今週リマで開催された国連気候協議で専門家らは、急速に失われつつある世界のマングローブをより適切に保護すれば、経済、社会、環境に大きな恩恵をもたらし得ると述べた。
海岸線を異常気象から守り、魚に安全な産卵場所を提供するだけでなく、マングローブは気候変動を引き起こす炭素排出を吸収するうえでも大きな役割を果たし得るが、この点はこれまでほとんど見過ごされてきたという。
国連環境計画(UNEP)の事務局長、Achim Steiner氏は、世界は国・国際の両レベルで「マングローブがREDD+(森林減少・森林劣化による排出量削減)戦略や、国家適切緩和行動(NAMAs)のようなその他の低炭素開発戦略に位置づけられるようにしなければならない」と述べた。
専門家らによると、現時点ではマングローブ向けの炭素ファイナンス制度がなく、マングローブ生態系を支える政策も欠けているうえ、マングローブ自体が広範に失われているため、数千億ドル相当の潜在的な恩恵が失われている。
UNEPの推計によると、マングローブは他の森林の3~5倍の速さで伐採されており、その損失は、マングローブの大半が分布する発展途上国で特に深刻だ。該当する地域には、バングラデシュ、インド、パキスタン、スリランカ、ケニア、セネガル、西ベンガル、ベトナム、スマトラが含まれる。
UNEPと国際森林研究センター(CIFOR)が共同で作成し、リマで発表した 報告書 は、炭素を豊富に含む世界各地のマングローブ破壊による経済的損失を、年間420億ドルと推計している。
UNEPの森林・気候変動専門家Tim Christophersen氏はThomson Reuters Foundationに対し、海面上昇、頻度と勢力を増す暴風雨、飲料水への海水侵入といった脅威に直面する世界の海岸線の気候レジリエンスにとって、マングローブの保護と保全は極めて重要だと語った。
UNEPの報告書は、政策立案者や金融市場が行動を起こし始めている一方、マングローブやその他の沿岸湿地生態系の炭素会計に関する方法論を策定するには、さらに取り組みが必要だと論じている。
報告書によると、それによってマングローブの保全が進み、国連主導のREDD+プログラムや国連気候変動枠組条約(UNFCCC)における存在感を高めることができる。
カリフォルニアを拠点とする環境科学・計画会社 ESAの気候変動部門ディレクターで、IPCCの2013年湿地補足報告書の主執筆者であるStephen Crook氏は、「沿岸湿地の管理には、漁業生産や海岸線の保護など多くの恩恵があり、沿岸地域社会の適応を促進する」と述べた。
ケニアのマングローブ
UNEPのChristophersen氏は、インドの西ベンガル州のほか、ケニア、セネガル、インドネシアのスマトラ島で立ち上げられた沿岸湿地の炭素プロジェクトの成功例を紹介した。
例えばケニアのガジ湾では、地域住民が主導する炭素ファイナンス事業により、2014年末までに117ヘクタールのマングローブの保全、管理、再生が進められた。この事業は、3,000トンの炭素を隔離していることを認証でき、その量に基づく炭素クレジットを販売した。
その資金はその後、地域社会の保護活動や追加的なマングローブ関連活動に充てられ、村のリーダー自身が監督したとChristophersen氏は述べた。
同氏は「この事業が多くの成果を上げた一つは、マングローブの違法伐採が大幅に減ったことだ」と述べた。また、近隣の土地に成長の早い樹種を植えて代替木材源としたほか、地域社会がマングローブの所有権を持つことも確保したという。
Crook氏は、こうした地域社会を基盤とするマングローブ保護の取り組みは、パキスタン、バングラデシュ、インド、スリランカなどで再現でき、熱帯低気圧、台風、海面上昇の影響軽減に役立つよう規模を拡大できると述べた。
(取材:Saleem Shaikh、編集:Laurie Goering)
この記事は、 Thomson Reuters Foundation trust.orgとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味しません。
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著者:Saleem Shaikhはイスラマバードを拠点とするフリーランスライターで、Thomson Reuters Foundationに寄稿している。Sughro TunioはThomson Reuters Foundationの寄稿ライター。
画像:2014年7月27日、パラ州サリノポリス近郊の大西洋岸に沿って広がるマングローブの空撮。REUTERS。

