気候変動が最初の村々を奪いつつある

気候変動が最初の村々を奪いつつある
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漁師のサンマル・ダブロにとって、土地の浸食によって村が内陸へ移転を余儀なくされたとき、それはまるで「海水が私たちの家を奪った」かのようだった。パキスタン南岸の出来事である。

インダス川がアラビア海に注ぐ扇状のインダス・デルタに暮らす人々は、最も貧しい人々の中でもとりわけ貧しく、その大半は読み書きができず、干潟の上に建つ木造の粗末な小屋で暮らしている。

海水がデルタに流れ込み、肥沃な土地数千ヘクタールを破壊し、地下水路を汚染するなか、人々はイルカがよく見られる塩水の水路で漁をして生計を立てている。

ダブロの家族とほかの41世帯は3年前、デルタ河口の干潟にあった旧村から約2km離れた、ケティ・ブンダー連合評議会内のフィルト村へ移住した。

「ここは高台にあり、さらに内陸に位置するので、波や風もそれほど強くありません。家が水没しつつあったため、移るしかありませんでした」とダブロは説明した。

彼によると、各世帯が自分たちの新しい小屋を建てるために1万5,000ルピー(149ドル)を費やさなければならず、移転は容易ではなかった。

フィルト村の話は例外ではない。ダブロによると、土地が消失するにつれ、デルタのほかの多くの地域社会も移転している。

最新の科学報告書 を発表した気候変動に関する政府間パネルは、海面が上昇する一方で、地下水の汲み上げ、氾濫原の開発、ダムによる堆積物のせき止めが原因で、アジアのデルタの大半が沈下していると指摘した。

2009年に『ネイチャー・ジオサイエンス』に掲載された論文によると、インダス・デルタでは20世紀初頭以降、堆積物が80パーセント減少した。約20基のダムと多数の運河がインダス川の水を迂回させ、デルタから淡水を奪っている。

住民の中には、占有する土地を買わずに済む内陸の干潟へ移った人もいる。また、親族が移り住んだカラチの沿岸の村へ移転する人もいる。

気候変動の影響

ケティ・ブンダー連合評議会にある42の集落のうち、28はすでに侵入する海にのみ込まれている。

気候変動はデルタ地域の脆弱性を明らかに高めている。WWFパキスタン WWF-Pakistanによると、海面上昇は高潮、浸食、洪水、塩分濃度の上昇を助長している。

デルタ地域の地域社会と10年以上にわたり活動してきた環境団体による2012年の調査では、1962年と2011年の衛星画像を比較し、土地の減少と増加を分析した。

「その結果、ケティ・ブンダーとハロ・チャンでは約9,065ヘクタールの土地が浸食された一方、海岸線に沿って堆積した土地はわずか1,347ヘクタールだった」と結論づけた。

沿岸地域は強力な嵐にも大きな被害を受けている。例えば2014年、サイクロン・ナヌクにより、インダス・デルタの家々が何日も水没し、財産に甚大な被害が生じた。

マングローブの再生

デルタ地域は、世界で生物多様性に富む40の生態地域の一つに数えられる。2011年以降、WWFパキスタンは劣化したマングローブ林の再生を推進し、海の侵入を最小限に抑えることを目指している。

かつてパキスタンは、世界で最も重要なマングローブ林を有する国の一つとみなされていた。しかし、海水の侵入、インダス・デルタの淡水不足、燃料用の樹木伐採、ラクダの放牧の圧力により、森林は劣化した。

WWFパキスタンは、地元の地域社会にマングローブの種子や苗木を提供し、植樹を支援してきた。衛星画像によると、この活動のおかげでマングローブ林の面積は現在増加している。

WWFパキスタンによると、ここ10年で問題への意識は大きく高まった。

ダブロが新居を建てた後に最初にしたことの一つは、「土壌の浸食を止め、海岸を守る」ため、家の周囲にマングローブを植えることだった。

マングローブは洪水や海岸浸食を防ぐ緩衝帯となるだけでなく、魚、カキ、エビ、カニの生息地にもなる。村人は車で約3時間の大都市カラチで甲殻類を販売し、収入を得ることができる。

高床式の家

沿岸地域の人々が気候変動の影響に適応できるよう支援するWWFパキスタンのプロジェクトでは、高潮や潮汐による洪水から村人をよりよく守る、高床式住居のための基礎台も導入された。

「今は水位が上がっても、寝具や服、食器を全部守って、子どもたちをここに上げられます」とサキナは語り、ハジャムロ・クリークのシディク・ダブロ村にある新しい高床式の家を誇らしげに見せた。

「村の人はみんな、こういう家を欲しがっています……でも、使う木材が多いので、もちろん建てるのにお金がかかります」。木材は近隣の町の市場で購入しなければならない。

WWFのプロジェクトはデルタ地域に20基の住宅用基礎台を建設した。しかし、こうした取り組みにもかかわらず、海の侵入が止まらないため、人々は今後も移住を余儀なくされる可能性が高い。

「以前より多くの水が家に押し寄せています。満潮の勢いも強くなっています」と、サキナの兄イスマイールは語った。

ケティ・ブンダー町の隣、さらに内陸に位置するミーロ・ダブロ村の住民サリーム・ダブロは、家族が3回移転したと語った。インダス・デルタ河口近くにあった最後の村は、サイクロンで破壊された。

「1997年に内陸で場所を見つけられたのは幸運でした。今では土地マフィアがここまで進出してきており、多額のお金を払う気がなければ土地を見つけるのは不可能です」と彼は語った。「今のところ、ここなら海水から安全だと思っています」。

この記事は トムソン・ロイター財団との協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。

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著者:リナ・サイード・カーンは、パキスタンのイスラマバードを拠点とするフリーランスの環境ジャーナリストです。

画像:パキスタンのインダス・デルタで、浸食が進む干潟の上に危うげに建つ家々。TRF/リナ・サイード・カーン

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