湿り気を帯びた空気。葉は落ちても、春のように柔らかく、
そして夢見る尖塔を抱く、あの愛らしい街は、
美しさを高めるのに六月を必要としない……
マシュー・アーノルドが1865年に有名な詩句でオックスフォードについて詠んだとき、「湿った空気」の原因を人為的な汚染に求めたとは考えにくい。
しかし、世界保健機関(WHO)から英国で大気の質が最も悪い12都市の一つに挙げられた後、市当局はオックスフォードを世界初の「ゼロエミッション区域」にする野心的な計画を発表した。
ロンドン、スコットランドのグラスゴー、ウェールズのポート・タルボットも、空気がひどく汚染された英国の地域としてリストに挙がった。

オックスフォードの大気を浄化する
オックスフォード当局は、「市内の一部地域では、大気汚染が法定基準を超えたまま横ばいになっているようだ」と述べた。また、英国が欧州連合(EU)を離脱する決定をしたにもかかわらず、英国の地方自治体は大気質改善に関するEUの2020年目標を達成することを目指していると付け加えた。
大気質は、工業由来、自動車の排出、山火事、ごみの焼却などによって生じる微小粒子状物質PM10の濃度を測定して評価される。
10月、自治体の指導者らは意見募集を発表し、2020年から排出ガスを出さない車両の導入を段階的に進め、2035年までにオックスフォードを完全なゼロエミッション都市にする計画を示した。
政府はすでに、市内のタクシーや一般車両向け充電設備の整備に数十万ポンドを拠出すると約束しており、市議会の指導者らは計画を全面的に実施するため、追加資金を求めている。

市議会は、計画を実施すれば「オックスフォード中心部の大気汚染レベルを、背景濃度に近い水準まで下げられる」と述べた。「例えば、市内で最も汚染のひどいジョージ・ストリートでは、2035年までに有害な二酸化窒素の濃度が74%低下すると見込まれる。」
健康、富、そして大気の質
ガソリン車やディーゼル車の排出ガスは病気や早死にを招き、個人に苦痛をもたらすだけでなく、国の生産性に影響し、国内総生産(GDP)を押し下げ、人々の生活水準にも影響する。
都市の大気汚染を減らそうとする動きは英国に限らない。国連の推計では、都市部に住む世界人口の割合は2014年の54%から2050年までに66%へ上昇する。富がますます都市で生み出されるようになるため、都市は労働者の健康を確保する必要がある。
標準的なガソリンより多くの粒子状物質を排出するディーゼル車は、最も大きな汚染源の一つだ。ある研究は、2013年の早死にを調べ、ディーゼル車の排出量がガソリン車と同じだったなら、EU加盟国での死亡者数はもっと少なかっただろうと示唆した。

一方、10月にランセット誌に掲載された研究によると、2015年には汚染が疾病と早死にの最大の原因となり、世界全体の死亡者数の16%にあたる約900万人が亡くなった。研究は、この数はエイズ、結核、マラリアを合わせた死亡者数の3倍、あらゆる戦争やその他の暴力による死亡者数の15倍にのぼるとした。
汚染に関連する死亡者数は約8%、5万人と推定され、調査対象の188か国中、英国は55位だった。米国や多くの欧州諸国を下回る順位である。
パリ、マドリード、アテネなどは、2025年までに実施されるディーゼル車の禁止を発表している。シュトゥットガルトは2018年から禁止する計画だ。一方、英国は2040年までにすべてのガソリン車とディーゼル車を禁止すると発表している。
しかし、英国のシンクタンク、公共政策研究所で交通を専門とする上級研究員ローリー・レイボーン=ラングトンは、大気汚染の主な原因であるディーゼル車とガソリン車をすべてなくしても、都市から粒子状物質をなくすことはできないと述べた。「タイヤやブレーキからも粒子状物質が発生します」とし、その一部は「血流に入り込むほど小さい」と付け加えた。
きれいな空気をめぐる世界的な「軍拡競争」
大気汚染の削減は、政策立案者、経済、自動車メーカーにとって重要な意味を持つ。フィナンシャル・タイムズが9月に掲載した記事は、都市が成長するにつれ、交通に関しては市長や市議会議員の権限が中央政府に匹敵するようになる可能性を示唆した。
従来型の自動車メーカーは、排出削減政策や自動車保有台数の減少予測に適応しなければならないと認識している。ボルボ、テスラ、BMWなどの企業は、電気自動車や自動運転車の開発を急いでいる。
レイボーン=ラングトンは、都市が汚染のない空気を実現するには、段階的に取り組む必要があると述べた。
第1段階はディーゼル車とガソリン車をなくすこと、第2段階は公共交通の改善に公的資金を投入すること、第3段階はテクノロジーをより有効に活用することだという。最後の段階では、カーシェアや経路案内型のアプリを増やし、人々が車を見つけて借り、スマートフォンで解錠したり、目的地までの別の移動手段を探したりできるようにする。
重要なのは、車両の利用状況を追跡するテクノロジーだ。そうすれば、人々は車がどこにあり、いつ利用可能になるかを把握できる。レイボーン=ラングトンが指摘するように、ほとんどの車両は稼働期間の90%を使われずに停まっているため、こうした仕組みによって保有する車をより有効に活用できる。
Skypeなどのデジタルメッセージ通信をさらに活用すれば、移動の必要性も減らせるかもしれない。
レイボーン=ラングトンは、大気汚染をめぐる悪評が世界各国を結束させ、有害物質の濃度削減を目指す、彼の言う「軍拡競争」へと駆り立てているとも述べた。
英国が欧州連合(EU)離脱に向かうなか、オックスフォードが世界初のゼロエミッション都市になれば、「ブレグジット後の英国にとって非常に大きなプラスになる」と彼は言う。
そして2035年までにオックスフォードの汚染が減り、街路が静かになれば、住民は再び、夢見る尖塔を囲む湿り気を帯びた空気を、健康で穏やかに楽しめるかもしれない。





