主に風力と太陽光で電力を賄うようになった。
「Just Go Zero」プロジェクトで、島はピレウスを拠点とする企業ネットワーク、ポリグリーンと連携した。同社は、サプライチェーンから廃棄物と汚染をなくすことを目指す循環型経済の推進に取り組んでいる。
週に数回、ポリグリーンは地元の作業員十数人を派遣し、家庭や事業所を一軒ずつ回ってごみを回収し、その後、手作業で選別する。
ポリグリーンの事業を設計したコンサルタントのアントニス・マヴロプロスは、リサイクルを成功させる「秘訣」は、ごみの市場価値を最大化することだと語った。
「分別すればするほど、素材の価値は高まります」と同氏は語り、ティロス島で回収されたごみはアテネのリサイクル会社に販売されると説明した。
6月のある朝、作業員たちはティロス島の乾燥した山地にある、使われなくなった埋め立て地の隣に建つポリグリーンのリサイクル施設で忙しく動き回っていた。
作業員たちは色とりどりのごみを手早く25種類に分別した。バイオディーゼルになる使用済み植物油から、堆肥化や防音材などへの加工のために解体されるたばこの吸い殻まで、さまざまだった。
有機廃棄物は堆肥化される。一方、医療用マスクや使用済みナプキンなど、リサイクルできないごみはポリグリーンが細断し、本土のセメント産業向けの固形回収燃料にする。
これまでに自治体の固形廃棄物100トン超が選別された。これは大型のアフリカゾウ約15頭分の重さに相当すると、プロジェクトマネジャーのダフネ・マンツィウは語った。
プロジェクトの立ち上げ費用は25万ユーロ(255,850ドル)未満だった。ポリグリーンの資料によると、運営費は通常の自治体ごみ管理業務の費用と、ギリシャが1月に導入した埋め立てごみ1トン当たり20ユーロの新税を合わせた額を超えない。
ギリシャの自治体10カ所超と小国数カ国が、プロジェクトの複製に関心を示していると、詳細の公表を控えた同社広報担当者のエリ・パナギオトプロウは語った。
無駄にしている時間はない
ティロス島の成功をより大きな規模で再現するのは難しいかもしれないと、持続可能性を研究するノル氏は語った。
大都市にはごみを効率よく処理する資金やインフラがあるかもしれないが、重要な行政担当者や数百万世帯を巻き込むのは、より困難な取り組みだと同氏は語った。
「規模の小さい自治体のほうが、人々とより個人的なレベルで関わるのはずっと簡単です」とノル氏は語った。
ティロス島の約200キロ(124マイル)北西に位置するパロス島が、ごみ問題の改善に乗り出した際、都市規模の課題に取り組むことになったと、英国を拠点とする社会的企業コモン・シーズが運営する「クリーン・ブルー・パロス」イニシアチブの責任者、ザナ・コントマノリは語った。
人口約12,000人の島は、観光シーズンになると数十万人の観光客が訪れ、ごみが5,000%増加する。その中には年間450万本のプラスチックボトルも含まれると、コントマノリは語った。
これを受け、コモン・シーズは2019年、ボトル入り飲料水の消費を抑える島全体のキャンペーンを開始した。これは、同団体が手がけるプラスチック汚染対策プロジェクトの一つだ。
街頭の横断幕やフェリーの画面表示を使い、地元の水は飲用に適さないという、よくある誤解を解くことを目指した。
島の水道水は飲めないと思っている観光客の割合は、その後100%から33%に低下したと、コントマノリは語った。
「プラスチックボトルが島に持ち込まれるのをそもそも防げるなら、リサイクルするよりよい解決策だと考えています」と、同氏は語った。
大きな目標を掲げるもう一つの廃棄物対策団体が、非営利組織「持続可能なギリシャの島々のためのDAFNIネットワーク」だ。同団体は昨夏から、電気自動車で作業員を派遣し、キトノス島でリサイクルと再利用を目的にごみを回収している。
プロジェクトマネジャーのデスピナ・バコギアンニは、かつてこの取り組みは「ギリシャの島で実施された史上最大の技術革新プロジェクト」とうたわれたと語った。しかし、ゼロ・ウェイストを目指す競争は今や熱を帯び、すでにさらに野心的な計画が進んでいる。
その一つが、DAFNIがギリシャの5つの島やアテネなど本土の複数地域とともに参加する、新たな1,600万ユーロの取り組み「CircularGreece」だ。いずれも、再利用とリサイクルを拡大し、再生可能エネルギーの利用を増やすことを目指す。
「これはギリシャ最大の循環型経済プロジェクトになります」と、バコギアンニは語った。








