土壌の再生は気候変動への対策に役立つ

Farmer Isabel Milligan drives a tractor as she weeds and transplants crops on the farm in Amagansett, New York, U.S., July 11, 2019. Picture taken July 11, 2019. REUTERS/Lindsay Morris - RC1B9CA1E620
Restoring soil health would help mitigate the effects of climate change.Image: REUTERS/Lindsay Morris
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土壌を真剣に考えるべき時です。気候変動に関する政府間パネルが最新の報告書で非常に高い確信度で述べているように、土地劣化は人類が直面する「最大かつ最も差し迫った課題の一つ」です。

この報告書は、気候変動が食料生産に及ぼす潜在的な影響を評価し、大気中の二酸化炭素濃度の上昇によって作物の収量が減少し、食料の栄養価が低下すると結論づけています。

気候災害を回避するには、農業と土地利用を変える必要があると、報告書は警告しています。つまり、社会を化石燃料から脱却させるだけでは、もはや十分ではありません。気候を安定させるには、大気中から炭素を除去することも必要です。人類と土壌との関係を見直すことは、その両方に役立ちます。

土壌侵食や養分の枯渇などの脅威により、世界の土壌は急速に劣化しています。しかし、持続可能な慣行と技術によって、この傾向を逆転させることができます。

危機にさらされる土壌

健全で肥沃な土壌には、植物が光合成によって大気中から取り込んだ炭素を含む有機物が豊富にあります。炭素に富む有機物は、ミネラル成分を循環させて放出する土壌生物のエネルギー源となり、植物はそれらを養分として再び吸収します。

しかし、土壌も炭素を放出します。現代の慣行農業を支える頻繁な耕起と大量の肥料使用は、土壌有機物の劣化を加速させ、はるかに多くの炭素を大気中へ放出してきました。その量は、実のところ相当なものです。

新たなIPCC報告書は、世界全体で、耕作地の土壌が元々含んでいた有機炭素の20~60%を失ったと結論づけています。北米の農地では、土壌炭素の自然な蓄積量の約半分が失われました。こうした損失に加え、現代農業は、荒廃した土壌から豊かな収穫を得るために農家が頼るトラクターの燃料や合成窒素肥料の製造に、多くの化石燃料を消費しています。

土地管理の選択は、樹木や植物、土壌に蓄えられる炭素量にも影響します。新たなIPCC報告書は、森林破壊を抑え、土壌管理を改善するために林業と農業を大きく変えることで、世界の排出量を5~20%削減できると推計しています。これだけで気候問題を解決することはできませんが、世界的な解決に向けた重要な先行投資となるでしょう。

炭素を蓄える農業

土壌再生への投資は、ほかの恩恵ももたらします。IPCC報告書の重要な指摘の一つは、慣行的に耕起された土壌は、形成される速度の100倍を超える速さで侵食されるということです。この憂慮すべき結論は、10年前に土壌の形成と損失の速度に関する世界のデータをまとめた際に私が得た知見を裏づけ、さらに明確にしています。私の著書『土:文明の侵食』は、古代ギリシャやローマから1930年代の米国のダストボウルに至るまで、土壌劣化が世界各地の社会をいかに弱体化させたかを伝えています。

現在、人類は世界の表土のおよそ3分の1を劣化させており、約32億人、つまり人類の3分の1を超える人々が、すでに被害を受けています。この道を進み続けても、増え続ける世界人口を養う見通しは明るくありません。

もし、方向を転換して土壌有機物を再生し、農家が必要とするディーゼル燃料や化石燃料由来の化学肥料を減らせるとしたらどうでしょうか。それによって、土壌により多くの炭素を蓄え、食料を育てる過程で大気中に放出される炭素量を減らすことが可能になります。

私の著書『革命を育てる:土壌に生命を取り戻す』の調査を通じて、先進国と途上国の双方で、再生型農業が土壌有機物を回復させる可能性を実感しました。この本では、再生型農法によって農家が高価な肥料や農薬の使用を減らせることを取り上げています。

私が取材した農家には、共通する点が三つありました。彼らは耕起から、土壌への撹乱を最小限に抑える不耕起農法に切り替え、被覆作物を植え、販売用作物と被覆作物を多様に組み合わせて栽培していました。家畜を活用して炭素に富む土壌を再生する再生型放牧を取り入れている農家もいました。彼らの成果から、土壌の健全性を高める農業や牧畜の慣行は、土壌劣化を迅速に、しかも収益を上げながら逆転できると分かりました。

移行する価値

再生型農業システムの導入を妨げる要因には、習慣の力、新しい慣行に関する知識の不足、移行期における現実的または認識上の経済的リスクがあります。しかし、健全で肥沃な土壌を再生する利点は明らかです。

2018年の国連報告書は、世界の土地劣化を検証し、土地再生の経済的便益は費用の平均10倍に上るとしています。肥沃な土壌の再生は、アフリカの飢餓と栄養不良に対処する有望な方法の一つでもあります。同地域では、土地劣化対策を怠った場合の費用は通常、問題への対処にかかる費用の3倍に上ります。

土壌の健全性を回復すれば、気候変動の影響を緩和できます。土壌中の有機物を増やすと、水を保持する力が高まります。また、土壌構造を改善すれば、より多くの雨水が地中に浸透し、作物をよりよく育てることができます。特に干ばつの影響を受ける年には効果があり、下流域の洪水を減らす助けにもなります。気候への恩恵に加え、肥料の使用を減らすことで、農地外への水質汚染も減少します。

土壌づくりを重視する再生型の慣行は、ほかの恩恵ももたらします。例えば、2006年のある研究は、ラテンアメリカ、アフリカ、アジアの286の開発プロジェクトを対象に、投入資材を抑え、資源を節約する農業慣行を調査しました。これらのプロジェクトでは、窒素固定と侵食防止のために被覆作物を活用し、家畜を農業システムに再び組み込んでいました。多種多様なシステムと作物で、収量が平均約80%増加したことが分かりました。こうした結果は、土壌づくりへの投資が、温暖化する世界の食料供給に役立つことを示しています。

ジョン・F・ケネディ大統領が月を目指す国家的取り組みを呼びかけたとき、米国は10年足らずで不可能と思われたことを成し遂げました。今こそ、土地を癒やす世界的な「ソイルショット(土壌再生への挑戦)」に取り組む時だと私は考えます。世界の農地で健全で肥沃な土壌を再生するには、農業の根本的な変革と、新たな農業哲学が必要です。しかし、こうした転換で誰が損をするのか考えてみてください。現代の農薬・化学肥料に依存する農業や、工場型畜産から利益を得る企業です。恩恵を受けるのは誰でしょうか。それ以外のすべての人です。

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