テクノロジーが導く新たな気候変動対策

An aerial view of the cracked ground of the Atibainha dam, part of the Cantareira reservoir, is seen during a drought in Nazare Paulista, Sao Paulo state February 12, 2015. Brazil's worst drought in 80 years has left the Cantareira system, that provides greater Sao Paulo with most of its water, with the lowest water level on record. Brazil's economy is already expected to post zero growth this year. Worse yet, since Brazil depends on hydroelectric dams for about three quarters of its electricity, power shortages are also possible due to the drought, federal officials have said. REUTERS/Paulo Whitaker (BRAZIL - Tags: ENVIRONMENT DISASTER TPX IMAGES OF THE DAY) - GM1EB2D0USC01
Image: REUTERS/Paulo Whitaker
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新たな技術革新の波は、深刻な環境課題への理解を深めるとともに、それらを解決する新たな手段ももたらしています。今月、何千人もの企業リーダーや政策立案者がグローバル気候行動サミットに参加するためサンフランシスコに集まるなか、こうした画期的なイノベーションが街の至るところに登場します。

その一例が、強力な温室効果ガスであるメタンの排出量を測定し、削減する新たな手法です。メタンは同じ重量で比べると、短期的な温暖化への影響が二酸化炭素の80倍を超えます。人為起源のメタン排出は、現在私たちが経験している温暖化の4分の1をもたらしています。

これは問題ですが、同時に大きな機会でもあります。メタンの最大排出源の一つは石油・ガス産業です。実際、天然ガスの大部分はメタンです。そして、エネルギーシステムの脱炭素化に引き続き取り組むなかでも、産業由来のメタン排出を削減することが、温暖化の進行を抑える最も速く、費用対効果の高い方法だと分かりました。しかし、石油・ガス部門からどれほどのメタンが排出されているか誰も把握していなかったため、最近までその事実は知られていませんでした。少なくとも、証明できなかったのです。

データが明らかにする問題と機会

5年前、環境保護基金(Environmental Defense Fund)は、米国の石油・ガス部門からのメタン排出量の測定に着手しました。140を超える研究機関から集まった研究者に加え、現地への立ち入りと技術的助言を提供した約50社の石油・ガス企業が参加する、前例のない科学研究プロジェクトを立ち上げたのです。研究者たちはドローンや航空機、さらにはGoogleストリートビューの車両に搭載したセンサーなど、さまざまな技術を用い、遠隔地の坑井元から地域の道路下のパイプに至るまで、サプライチェーンのあらゆる段階で排出量を測定しました。

成果は、査読付き科学誌の論文30本以上で発表されました。総括論文は、この夏、サイエンス誌に掲載され、米国の石油・ガス産業が年間1,300万トンのメタンを排出していると結論づけました。これは、環境保護庁の現在の推計をほぼ60%上回ります。しかし、こうした排出は、多くの場合、簡単な保守作業で抑制できます。

このプロジェクトのデータは、産業界のリーダーと政策立案者の双方に、深刻なメタン問題があると認識してもらううえで大きな役割を果たしました。調査結果は、コロラド州、ワイオミング州、カリフォルニア州、ペンシルベニア州などの新たな規制や、連邦政府の土地および先住民族の土地での石油・ガス生産による排出を削減する国レベルの政策の策定に役立ちました。

現在、私たちはこのデータを活用し、現政権による基準撤廃の誤った試みに歯止めをかけようとしています。

世界的な排出削減目標を後押し

国際エネルギー機関(IEA)の推計では、世界の石油・ガス由来のメタン排出量は約7,500万トンに上ります。これは、アフリカ全土の電力を2回賄える量です。IEAは、既存技術を使えば産業界は排出量を75%削減でき、そのうち3分の2は純費用をかけずに実現できると推計しています。

EDFは、2025年までに世界の石油・ガス由来のメタン排出量を45%削減するよう呼びかけています。これは、世界の石炭火力発電所の3分の1を閉鎖するのと同等の、20年間にわたる気候上の効果をもたらします。産業界でデジタル化が進むなか、これほど大規模な成果も実現可能です。例えば、信頼性が高く低コストのセンサー、遠隔監視、油田のIoT技術は、エネルギー企業による排出削減に役立ちます(同時に、販売可能なガスの無駄もなくせます)。

こうした可能性を実現するため、EDFはShellおよびEquinor(旧Statoil)と協力し、当団体の「モバイル監視チャレンジ」に参加した起業家が開発した継続監視技術を試験しています。また、スタンフォード大学およびExxonMobilと連携し、航空機やドローンを使った移動型検知技術を検討しています。

データに基づく透明性が、業界内の競争を促しています。4月、BPは初の定量的なメタン目標を設定しました。先月、ExxonMobilは排出量とフレアガス量の削減を約束しました。Shell、Qatar Petroleumをはじめとする生産者も、天然ガスのサプライチェーン全体でメタン排出を削減すると表明しています。

宇宙へ

現在、私たちは技術の可能性をさらに広げるため、MethaneSATの開発を進めています。2021年の打ち上げを予定するこの衛星ミッションは、地球上のほぼあらゆる場所でメタン排出を継続的に地図化し、極めて高い精度で測定することを目指しています。MethaneSATにより、現在は追跡が難しい場所の排出も「見える」ようになります。

MethaneSATのデータは、誰でも無料で利用できます。各国、企業、市民が問題を発見し、削減の機会を見いだし、時間の経過に伴う進捗を測るのに役立ちます。現在開発が進む宇宙からのメタン監視ツールの一つにすぎません。例えば、欧州宇宙機関は2017年にTROPOMI衛星を打ち上げました。GHGSATという民間企業は、すでに衛星1機を軌道上に投入しており、年内にもう1機を打ち上げる予定です。

アーティストによる想像図に描かれたMethaneSATは、新技術を用いて世界の人為起源排出を地図化・測定し、メタン汚染の削減に役立てることを目指しています。Image: 環境保護基金

これを新たな宇宙開発競争になぞらえる人もいます。しかし私には、イノベーション・エコシステムの複数の拠点から生まれる、変革の波だと見えます。それぞれの能力は異なりますが、力を合わせることで多様なデータが集まり、問題の全体像を揺るぎない形で描き出します。

米国のメタンデータを新たな政策やより良いビジネス慣行の促進に活用してきたように、MethaneSATや協力者から得られるデータを、2025年までに45%削減するという目標の達成、そして2050年までに産業界のメタン排出を事実上なくすという目標の実現に役立てます。

あらゆる場所にセンサーを

私たちは、より健全な環境づくりに向けて、ほかの方法でも高度なセンサー技術を導入しています。Googleの車両で大気汚染とその健康影響を地図化する取り組みから、日々の化学物質への曝露を追跡するウェアラブルブレスレットまで、さまざまです。

また、小売業者や消費者向けブランドは、広範囲に及ぶサプライチェーン全体の説明責任と持続可能性を高めるために、ブロックチェーンを活用しています。センサーは農家が農地で使う化学物質の量を減らす助けとなり、「スマートボート」は漁業者による漁獲管理の効率化に役立ちます。その結果、利益と海の魚を増やすことができます。

グローバル気候行動サミットが、米国で最も革新的な産業の中心地であり、環境保全を全米に先駆けて進めてきたカリフォルニア州で開催されるのは偶然ではありません。カリフォルニア州は、強い経済と健全な環境が両立することを幾度となく証明してきました。今こそ、テクノロジーがこの成功を世界規模で実現する鍵となります。

この記事は、世界経済フォーラムの「地球のための第4次産業革命」シリーズの一編です。このシリーズでは、革新的な技術が、天然資源の管理方法や、工業化によって生じた気候変動などの環境課題への対処方法をどのように変え始めているかを探ります。

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