屋外の大気汚染は、世界で年間340万人の死因となっており、気候変動の主な要因でもあります。
世界各地の大気質を改善する取り組みは大幅な資金不足に陥っていますが、大きな改善を実現する機会はあります。
1,000万ドルを投資すれば、世界の大気質データの大きな不足を解消し、地域主導の解決策を後押しする重要な基盤を整備できます。
世界保健機関(WHO)によると、世界の人々の90%が、毎日、健康に有害な空気を吸っています。大気汚染の主な発生源は燃料の燃焼であり、気候変動を引き起こす主要な人間活動です。公衆衛生の観点から見ると、屋外の大気質の悪化により、世界で毎年推定340万人が死亡しています。大気汚染は、世界の早期死亡リスク要因の第4位であり、それを上回るのは高血圧、たばこの使用、食生活の乱れだけです。それでも大気汚染は、目に見えず絶え間なく人々の命を奪い、個人単位ではなく集団レベルでしか影響を特定できないため、見過ごされがちです。しかし、疑いの余地はありません。私たちが吸う空気は汚れており、私たちの命を奪い、地球を温暖化させています。大気質の改善が強く求められています。
幸いなことに、大気汚染は十分に解決可能な問題です。世界各地の地域社会が、中国からチリまで、呼吸する空気の改善に成功した例は数多くあります。難しいのは、大気質を改善するための、あらゆる場所に適用できて規模を拡大できる単一の解決策が存在しないことです。大気汚染への対策には、複雑な地域の政治、社会、経済状況に対応しながら、地域主導で長期的に取り組むことがほぼ常に必要です。
地域主導の長期的な解決策が必要となる多くの複雑な問題と同様に、国際的な資金支援は停滞しています。英国を拠点とするクリーン・エア・ファンドによると、財団が2019年に屋外の大気質問題への対策に投じた額は、わずか3,160万ドルでした。一方、米国人は毎年、その倍の額を小銭で失っています。さらに世界銀行は、屋外の大気質の悪化によって世界経済が5兆7,000億ドルの損失を被っていると推計しています。これは、世界のGDPの年間4.8%に相当します。つまり、屋外大気汚染の解決に向けた投資額は、それによる損失の10万分の1にすぎません。屋外の大気質の悪化は、その悪影響に比べて資金が極端に不足しているため、少額の賢明な投資が真に世界規模の効果をもたらし得る、数少ない分野の一つです。
クリーンエネルギーへの移行に向けて、世界経済フォーラムはどのような取り組みを行っているのでしょうか?
大気質の改善には、地域レベルのデータがさらに必要です
複雑で地域主導の解決策を要する世界的な問題に、どうすれば大規模かつ賢明に投資できるでしょうか。答えは単純です。地域主導の取り組みが必要なツールとして一貫して挙げる、共通の基盤に投資することです。大気質の場合、欠かせないツールの一つがデータです。大気汚染に取り組むどのような解決策にも、屋外の大気質データが必要になります。結局のところ、解決策が改善を目指す対象を測るデータだからです。古い格言にもあるように、測定できなければ管理することはできません。
地上で得られる測定値を世界地図で見ると、大気質データに大きな空白があることは一目瞭然です。アフリカ、中央アジア、南米の広い地域では測定値がありません。しかし、長期的な衛星観測から、いずれの地域にも危険なレベルの大気汚染にさらされている人々がいることが分かっています。

世界各地の都市の事例から、適時かつ関連性の高い大気質データが利用可能になると、科学者から政策立案者、メディアまで、さまざまな地域の関係者が大気汚染への対策と改善に向けた取り組みを前進させられることが分かっています。実際、中国では、単一の標準的な「基準級」大気質モニターを北京の屋上に設置しただけで、大気質の革命を引き起こし得ることを目の当たりにしました。それは一国にとどまらず、地域全体にも広がり得ます。
新たに登場している低コストの大気質センサー技術の多くも、分野の拡大にあたり、「基準級」モニターの設置と、校正に使えるデータの公開に依存しています。地域の観測体制の強化は、国際的な大気質コミュニティにも影響をもたらします。データは、世界や地域の化学輸送モデル、大気質の衛星観測データの解析に活用され、世界的な気候変動対策や公衆衛生の取り組みに欠かせない要素となります。ここでも要点は単純です。大気質を改善する取り組みを進めるなら、まずそれを測定できなければなりません。
少額の投資で大きな効果
非営利団体OpenAQによると、少なくとも10億人が暮らす約12カ国では、政府が定期的に作成する大気質データがありません。地域の関係者が行う確かな測定によって、こうした単純なデータ不足を埋める取り組みを始めることは、難しいことでも、法外な費用がかかることでもありません。
実際、現在大気質データが作成されていないいくつかの主要国で、地域団体が運用する「基準級」モニターの設置に1,000万ドルを一度投資すれば、世界の大気質データに生じている大きな空白を埋められます。データだけで大気汚染のような複雑な問題を解決することはできませんが、強力で拡張可能な役割を果たせます。世界各地の地域社会に必要な基盤と能力を提供し、自ら空気をきれいにできるよう支援するのです。
1,000万ドルでさえ、改善の一助となる世界的な課題は多くありません。世界の大気質データの不足を埋めることは、気候と公衆衛生の両面で、費用対効果が高く大きな成果をもたらす、地域主導の長期投資を実現する貴重な機会です。なぜ実行しないのでしょうか。今こそ大気質を改善するときです!




