エコ不安を自然に対する大胆な行動へと変えるには

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  • 現代の経済モデルの多くは、自然資本の枯渇を考慮できていません。

  • 『ダスグプタ・レビュー』によると、1人当たりの自然資本はわずか30年間で40%減少しました。

  • 私たちは今、自らの力を生かし、自然の回復を中核に据えた新たな経済モデルを再構想できる転換点に立っています。

自然とは複雑で、しばしば誤解される言葉です。たとえば、パリの女性実業家にとっての「自然」の意味は、アマゾンの先住民コミュニティの一員が自然とどう関わるかとは大きく異なるでしょう。それは、自然に対する私たちの姿勢や関わり方が何世紀にもわたって変化してきたのと同じです。

こうした違いはあっても、私たちは皆、自然資本を枯渇させ、地球が私たちの暮らしを支える能力が損なわれつつあるという事実を受け止めなければなりません。何十年もの間、私たちは、きれいな空気や水、受粉など、経済、社会、個人の幸福に直接・間接に貢献する天然資源や生態系サービスに依存してきました。『ダスグプタ・レビュー』によると、1人当たりの自然資本はわずか30年間で40%減少しました。

科学的知見もこれを裏付けており、警告はますます深刻さを増しています。地球システム全体の安定を保つうえで重要な「プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)」9項目のうち、すでに6項目を超えました。これらの限界を超えると、地球が私たちの知る生命を支える能力が脅かされます。『2023年気候の現状報告書』は、地球の35の重要指標のうち20で記録的な極端値が観測され、私たちが「未知の気候領域」に入ったことを示唆しています。また、2023年には月間の地表気温が観測史上最高を記録しました(地球が過去10万年で最も暑かった可能性があります)。

確かなデータに裏付けられた証拠は明白です。経済と社会の根本を大きく見直さなければ、2100年までに30億から60億人が地球の居住可能地域の外で暮らすことになるかもしれない、と警告されています。

しかし、こうした事態は本当に実感されているでしょうか。否認から抜け出したとしても、エコ不安と結び付けて語られることの多い、圧倒されて行動できなくなる状態に陥るのでしょうか。これは二者択一ではないと私は考えます。事実を認める責任を果たすと同時に、変化を示す数多くの小さな兆しに目を向ければ、生命を支えるシステムとの関わり方が変わる、その転換点に私たちがいると気付くかもしれません。

意識の変化

自然について新たに語り合う機が熟しています。自然への依存をより深く理解し、自然資本を適切に評価し、その保護と回復に真の責任を持ち始めるための対話です。

保全活動家のデイビッド・アッテンボロー卿やジェーン・グドールのような人々が、意識の変化への道を切り開いてきました。若者の運動や草の根の取り組みがそれを後押しし、政治や企業の説明責任、世代間の公平性を求める声を強めています。先住民族はついに、地球の陸地の20%を守り、地球上の生物多様性の80%を擁するうえで果たす重要な役割を認められつつあります。

国際的には、画期的な宣言や枠組みがいくつも誕生しています。森林と土地利用に関するCOP26グラスゴー首脳宣言、昆明・モントリオール生物多様性枠組み、国家管轄権外区域の海洋生物多様性保護を目指す「公海条約」、有害な漁業補助金の廃止を目的とするWTO漁業補助金協定などです。こうした動きと並行して、複数国間および地域間の協力も拡大しています。その一例が、G20と連携するOcean 20の取り組みです。世界の主要かつシステム上重要な経済圏の企業や政策立案者の間で、持続可能で包摂的な海洋の実現を促しています。

こうした活動が各国の政策に反映されつつある兆しも見られます。自然資本の価値評価を主流に取り入れ、自然にプラスの影響をもたらす行動を促す枠組みやインセンティブを導入する国が増えています。インドは2023年度予算で、環境(保護)法に基づく持続可能な取り組みを企業、自治体、個人に促すインセンティブを提供するグリーン・クレジット制度を発表しました。また昨年、オーストラリアでは、保全と回復の目標に向けて民間資金を呼び込むことを目指す自然修復市場法案が提出されました。

信頼できる自然戦略

現代経済を支える経済モデルは、自然資本の枯渇を考慮せず、進歩を歪んだ形で評価してしまうため、もはや十分ではないとの認識が広がっています。こうした認識は、企業のリーダーたちの活動にも徐々に反映されています。企業のレジリエンスと長期的な存続可能性を確保するには、気候目標と並行して包括的な自然戦略を採用する必要があるという意識が高まっています。

世界経済フォーラムのネイチャー・ポジティブ・ピラーを通じて、私たちはブルーカーボン・パートナーシップ、漁業サプライチェーンの変革、1t.org(1兆本の植樹イニシアチブ)など、多様な分野で関係者の行動を促してきました。また、企業に信頼できる自然戦略の策定を呼びかける「Now for Nature」キャンペーンも支援しています。

同時に、何千人もの環境起業家が、自然の保全と回復を事業モデルの中核に据えています。UpLinkは、世界で最も差し迫った課題に対する革新的な解決策を発掘する世界経済フォーラムのデジタルプラットフォームです。このプラットフォームを通じて、森林と海洋の生態系の保全・回復に取り組む270人以上のイノベーターからなるコミュニティを築いてきました。

世界経済フォーラムは自然のために何をしているのか?

自然・気候センターは、気候、自然、経済発展の相互関係をリーダーが理解するための支援を行っています。また、地球の限界の範囲内でレジリエンスと繁栄を支える道筋を探る場を提供しています。

分野や地域を越えた協力を促すことで、同センターは、共通の理解を具体的な気候・自然ソリューションへとつなげるパートナーを支援しています。

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世代ごとに物語は形を変えます。しかし、自然との関係における自分たちのあり方について考え方を変えなければ、未来の世代は自らの物語を語る機会を得られないかもしれないという段階に、私たちは達しています。問うべきは、十分な速さで進んでいるかどうかです。それ以上に重要なのは、十分に大胆かどうかです。私たちは、これまで条件付けられてきた考え方を捨てられるでしょうか。自ら築いてきた社会経済システムの根本を問い直し、形を変える勇気があるでしょうか。

人間としての立場や役割について支配的だった考え方が変わるなか、自然界と調和して生きる方法への新たな認識が生まれています。私たちには行動する力があり、その責任もあります。そして今、自然の回復を中核に据えた新たな経済モデルを再構想するために、自らの力を生かせる転換点に立っています。

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